いにしえゲーム血風録 二十回の栄光 「ダライアスとあちき (Visionnerz編)」

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 さて、ダライアスが稼働しているゲーセンを求めてゲーメストを読み漁った結果、「トライアミューズメントタワー(以下トライ)」の存在を知ることが出来た私は、そこがどんなゲーセンであるのかちっとも知らないままに、受験のための上京の際には是非ともココに行こうと決めてしまいました。

 ですからいよいよ上京し、いよいよ山手線と総武線を間違え、いよいよ秋葉原に到着し、いよいよトライの前に立った時、私ははるか上方を見上げて、それこそバカみたいに口を開けていたものでした。

 というのも、トライは実に8階建てのビルをまるまる使ったバカデカイゲーセンでして、プライズから格ゲーまであらゆるジャンルのアーケードゲームを網羅した、それはもうゲーセン小僧の聖地というか聖域というか桃源郷というか、とにかく田舎の小僧にとっては座りションベンもの(立ってはいたが)の代物でありました。だって首都圏のゲーセン小僧は「なんかやりたいゲームがあったらトライへ行けば良い」とまで考えていたという伝説のゲーセンなのですから。

 その上、上層階(通称天界・オレ命名)である6階と7階は全部が全部レトロゲームでありまして、かの時より遅れてきたゲーセン小僧が(つまりリアルタイムでプレイ出来なかった)伝説としてしか耳にしかしたことのないアコガレのレトロゲームが、それこそごくフツーに、それどころかやや投げやり気味に置いてあるという(褒めてますよ) 、私のような周回遅れに甘んじている小僧共には忘れようにも思い出せない理想郷なのでありました。

 しかし田舎の小僧である私はそんなこととはチットモマッタク知りません。てっきり我がホームグラウンドであるキャロットが少々デカくなったくらいなのだろうと「井の中」を地で行くような想像をしていたところへ、この8階建ての摩天楼で外天楼ときたもんですから、とっさに思ったのは「1PLAYいくらかしら」という場違いな心配だったことを今でも覚えています。

 とはいえ、ここでボンヤリ立っていても、そのうちに腹が減ってきてすぐそばの自販機でこんにゃくラーメンをすするしかありませんから、意を決して(おおげさ)中に入りました。

 1階はキャッチャーなどのプライズ系が並び、2階、3階と上がりますと格ゲーや音ゲーなどの流行りのゲーム、4階、5階はSTGやACTなどの王道ジャンルがこれでもかと詰め込まれていました。とはいえ、これらは現在のゲーム。そんなものには目もくれず(でも面白いですよ)、さらに上層に上がりますと、いきなり度肝を抜かれる光景にぶつかりました。

 6階入り口から目の届くところに、いきなりダライアスがありました。心の準備も何もなく、あっという間に発見してしまいましたが、そんなことはどうでも良いのです。私の視線はその手前の大型筐体に注がれていました。ゆったりとしたシート、一本の操縦桿、画面には灰色の車両型機体が夜の街を疾走しています…。「ナイトストライカー」だ!私はそれはもう、震えました。

 ナイトストライカーは以前に購入した「ダライアスⅡ」にカップリングとして収録されており、そのあまりにもカッコイイ楽曲にコーフンした私はやりたくてたまらなくなりました。しかし出荷台数が300台くらいしかなかったレアゲーでありまして、しかも発売は私がゲーセンに入り浸る5年ほど前でしたので、全く触れる機会がありませんでした。仕方なく私はゲーメストムックの「ザ・ベストゲーム2」の紹介記事を読んで思いを馳せるしかなかったのですが…、これはまた別のお話ですので、ダライアスに戻りましょう。

  私はナイトストライカーの筐体の周りをグルグル回り、「ヘェー」とか「ホォー」とか奇声を発しながら(小声でですよ)、頭の中では以前に購入したサントラの楽曲をかき鳴らしていましたが、フト我に返り、本来の目的を思い出しました。そそくさと隣に鎮座するダライアスの筐体に近づきます。

 以前より3画面ぶち抜きのバカデカイ筐体であることは知っていましたし、キャロットでダライアスⅡの筐体を見たことはあったのですが、しかし「やってみたい」という怨念を抱いたうえで実機を目の当たりにしますと、やはりその大きさに圧倒されてしまいました。

 ダライアスの筐体は、二人掛けのシートの前方にボックスが設置され、軽自動車くらいの大きさでした。スピーカーからは下腹に響くような重低音が流れており、ボックスの中を覗き込むと、アレアレ確かに3画面がつながったゲーム画面を見えます。視界が全部ゲーム画面となり、それはそれは大変な迫力でした。

 しばしボーゼンとダライアスの筐体を眺めていた私でしたが、意を決して、生唾をゴクリと飲み込み、1P側のシートに座ってコインを投入しました。途端にコイン投入のSEが全身を貫き、この時点で相当ビビったのですが、エイヤッとスタートボタンを押しました。

 ゾーンAは地下洞窟で、自機シルバーホークがその中を飛行しています。続いて地下洞窟のBGM「Captain Neo」が流れ始めます。あぁ、サントラで数億回聞いた楽曲が、今!目の前で!流れている!自然と手が震えてしまう私でしたが、これはゲームです。操作しないといけません。なので感動を抑えてゲームに集中します。

 操作は8方向レバーとボタンが2つ。ボタン1は対空ショットを放ち、ボタン2で対地ショットを撃てます。とはいえ、ダライアス外伝でシステムは体に染み込ませているので、特に考えもなく連射します。

 すると自機の前方に対空ショット「ミサイル」が3発放たれ、右に向かって飛んでいきます。さらに連射しますが、ミサイルは出てきません。アレ…?ミサイルってこれだけしか出てこないのかな?と、ここで私は大変なことに気が付きます。ダライアス外伝では数珠つなぎに発射出来たショットが、初代ダライアスでは3連射しか出来ないのです!

