とよ田みのる 「金剛寺さんは面倒臭い」

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 さて、全世界待望の(誇大妄想)「春の東映まんがまつり」、紆余曲折ありましたが、ついにフィナーレと相成ります。

 

 長かったなァ…、本当に…、不意に「運とはなんぞや」と思い付いてみたり…、「あッ、『いにしえゲーム』ほったらかしじゃんか!」と気が付いてみたり…、色々あったよ…、うん、あったあった(無駄な回想おわり)

 

 で、フィナーレを飾りますのは、予告いたしました通り、とよ田みのる先生「金剛寺さんは面倒臭い」であります。

 思えばとよ田先生には不思議な縁がありまして、ゲームバカである私の琴線をグワングワンとかき鳴らした、世にも珍しいピンボールマンガ「FLIP-FLAP」でファーストコンタクトを果たし、その濃すぎる作風に泥酔し、「ラブロマ」(そういえばまだ「ラブロマ」のレビューを書いていないな)「タケヲちゃん物怪録」、「友達100人できるかな」と読み続け、「あぁ、なんて面白いんだ」と洋式便器に腰を下ろして、トイレの壁を見つめながらニヤニヤしたものです(変態)

 が、その濃すぎる作風ゆえか、とよ田先生はあまり連載を持つ機会が少なく、したがって単行本になる作品は少なく(一応同人誌ではガッツンガッツン発表しているようですが、私はコミケや同人誌ショップに行く習慣がないので入手出来ていない)、私が入手出来た作品数が本当に片手で足りるという、ファンにとっては渇望以外何物でもない責苦に直面することになりました。

 そこへもってきて、ついに最新作が刊行されるというではありませんか。いやぁ、走ったね、書店に。で、やっぱり無いの、作風が濃すぎるから。仕方ないから、ちょっと遠い某大手書店に行ったの。で、やっぱり無いの、それほど有名じゃないらしいから。で、もっと遠くの某大手書店に行ったの。あったね、1冊だけ。よく取ったな、○ュンク堂。逆に心配になったぞ。

 で、読み終わって、「コレはスゴイネ!これぞジャポンの底力ネ!」と心の開国が達成されましたので(寝言)、今回ご紹介する運びとなりました(毎度毎度の長い前置きおわり)。ではカンタンなあらすじからお話しましょう。

 

 

 ある日ノラ猫にエサをあげようとした鬼の樺山くんは、突如見知らぬ女の子から「無責任だな!」と激しく、長々と叱られる。そのあまりにも論理的な叱り方に、ピュアで素直な樺山くんの胸はときめいてしまい、その女の子、金剛寺さんに恋をする。しかし金剛寺さんは学校でも堅物と評判の女の子。「私は規範の沿ったことしか出来ない、面倒臭い人間だ。」と突っぱねられてしまう。しかし樺山くんは「そんな金剛寺さんが好きです。」と一直線。すると金剛寺さんの心にも変化が訪れ…。

 

 

 ということで、本作はとよ田先生のホームグラウンドである「ラブコメ」なわけです。ラブコメといえば既に「ラブロマ」で書き尽くしたように思われましたが、いやいや、我らがとよ田先生の引き出しは尽きることがないのです。具体的には「ラブロマ」と比べて本作は心理描写がより緻密になり、しかしながら大爆笑ギャグがこれでもかと詰め込まれ…

 なに?「鬼の樺山くん」ってどういうことだって?いや、みなさんご存知の鬼ですよ。地獄にいる鬼。樺山くんはその鬼なんです。あ、本作の世界では、「都内某所に開いた穴が地獄に繋がり、鬼が地上にやってきた」ということになっています。だがこれはッ!本編とは大きく関わりの無い物語であるッ!という、とよ田先生の意向を尊重して、アッサリ流しましょう。

 さて、本作は「樺山くんと金剛寺さんが少しずつ愛を育むお話」なのですが、ネタバレしたくないので、これ以上深く内容に踏み込めないことに気が付きました。ネタバレを避けるとこういうことになるのです。なので、今回は本作「金剛寺さんは面倒臭い」がとよ田作品においてどういう位置づけになるのか、勝手に解釈してみました。

 で、私の解釈についてお話する上で都合が良いので(どこかで聞いたようなセリフだな)、本作を考える上で重要であると思われる3作品、すなわち「ラブロマ」、「タケヲちゃん物怪録」、「FLIP-FLAP」を振り返ってみます(おぉ、これで「ラブロマ」のレビューも出来て一石二鳥)VTR、回転(所ジョージ風)。

