いにしえゲーム回顧録 七回裏 「エレメカ百景(Deus ex machina編)」

ゲーム
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  前回は屋上遊園地の魔境と鉄火場をご覧いただきました。殺伐としたデッドオアアライヴの世界は、ともすればお子様座りションベンものなのですが、しかしこういう場で世間の厳しさ(あるいは大人のズルさ)を体験しておけば、やがてある程度の耐性ができ、仮に実社会で理不尽な思いをしても、「これはあの時の山のぼりゲームの落雷に比べれば何ともない」とか「お前の策略はピカデリーサーカスに比べればまだまだだ」とか言えるほどの余裕が生まれますが、それはそれとして悔しいものは悔しいので、己の勝ちを拾うため、ずんずんと屋上遊園地の奥へと足を踏み入れていきましょう。帰り道はありません。退路なんてもう無いんです。

 

  「ミニドライブ」

  現在のレースゲームはスゴイですね!実写と見紛うグラフィックにリアルな挙動。ちゃんとアクセルワークをしないとドリフトしないでただの減速になってしまい、「リッジレーサー」に慣れた私にはなかなかキツイゲームばかりですが、レースゲームの始祖といえばコレです。長方形の箱の手前にハンドルがあり、中に弁当箱大の車につながっています。コースはベルトコンベアーに描かれた草原に土の道路が二本が走っているもので、時折道路が交差するくらいで障害物もなく、非常に牧歌的です。

  とはいえ、これではたたぼんやりと走るだけの仮装大賞で環境映像ですから、そこにはちゃんとしたゲーム性が設定されています。プレイヤーはなるべくコースアウトしないように車を操作しなければなりませんが、実は道路の中央に棒状の突起があり、これを通過することで点数(10点)が入る仕組みになっています。この点数は正面の得点盤に加算され、最高得点の500点まで達成するともう一回プレイすることができます。この得点盤によれば(どうやら)鹿児島がスタート地点になっており、点数を獲得するごとに四国、名古屋、東京、そして北海道に到達するようです。日本一周ですね。それでは早速プレイしてみましょう。

 

  30円を投入してプレイ開始。いきなり発進でビビりますが、すぐに立て直して道路に車を合わせます。やがて前方左カーブなのでハンドルを左に切りますが、曲がりません。チェックポイントの横を素通りし、やっとここで左折開始。次は右カーブですのでハンドルを右に切りますが、車はまだ左折を続けています。草原をあさっての方向に走りつつ、チェックポイントをまたも素通り。何とか道路に戻ろうと左にハンドルを切りますが、まだ右折を続行する車。チェックポイントがどんどん素通りしていきます。そして思い出した頃に車は左折開始。それも急旋回でコースの端から端へと一直線です。もはやコースは関係なく、このじゃじゃ馬をどう扱うかしか頭にありません。そして道路が止まってゲームオーバー。得点は偶然通過出来たポイントの30点のみでした。

 

  と、このようにプレイヤーカーは実車だったら即車検行きのようなポンコツです。極端な話、コースが右に曲がり出した時にハンドルを切ってももう遅く、コースアウト確定なのです。ですから高得点を叩き出すためにはコースの暗記が必須です。そして幸運なことに、このゲームのコースはベルトコンベアー式のため、非常に短いパターンの繰り返しですので、覚える事はそれほど難しくないでしょう。しかしコースを覚えても、なおこのゲームが難しいのは、やっぱりこのポンコツ車のおかげなのです。いや、恐らく馬力が強すぎて、強烈な後輪のホイルスピンを繰り返しているがための操作不良と思われますが(好意的解釈)、実際そのおかげで高いゲーム性を保っていることも確かなのです。このようなゲーム性のため、上級者になればなるほど「コースを見なくなり」、「己の感覚だけでハンドルを切る」という大道芸的な、いわば目隠し運転が要求され、これはある種速すぎてタイミングのみでハンドルを切るF1の世界に最も近いドライブゲームと言えるでしょう。言えないって。

