今でこそ「一個のソフトにゲームがたくさん入っている」という仕様は珍しくありませんが(チーターマンのアレとか)、昔は、しかもゲーセンでは非常に珍しく、かつ重宝されました。だって1つの筐体に複数ゲームが入っていれば、その分床面積を節約出来ますから、別の筐体を置くことが可能になるわけで、つまり店の品揃えが増えるのですから。その代表として真っ先に思い出されるのがNEOGEOのMVS筐体で、1つの筐体に4つだか6つだがゲームが搭載されており、セレクトボタンで好きなゲームを楽しむことが出来るシステムでした。要は基板に複数のスロットがあり、そこにロムカセットを差し替える事で可能だったわけですが、その翌年、カプコンが「本当に一枚の基板に3つのゲームを詰め込んだシステム」を発表しました。それが今回紹介する「ワンダー3」なのです。
ワンダー3はアクション、シューティング、アクションパズルの3つの異なるジャンルのゲームを用意し、それぞれが味わい深いゲーム性を有していました。これは驚くべきことです。何故なら単純に考えてカプコンは異なるジャンルのゲームを3つ、同時進行で開発し、そのどれもが一定水準以上の素晴らしいゲームだったということを意味するわけで、カプコンの凄まじい開発力を示すものでもあるからです。が、プレイヤーにとってはそんな御託はどうでも良く、つまりは面白いか面白くないかで、まあ面白かったわけです。さて、この中で私が散々遊んだのはアクションの「ルースターズ」とシューティングの「チャリオット」でした。アクションパズルの「ドンプル」は…、まあ後々お話しするとして、まずはルースターズからご紹介しましょう。
「ある日冒険野郎『ルースターズ』のルーとシバは、謎の旅人から伝説の神器『チャリオット』の話を聞く。それは空を自由に駆けることができ、世界にはびこる恐ろしい魔物『妖魔』を退ける力を持つという。今ここに1枚のカードがある。これを妖魔の本拠地の城の頂で天にかざせば、チャリオットの封印は解かれ、伝説の神器を手に入れる事が出来るというのだ。早速この話に乗った二人は、妖魔の住む城へと旅立ったのだったのだった。」
こんなストーリーで始まるルースターズは、横スクロールアクションで、レバーで移動、1ボタンでジャンプ、2ボタンでショットを打てます。レバーとボタンの組み合わせで天井にぶら下がったり、階上に這い上がったり、上方向や下方向へショットを打ったり、スライディングをしたりと、かなり多彩なアクションが可能で、慣れれば思い通りのアクロバットを決める事が出来ます。いわば魔界村のアクションを相当自由にしたと考えていただければ結構だと思います。そして魔界村と同じように、敵や敵の弾に触れるとダメージとなり、服が脱げます。この状態でもう一度ダメージを喰らうとミスになります。
次にアイテムです。プレイヤーのショット(ルーならボウガン、シバなら投げナイフ)は道中の宝箱の中のアイテムを取る事で強化され、ブーメランが追加される「Hyper」、背後攻撃が出来る「Tail」、反射レーザーが付く「Bound」があります。またオプションとして炎、氷、雷の精霊が出現することもあり、この場合は精霊を連れて行く事ができ、それぞれ特徴的な攻撃でプレイヤーを援護してくれます。加えて特定の宝箱には魔法のランプが入っており、これを取るとダメージを回復することが出来ますし、ハートのトランプが出た場合はその数字だけハートを貯める事ができ、100まで貯まると1UPします。この他に得点アイテムであるコインが出現しますが、得点による1UPはないので、ハズレと言えばハズレです。
このように、システムは至ってシンプルであり、攻撃アイテムやオプションも実は特に大きな長所や短所があるわけでもありません。重要なのは敵の出現位置や攻撃方法などで、特にボス戦ではカプコンらしく、プレイヤーを悩ませる攻撃をしてきます。全部で5面と短めですが、しかしどの面も趣向を凝らした仕掛けに満ちており、そこへザコ敵やボスが絡み合い、スリルに満ちた冒険を味わうことが出来るでしょう。
ではルースターズの冒険の舞台をご紹介します。
1面はルーとシバの住む家からスタートし、鬱蒼とした森を駆け抜けています。封印のカードの気配を感じてか、既に森は妖魔の支配下にあるらしく、次々と敵が襲い掛かってきます。やがて地下を進み、茨やコウモリの妨害をくぐり抜けると、ボス「アゴ野郎(勝手に命名)」が待ち受けています。頭部が弱点ですが、動きが早く、地形を利用して距離を取らないと非常に危険です。
2面は森を抜けて湖へ。ここにも妖魔の手が伸びてきており、敵のジェネレーターや空から振ってくる妖魔の卵から、敵がぞくぞくと襲ってきます。湖の中心部から敵の飛行神器に飛び移り、二人組のボス「カタナとブレス(今命名)」との空中での大立ち回りを演じます。挟み撃ちの危険を上手くかいくぐれるかは、敵の行動パターンを読み切れるかにかかっています(慣れないと簡単にやられてしまうところは、いかにもカプコンと言えましょう)。
3面は妖魔の呪いにより、住人が木の人形にされてしまった廃墟の街です。手のひら型の妖魔が辺りにうずくまる人形を操り、あるいは奇妙な機械が弾を飛ばしてきたりして、プレイヤーを悩ませます。また通路の崩壊にも気を付けなければなりません。そして妖魔の城の入口を守る「頭ナイフ(適当に命名)」のトリッキーな攻撃は、プレイヤーに一瞬の隙も許さないのです。
そして4面、5面は妖魔の城内。様々な罠や手ごわい中堅妖魔が次々と襲い掛かります。またボスオンパレードの場面もあり、歴代ボスたちの激しいリベンジにも耐えなければなりません。そして城の最上階。妖魔の親玉とは何なのか?チャリオットを手に入れ、妖魔の呪いを解き、街の住人達を元に戻せるのか?激しい最終決戦が待っています。
このようにルースターズは王道のストーリーとカプコンらしい練られたシステムにより、非常に完成度の高いアクションゲームとなっています。しかしこのゲームをさらに魅力的にしているのは、職人芸とも言えるような洗練されたグラフィックと、勇ましく、時に幻想的なサウンドです。ルースターズはファンタジーとマシンの融合した世界を描いており、それはいわば錬金術の世界です。錬金術の持つ怪しさやある種の万能性、あるいはいびつさが素晴らしいドット絵で表現されています。またサウンドも冒険を盛り上げるようなアップテンポの曲あり、逆にメロウな曲もあり、どの曲も場面場面に非常にマッチしています。特に3面の廃墟の街はグラフィック、サウンド共に秀逸で、寂寥感を感じさせつつもどこか滑稽な、誤解を恐れずに言えばそれは「幸福なディストピア」の風景であり、非常に印象深いものとなっています。この世界観を体験するだけでも十分に価値のあるゲームだと言えます。
さてルースターズの二人はどうなったのでしょうか?それは六回裏でお話ししましょう。
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