いにしえゲーム血風録 十六回裏 「闘いの挽歌(蹴撃編)」

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 さて1986年といえば、言うに及ばず私はハナタレ小学生です。そしてもはや恒例ではありますが、ファミコンを持ってませんでした。ですから当然、人様のウチで「闘いの挽歌」に出会うことになるわけです。いつもと同じ流れですね。なのでさっさと友人宅の場面に移っちゃいましょう。

 

 当時私の仲間内では、Dくんの家がたまり場になっていました。彼はやはりゲームが好きで、新作ソフトをすぐに購入していたこともありますが、それ以上に、彼は異様なまでにゲームが上手く、またゲームに対する嗅覚が鋭かったのか、聞いたことのないメーカーでありながら、ヤケに面白いソフトを発掘することに長けていました。つまり私以上のゲーム脳の持ち主だったと言えるでしょう。

 そんな彼でしたから、ゲーム好きの間では一目置かれており、彼の所持しているソフトや彼自身のスーパープレイに惹かれ、結果として彼の家がたまり場になったのは、ごく自然のことだったと言えるでしょう。もちろん私もその1人であり、何ひとつハードもソフトも持っていないにも関わらず、彼の家にはよく遊びに行きました。なかなかずうずうしいヤツですね。

 

 さてその日も彼の家に遊びに行くと、仲間達は既に集まっており、やけに緊張した面持ちでゲームに興じていました。いつもならワイワイガヤガヤキャッキャウフフと賑やかでしたので、これはどうやらDくんが新しいソフトを買ったのだなと、ピンと来ました。果たしてブラウン管には初めて見るゲーム画面が映し出されていました。

 暗めの画面、不安をあおるようなBGM。そして何よりも自機らしい主人公の造形が目を惹きました。背景にビルやら車やら描かれているのですが、主人公は何故か剣と盾を持っているのです。その上敵キャラたちも鉄棒やらボウガンやら、えらくアナログな武器で襲ってきて、いわゆる火器を使ってきません。

 …これは現在?未来?それとも別世界?いつの時代なのかは分かりませんが、しかし何だか「男子魂」(だんしだましい:力と無軌道さをカッコイイと勘違いしてしまう、小中学生男子特有の心理的傾向:造語)が揺さぶられます。当時、ジャンプ誌上では「北斗の拳」が大人気となっており、「北斗」の読者であれば、当然慣れ親しんだ(?)この世界観にズッポリとはまることが出来たでしょう。しかし当時の私にはマンガ雑誌を買う習慣がなく、というか金がなく、したがって北斗の拳など知るはずもなく、それでも「暴力が支配するヤバイ世界」ということはなんとなく理解出来ました(もっとも闘いの挽歌と北斗の拳の関係はよく知りませんが)。

 

 次々と襲い来る敵を華麗な剣さばき(と言っても剣で殴りつけているようにしか見えないのですが)でなぎ倒していく姿はなかなかカッコ良かったですが、それ以上に衝撃的だったのは「盾」の存在でした。というのも、当時のACTは敵の攻撃はジャンプしてよけるとか、障害物に隠れて防ぐ、といった、どちらかと言えば「受け身」のスタンスだったからです。

 それで比べて、盾で積極的に敵の攻撃を盾で防ぐという、どちらかと言えば「攻め」の流れは、非常に斬新に感じました。それに盾で攻撃を防いで、それによって出来た敵の隙を突くという一連の流れが、それはもうカッコ良く見え、まさに戦士の真髄を見た気がしたのです。

 とはいえ、当時の小学生共に「攻撃」と「防御」をバランス良く行う、なんて高度なことが出来るわけがありません。防御して隙を窺う方が有利、というかそういうゲーム設計なのに、未熟なゲームスキル故か、どうしても攻撃一辺倒で防御を上手く行うことが出来ません。事実、仲間達は防御が疎かになってしまった故に、なんでもないザコ敵からダメージを喰らってしまいます。そしてなんとかボス「斧兄弟」には辿り着くものの、ボスの放つ手斧に翻弄され、ボコボコにやられてしまうのです。私も1回プレイさせてもらいましたが、やっぱりボスにボコられて終わりました。

 

 さぁ、ここで(仲間内では)ゲームの達人、Dくんの登場です。Dくんの腕ならば、いやそれでなくとも持ち主なのだから倒せるのだろう、とその場の全員がブラウン管を注視します。Dくんはやはり攻撃と防御をバランスよく織り交ぜ、ザコも難なく一蹴してボス「斧兄弟」に辿り着きます。さぁ、どんな風に彼奴等を料理するのか?

 Dくんはまず斧兄弟の放つ手斧を確実に盾で防ぎ、それからしゃがみ斬りでダメージを与えました。以後これを繰り返し、斧兄弟兄を撃破、すぐに斧兄弟弟が参戦しますが、同様に手斧をさばいて難なく撃破となりました!

