いにしえゲーム回顧録 三回裏雨天中断「バース(ポッドレス編)」

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  さぁ、とうとう敵要塞までやってきました。これまでの道のりの長さ、そして思いのほか、このバース紹介記事が長くなってしまったことに、当時の私も、今の私も、深い感慨にふけっておりました。

 

  懐かしいなぁ…。本当に…。いろいろあったよ。うん、あったあった…。

 

  しかしいよいよ佳境、気を緩めてはいられません。私は改めてレバーを握りしめ、敵中枢に突っ込んだのでした。

 

  まず「やっぱりな」と思ったことは、ポッドで防げない敵攻撃がほとんど、ということでした。レーザー、ミサイル、火炎放射が画面中、所狭しと暴れ回ります。ポッドで防げないので、追い詰められては苦肉のボム使用を余儀なくされます。おまけに頼りのアイテムもあまりなく、無敵チャンスが期待出来ないので、まさにガチの弾避けを要求されるのです。またその間を縫って通常弾も飛んでくるのですから、どれが防御可能でどれが不可能なのか分からなくなり、かと言って全部避けようとしても逃げ道が全く見当が付きません。まさに最終防衛ライン、バースに関する全ての知識が試される構成となっていました。

  また背景も敵要塞らしく、前線基地から始まり、潜水艦等が停泊する港が見えます。その後、自分をあれほど苦しめた巨大ボスが、大量に整然と並んでいる光景はまさに恐怖です。自分が苦労して撃墜したボス達は、結局大部隊のうちの一機でしかないことを知らされるのです。やがて中心部へと続く細い通路になり、辺りは配管が縦横に巡らされたメカニカルな光景になります。その狭い通路の死角に配置された砲台が実にいやらしく、しかも的が小さいためになかなか破壊出来ないのです。かと言って、無理に破壊しようとすると、別方向からの敵機が待ってましたと狙撃してきます。まさに周到なカプコン。もう敵の攻撃パターンを覚えるしかありません。繰り返しになりますが、至極真っ当な攻略をするしかなかったのです(アイテム無敵に頼り過ぎたツケとも言える)。

 

  そして無数の自機が撃墜された後、私はとうとう宿敵に出会いました。ラスボスの登場です。

  中央のキャノン砲からは貫通弾を、左右の砲台からはレーザーと通常弾を、脇腹部分からは小型戦車をモリモリ出してきます。しかも画面に収まり切らない巨大さと攻撃個所の多さ。超弩級戦車としか言いようがなく、もはやどこから攻撃して良いのか、どこから攻撃をしてくるのか分かりません。これまでにない猛攻を受けた私は、理由も分からず数秒でチリになり、残機もあっという間に消耗。敢え無くゲームオーバーとなりました。全く、手も足も出なかったのです。

 

  まるで敵の攻撃の正体が掴めません。まるでファミコンの「マザー」のラスボスみたいです。とにかく敵の攻撃パターンを覚えなければ話になりません。しかしそれには場数を踏まなければならないわけで、当然どれだけミスを減らし、自機を持って行けるか、という話になります。なに?コンティニューすれば良い?そんなものはない!いえ、ウソです、あります。ありますけど、当時の私はワンコインクリアにこだわっていたのです。あと純粋に金がなかったし。ともあれ、ミスを減らすしかないのですが、私はそこへもう一つのアイデアを盛り込みました。点数を稼いで1UPし、自機を増やすのです。

  このゲームは基本点数でしか1UPしないので、点を稼げばより多く自機が増えるはずです。もっとも設定によってはいくら稼いでも最大3回までしか1UPしない場合もあったのですが、私の行きつけのゲーセンは一定点数毎に1UPだったので、稼げば稼ぐほど残機が増えます。しかしこのゲームの稼ぎと言ってまず思い付くのは、特定の敵編隊を全滅させるか、あとは隠れキャラくらいのものです。しかしある時、他人のプレイをぼんやり見ていた私は驚くべきものを目にしました。そのプレイヤーは途中でやられたか何かで、面クリア時にはポッドを装着していませんでした。すると隠しボーナスとして「ポッドレスボーナス」を獲得したのです。それも50000点。何とポッドなしで面クリアすると50000点も手に入るのです。仮に敵要塞の直前の25面までポッドレスなら1250000点上乗せできます。大体自機1機分です。これだ、と私は思いました。可能な限りポッドレスで面クリアし、残機を増やそうと目論んだのです。