 

 「ラブロマ」では「感情の起伏に乏しく、論理的な星野くん」と「感情のみで生き、直観的な根岸さん」が、「恋をするってなんだろう」と悩みながらも結ばれていく様を、丁寧に積み重ねられた心理描写を絡めて描いた作品でした。初の連載ということで、作風もオーソドックスな「男女の対話」によって話が進んでいくタイプでしたが、ここで注目したいのが「論理的な星野くん」と「直観的な根岸さん」という構図であり、恋愛という1つのテーマを2つの視点から考えるという面白さがありました。

 次に「タケヲちゃん物怪録」では「呪いによって感情を失ったタケヲちゃん」と「感情の赴くままに生きる妖怪達」がタケヲちゃんの感情を取り戻すことに奮闘するギャグマンガでした。テーマが「感情」であるので、お話は自然と「生きる上で感情とはなんなのか」に焦点が絞られ、そこへ妖怪同士の派手なバトルシーンが絡んで、「心理劇としても活劇としても非常に面白い」というのがこの作品のポイントと言えましょう。

 最後に「FLIP-FLAP」では「色々とフツーな深町くん」「ピンボール大好き山田さん」の気を引くために、ディープなピンボールの世界に足を踏み入れ、やがては「生きることの情熱」に気付いていくお話でした。何かに打ち込む情熱をメインに描いておりますので、作中のピンボールシーンの迫力はモノ凄く、深町くんがゲームに極限まで集中した結果、スポーツ選手が経験すると言われる「ZONE」に至るまでの描写は凄まじく、とにかくこの作品のキモは「テンションの高さ」に尽きると思います。

 

 で、本作「金剛寺さんは面倒臭い」なのですが、一言で言えば「とよ田マンガの集大成」、つまり今ご紹介した3作品のエッセンスが特濃で凝縮された作品なのです。

 「ラブロマ」における「論理的な星野くん」と「直観的な根岸さん」による「恋問答(なんだそれ)は、そのまま本作の「論理的な金剛寺さん」と「感情豊かな樺山くん」のやりとりに重なりますし、「タケヲちゃん物怪録」における感情の動きとナンセンスなドタバタの融合は、やはり本作でも病的なまでに(褒めてますよ)追及されています。ここに「FLIP-FLAP」で迸った「どうかしているハイテンション」が加わり、物語は亜光速で突っ走る暴走リニアとなって読者の心を貫くのです。

 つまり、本作はこれまでとよ田先生が編み出し、培ってきた方法を総動員して、原点である「ラブコメ」に取り組んだ作品と言えるわけで、これはまさにSTGで言えば2周目(間違ったたとえ)、したがって「ラブロマ」から遥かにパワーアップした、より濃ゆいとよ田ワールドを色んな意味で余すことなく味わえる快作なのです。

 

 とはいえ、上記のような「とよ田作品における本作の位置づけ」なんてお題目は正直どうでもよく、本作はつまり、ゲラゲラ笑え、胸がキュンとして、モノスゴイパワーを感じ、なんかスッキリするのです。私も久しぶりに涙を流して爆笑し、とよ田先生お得意の「読んでいてこっ恥ずかしくなるセリフ」に魂を抜かれ、妙に明日が待ち遠しくなり(仕事なのに)、なんでかよく眠れました(個人の感想です)

 正直、恐ろしい作品です。正直、何の前情報もなく読んでいただきたいです。が、全くわからんちんで本屋に走る方も珍しいでしょうから、こちらで試し読み出来ますので、まずはこちらで新生とよ田ワールドに飲み込まれていただきたいと思います。そして単行本を購入し、食い入るように読み、私と一緒に叫ぼうではありませんか。

 

 

だがこれはッ!本編とは大きく関わりの無い物語であるッ!

 

 

 

 ~春の東映まんがまつり~ -完-


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todome

過去のホームページ時代より寄稿させていただいておりましたが、とある作品を完結させぬままに十数年すっかり忘れ、この度親方の号令により、再び参加と相成りました、todomeと申します。 主に小話を寄稿させておりますが、マンガ、ゲームにつきましても、今後ご紹介させていただこうかと思っております。どうぞお付き合いください。

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