 

  「ロックンロール」

 筐体中央のサイケなクジャクが目を引くゲームです。ゲームは「阿」と「吽」に二部構成になっており(今命名)、阿の結果によって吽の難易度が大きく変わるという、なかなかドラマティックな内容となっております。

  まず阿ではループレールへパチンコ玉を打ち込み、いくつかある穴を狙うゲームです。穴には「1」「2」「3」「アウト」があり、アウトに入るともちろんゲーム終了です。運良く数字の描いてある穴に入賞すると、晴れて吽へと進むことが出来ます。

  吽では先程のサイケクジャクが登場します。クジャクの羽には左から順に1から15までの番号が振られています。そして先程の阿で入賞した穴の数字の数だけ、1なら1か所、3なら3か所、番号がランダムに点灯します。そしてクジャクの前には金属製のサークルレールが鎮座しています。ここに再びパチンコ玉を打ち込むのですが、目的は「クジャクランプの点灯した番号の数だけサークルにパチンコ玉を周回させる」ことです。例えばクジャクランプの「5」と「11」が点灯すれば、パチンコ弾をサークルに5回転か11回転させれば良い訳です。このように阿で入った数字によって、吽の難易度が変動するわけなのです。

  ここで重要なのは力加減です。力任せに弾けば15回転を超えてアウトになりますし、弱すぎれば途中で玉がレールから落ちて、規定回数に届かない可能性もあります。その上、弾くバネの強さも良く分からない条件ですから、なかなかの難易度です。そして見事番号と同じ周回になれば、何らかの景品がゲット出来るのです。 それでは早速プレイしてみましょう。

 

  まず阿。取りあえずハンドルを中程まで捻り、発射。パチンコ玉は相当な高速でループレーンを走り回り、やがて「2」の穴に入賞しました。そしてすぐさま吽。下のサイケクジャクランプの「7」と「12」が点灯。丁度真ん中あたりの回転数ですから、強すぎても弱すぎてもいけない、いわば中庸の位置。そういえばニュートラルルートが一番むつかしかったな…、とかなんとか考えつつ、狙いを12に付け、びみょぉぉぉぉにハンドルを捻り、発射!「飛べ!不死鳥!(アストロ球団)」ボールはサークルをぐるぐる回転し、クジャクランプも安い電子音と共に4、5、6、7と順次点灯していきます。やがて勢いが緩やかになり、8。さらにゆっくりになり、9。何とか一周して、10。そして半周したところで、落下。残念さを演出しているであろう電子音と共に終了。呆然とする私。コイン投入からゲームオーバーまでの時間、わずか30秒の事でした。

 

  と、まぁ、見た目以上にむつかしいゲームなのです。その上子供ってのは基本的に0か100しかない、つまり力加減を知りませんから、こんな繊細なゲームでは惨敗を喫するのは火を見るよりも明らかなのに、敢えて設置している屋上遊園地は悪辣でなくて一体何だと言うのでしょう。その上、1ゲーム20円とはいえ、子供の20円は大人の35000円に相当しますから、これは暴利であり、搾取であり、まぁとにかく悔しいんです。結局私の成功率は2割にも満たず、出てくる景品も「ポンカンアメ」であることもあり、また別のエレメカを遊ぶことになるのですが、しかしそろそろ夕方、タイムボカンの再放送が始まってしまいます。今日はこのへんでカンベンしてやることにしましょう。あ、オカンに見つかるとめっちゃ叱られるので、もちろんナイショです。

   …ところで、なんで「ロックンロール」なんだ?

 

  それでは次回、八回表でお会いしましょう。


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todome

過去のホームページ時代より寄稿させていただいておりましたが、とある作品を完結させぬままに十数年すっかり忘れ、この度親方の号令により、再び参加と相成りました、todomeと申します。 主に小話を寄稿させておりますが、マンガ、ゲームにつきましても、今後ご紹介させていただこうかと思っております。どうぞお付き合いください。

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