  ポッドがあることを前提にデザインされているゲームなので、普通に考えれば無謀です。しかし安定して何度も敵要塞まで行けるようになってきていた私には、二つの武器がありました。それは「当り判定」と「処理落ち」でした。

 

  「当り判定」とは敵の弾が重なると「弾が当たった」と判定される自機の部分です。逆に、この判定内に敵弾が重ならなければ、弾が当たったことにはならないのです。たとえグラフィック上は自機に敵弾が重なっていても、です。この当り判定をやたらに小さくしたのが「首領蜂」をはじめとした弾幕系シューティングなのです。さて、このバースにおける自機の当り判定は胴体部分だけでした。横に伸びる主翼には敵弾でもレーザーでも、当っても撃墜されずにすり抜けていきます。乱暴な話、胴体部分にだけ集中していれば、ポッドは必要ないのです(ポッド攻撃が出来なくなりますが)。とはいえ、無数の敵弾やレーザーをくぐり抜けることは容易ではありません、普通なら。しかしここでもう一つの武器が役立ちます。「処理落ち」です。

  「処理落ち」とは、CPUの演算能力以上のキャラクターを出現させると、その過度な負荷により、突如ゲームスピードが著しく遅くなる現象の事です。最近のゲームはCPUが高性能になりましたからほとんど起こりませんが、この頃のゲームではよく見られた現象でした。通常、ゲームスピードが突然遅くなると、操作のリズムを崩しミスをしてしまうことがほとんどです。しかし仮に「常にゲームスピードを遅くし続ける」ことが可能ならどうなるか?恐らく敵への対処が容易になるはずです、特にシューティングならば!そしてバースではそれが可能だったのです。バースは大量の敵、大量の弾、巨大なボスと、それでなくてもCPUに負荷を掛ける要素が多いゲームで、ちょくちょくゲームスピードが遅くなることもありました。しかしそこへ自機が連射し、更にCPUに負荷を掛けることでゲーム中のほとんどを処理落ちで済ますことが出来るのでした。

  現在確認できる数少ないバースのレビュー記事を見ると、当然のごとくこの処理落ちについて酷評されていました。曰く「もっさりした動き」とか「テンポの悪さ」などなど。しかし試しに高次面であまり連射しないでプレイしてみると、大量の弾が恐ろしい弾速で襲ってきます。ポッドがあっても、もはや勘で避けるしかないほどの弾速なのです。その時私は「隠れキャラ無敵時間」の時と同じような事を思いました。開発側がこの処理落ちを無視したはずはない、恐らく処理落ちによるスピードダウンを考慮した敵攻撃になっているのではないか、と。かつて私もSFCのシューティングエディットソフト「デザエモン」で、あえて処理落ちを起こして成立するゲームバランスの作品を作ったりしてましたし。ならばその処理落ちをこちらも十分に利用させてもらうまでです。すなわち、常時スローならば、ポッドレスでもなんとかなるのではないか、と。

  そして果たして何とかなりました。私は25面までぶっ通しでポッドレス状態を維持することが出来たのです。計算通りの総ポッドレスボーナス1250000点、残機一機上乗せです。これで存分にラスボスの攻撃を分析出来る!しかし「処理落ちポッドレス攻略」には大変な代償がありました。ずっと連射し続けなければいけないのです。これは相当の体力が必要です。何故って25面まで行くのに、大体40分は掛かるのです。その間、ずっと連射。カラッカラになるまで体力を絞り尽くされます。堪らず懇意の店員さんに連射装置をお願いするも、店長の「ダメ」で、やっぱりダメ。仕方なく私は自力連射を続け、やがて中指と人差し指で交互に連打する「ピアノ連打」を体得するのですが、それはまた別の話です。

 

  さて十分な残機、当り判定の理解、処理落ちの利用という三つの武器を携え、私は何度も何度もラスボスに挑みました。当り判定ギリギリにレーザーをかわし、連打による処理落ちで敵弾を遅くし(もちろん自機も遅くなる)、やられてラスボス戦の最初まで戻されても(この仕様は辛かった)、稼いだ残機の分だけラスボスの癖を読み取っていきました。

  そしてついにラスボスを破壊!火を噴く超弩級戦車!やった!これで29面クリアだ!