 おぉ~、と唸るボンクラ一同。しかしその後の「ロケットパンチ野郎」は文字通りロケットパンチを放ってくるのですが、これがブーメランのように戻ってくるので、さすがのDくんもまだプレイが足りないのか、簡単にパンチを後頭部に食らい、ゲームオーバーとなりました。

 結局その日の闘いの挽歌はそこまでとなり、私も家に帰りました。いやはや、世界観もなかなか渋い、面白そうなゲームだが、相当むつかしいな。特に盾の使い方をマスターしないと厳しいんだろうな…、とか思いましたが、しかしその後しばらく、私は闘いの挽歌に触れることはありませんでした。何故なら、やっぱり小学生にはむつかし過ぎたのか、仲間達はみんな投げ出してしまい、何故かコナミの「火の鳥 鳳凰編 我王の冒険」を揃って購入し、みるみるそれに傾倒していったため、戦いの挽歌は忘れ去られていったのであります。

 

 時は豪快に流れて10年後。私は京都に居を移し、相変わらずのんべんだらりと暮らしていました。当時の私は晴れてゲーム機、PS2を持つことができ(あと、地元の友人から譲り受けたSFCがあったが、半分壊れていた)、以前ご紹介した「クレイジータクシー」やら私がPS2最大の傑作と思う「大神」やらを嬉々として遊んでいました。

 さて、当時の私はやっぱり金がなく、そうそう新作ソフトを買うことは出来ませんでした。なので、大手家電量販店の中古ソフトコーナーをよく物色していました。しかしそう簡単に掘り出し物に出会うはずもなく、その日も夕暮れの帰り道を歩いておりました。

 下宿近くの大通り沿いの道を歩きますと、以前は不動産屋だった建物が改装を行っています。この場所はちょくちょく店が変わるので、今度は何になるのかしら、とちらりと一瞥をくれますと、そこには1枚の張り紙がありました。

 

「中古ゲーム専門店 ○○ 近日オープン」

 

 …おぉ!近所にこんな良い店が出来るのか!大手では扱わないような、マニアックでどうかしているソフトを取り扱ってくれると良いなぁ…。そんな期待を胸に抱き、私は開店の日を待ちました。

 

 そして開店の日、と言いたいところですが、一応学生なのであれやこれやと課題をこなしているうちに、店のことはスッカリ忘れていました。ですからある日、店の前を通って「あッ!開店してるゥッ!」とようやく気が付くトンチキぶりです。しかしゲームバカにとっての天国が出来たのです。早速私は店内に入りました。

 いやはや、さすがは中古専門店です。PS2はもちろん、PS、SS、MD、PCEと、これまでの歴代ハードのソフトが所狭しとならんでいます。地元で「ナムコミュージアム」に出会い、レトロゲームの面白さに味を占めていた私の胸は、否が応にもときめいてしまいました。うわぁ、これまで指を咥えて見ているしかなかった伝説のソフト達がわんさかあるぜ!しかもお手頃価格だ!まぁ、デスクリムゾンとかはやっぱり高いな…(この時期でも1万円はした)。

 しかしPS2以外のハードは持っていないので、ハードを買うところから始めなければなりません。ハードも中古で売られており、定価の半額くらいで買えるようですが…、取りあえずはPS2を遊び倒すことにし、さらに店内を見て回ります。そして店の奥で私は衝撃的な光景を見てしまいました。

 

 そこにはファミコンソフトが、それこそスーパーの駄菓子コーナーよろしく、鈴なりにぶら下がって陳列されていました!「スーパーマリオブラザーズ」、「ロックマン」、「メトロクロス」、「マイティボンジャック」、「ドラクエⅢ」、「がんばれゴエモンからくり道中」、そしてやっぱり、「火の鳥 鳳凰編 我王の冒険」などなど、あの頃後ろから見ているしかなかったソフトで一杯です。

 あぁああぁああぁああ!ファミコンだ!小学生の頃、指を咥えるどころか指を食いちぎるほどやりたかったファミコンが、こんなに…ッ!私は、いや本当に一瞬、忘我の境地におりました。そして我に返り(この間30秒ほど)、冷静を装った私は商品をよく観察します。

 基本的に箱はなく、説明書だけのソフトが多かったのですが、中には説明書もなくソフトだけという、ある種忍耐力が試されるブツもありました。また、さらに奥にはSFCやGB、GBAのソフトなんかも並んでおり、この店は歴代ハードのほぼ全てをカバーしているようでした。

 

 まさに宝の山ですが、しかしファミコンを持ってません。東京にいた頃、友人からソフトと一緒に借りていましたが、近所にこのような「なかなかやる店」がなかったので、1年ほど遊んでから返却してしまいました。あの時は「これでファミコンはやりつくした」と思っていましたが、いや、私は浅はかでした。

 まさかこれだけのソフトがある店に出会うとは夢にも思いませんでした。あぁ、こんなことなら何とかもらっておけば良かった。これはもう、ファミコン本体を買ってしまおうか、と考えました。しかし…。私はあることを思い付き、その日は家に帰りました。

 

 翌日学校に向かい、後輩に一応聞いてみます。

 

「ファミコンって、今、持ってる?」

「…持ってますよ、たまに遊んでますけど」

 

 

なんだってェェェッッー!!!

 

 

 

 続きます。


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todome

過去のホームページ時代より寄稿させていただいておりましたが、とある作品を完結させぬままに十数年すっかり忘れ、この度親方の号令により、再び参加と相成りました、todomeと申します。 主に小話を寄稿させておりますが、マンガ、ゲームにつきましても、今後ご紹介させていただこうかと思っております。どうぞお付き合いください。

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