 これはこういう仕様なのか、それともダライアス外伝よりも昔のゲームであるため、つまりは基盤性能の限界のためなのか(昔のゲームは画面に同時に表示できるキャラクター数(敵機だけでなく、自機のショットも含まれる)が少なかったので、それに比例して自機が連射出来る弾数が少なかった)、ともかく不用意に連射すると外れたショットが画面外に消えるまでは次が撃てません。

 しかもダライアスは横3画面ですから、撃ち損じの弾が画面の右端から消えるまで普通のSTGよりも時間が掛かってしまいます。ですからたちまち弾切れを起こし、敵機が目の前にいるのに撃てないという残念な結果に陥ってしまいます。そして実際、パワーアップアイテムを持つ色違いの敵をみすみす逃してしまいました。

 …ガデムッ!これで最強装備である「ウェーブ」から一歩遠のいてしまった!しかしいつまでもクヨクヨしているわけにもいきません。気を取り直して迫りくる敵機を破壊していきます。が、ダライアス外伝のクセで不用意な連射を繰り返してしまいます。そしてほどなく敵弾にぶつかり、ミスとなってしまいました。

 …これはむつかしい!ボンヤリと連射でなぎ払うゲーム性ではないのか!そうなると敵機の動きを読んで精密射撃をするしかありません。しかし初プレイで敵機の動きなんて分かるわけがありませんから、仕方なく敵機を惹き付けて近距離射撃をするしかありませんでした。

 対して敵機は悠々と遠距離から正確に自機を狙ってきます。もちろん避けなければなりませんが、しかしダライアスのゲーム画面はその構造上、シートから50cm強離れているため小さく感じられ、結果敵弾が非常に見にくいのです。ですからいつの間にか被弾している場合も多々あり、せっかく取得したアーム(バリア)もみるみるはがされ、再びミスとなりました。

 それでも徐々にゲームに慣れ、最後の一機となったところで画面が暗転、警告音とともに恒例のアナウンスが流れます。

A Huge Battleship

KING FOSSIL A

Is Approaching Fast

 アッ!ダライアス外伝と同じだ!(あたりまえ)すぐさま「ドッドッドッ」と重低音が響き、分裂機雷が飛んできます。ダライアス外伝でもこの分裂機雷は出てきましたが、今回はちゃんと狙って撃たないとたちまち機雷に囲まれてしまいます。前哨戦からして既にむつかしい!ようやく機雷を全破壊したところで、 ぼくらのシーラカンスの登場です。

 ダライアス外伝では口から5WAY弾を吐き、攻撃するとウロコを飛ばし、終いにはミサイルランチャーを乱射するなかなかの猛者でしたが、初代では口から5WAY弾のみでした。さすが1面、ゾーンA。

 しかしこの弾がなかなか速く、弾の隙間を直感しないと避けるのがむつかしいものでした。あれよあれよとアームがはがされ、何とか敵弾の死角から対地攻撃で狙い撃ちにして沈めました。

 「ガガガゴゴゴズボボムリムリムリキュッピーン」と派手な爆音を残し、シーラカンスは撃沈していきます。ようやく1面、ゾーンAクリア!この先のルート分岐では油断すると地形に激突すると聞いていたので、慎重に上ルート「ゾーンB」を選択し、次のステージに突入しました。

 ゾーンBは鉄骨剥き出しの都市地帯で、地形の死角に敵の砲台が無数に設置されており、あえなく撃ち抜かれゲームオーバーとなりました。大人しく席を立った私は、筐体を少し離れた位置から眺めました。

 …こいつぁむつかしいゲームだぜ。敵の出現パターンはもちろん、敵の動き、攻撃、地形まで覚えないとかなり厳しそうだ…。そう、毎日3プレイくらいして、じっくり攻略しないと…。しかしこちとら遠征の身。じっくりプレイなど出来るわけもなく、また金にモノを言わせてのコンティニュープレイをするにも懐が素寒貧でありました。

 ともあれ、大好きなゲームの始祖に触れることが出来た。それだけでも満足した私は、レトロゲームフロアをぐるりと見て回り、「スパルタンX」や「忍者くん阿修羅の章」があったことに大変驚き、しかし帰りの電車の時間の関係上、そのままトライを後にしたのでした。

 山手線に揺られながら、私はふと思いました。…そういえば、「ダライアスⅡ」はなかったな。どこにあるのかしら?そして帰りの電車の中では、既に私の頭の中ではダライアスⅡの曲が流れていたのでした。

 つづく


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todome

過去のホームページ時代より寄稿させていただいておりましたが、とある作品を完結させぬままに十数年すっかり忘れ、この度親方の号令により、再び参加と相成りました、todomeと申します。 主に小話を寄稿させておりますが、マンガ、ゲームにつきましても、今後ご紹介させていただこうかと思っております。どうぞお付き合いください。

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