  …そう、ここはまだ「29面」なのです。倒したはずの奴は、更に過激な武装を装備して背後から復活してきました。29面はラスボスの第一形態。ラスボスの最終形態こそが、最後の最後、30面だったのです…。

  戦いはほぼ絶望的でした。敵の攻撃がほぼレーザーになり、ミサイルがバルカン砲のごとく発射され、床の鉄板が剥がされ吹っ飛んできました。その鉄板に激突した瞬間、私の心はポキリと折れたのでした。

 

  その後、私がバースをプレイする機会はめっきり減りました。30面の猛攻にたじろいだこともありますが、当時の私には攻略のために、毎回「連射し続けて処理落ちを起こし」、「当り判定ギリギリの避けをして」、「25面までポッドレスボーナスを取る」必要があったからです。その上あの猛攻を分析し、対処法を編み出さなければならない。当時の私にはあまりにも巨大な壁でした。その壁の前で、中坊の私はへたり込むしかなかったのです。

 

  そしていつしか、ゲーセンからバースは姿を消しました。その時の私は「あぁ、なくなったのか」というくらいしか思いませんでしたが、現在の私は残念でなりません。クリア出来なかった事ももちろんですが、何より「ラスボスの名前を知ることが出来なかった」からです。ボスの名前はボス撃破後の面クリア画面で確認出来ます。そして私はラスボスを倒していない。だから私はラスボスの名前を、あれだけやり込んだゲームのくせに、知らないのです。

 

  かつて全クリを目の前にして諦めてしまったその代償は、現在このコラムを書く上での重要な情報の欠落として現れたのでした。

 

  今、どこかにないかな、バース。今度こそクリアしたいのに。そしてラスボスの名前をこの目で見たいのに。

 

  それでは四回表でお会いしましょう。


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todome

過去のホームページ時代より寄稿させていただいておりましたが、とある作品を完結させぬままに十数年すっかり忘れ、この度親方の号令により、再び参加と相成りました、todomeと申します。 主に小話を寄稿させておりますが、マンガ、ゲームにつきましても、今後ご紹介させていただこうかと思っております。どうぞお付き合いください。

コメント

  1. galthie より:
    人のプレーからヒントをもらえたりっていうのがゲーセンならではの交流でいいですよね。 30面ですかぁ、もうちょっとでしたねぇ。 「todome」さんの熱い思いに応えるアミューズメント施設ないかなぁ。アキバの今もあるのかわからないですが、「トライ」をより大きくしたような施設で、博物館的なゲーセンに往年の名プレーヤーがギャラリー作る姿もまた見てみたいですね。 現実的には基盤を買ったり、エミュレーションするしかないんですかねぇ。 ネットでの動画投稿もいいですが、あのゲーセンでのギャラリーがつくほどの緊張感のプレーもたまないんでしょうね。一回体験してしまうと。
  2. todome より:
    昔は攻略サイトなんてありませんでしたから、それこそ常連になることやゲーセンノートの書き込みが重要だったんです(ゲーセンノートにまつわることはいずれ書きますが)。 ギャラリーが出来ると本当に嬉しいですよ。普段やらない弾避けしてみたり、安全地帯で余裕かましたりしてね。で、突然知らんひとに攻略法を聞かれたこともありましたねぇ。 現在では高田馬場のミカドがレトロゲーの布教を頑張っていて、実況動画がアップされています。基本的に私は実況入りが嫌いですが(不必要な喋りがあったり、実況のせいでBGMが聞こえないので)、あの動画は昔のゲーセンの喧騒のようで楽しいです。しかしこれではただの懐古趣味だな・・・。
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