いにしえゲーム回顧録 七回表 「エレメカ百景(A Clockwork Orange編)」

ゲーム
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  昔に比べ、ゲームは非常に身近なものになりました。「生まれた時から携帯ゲーム機があった」なんて方が多いでしょうし、そういった方のゲームとの初遭遇は家庭用ゲーム機であるのが一般的でしょう。しかし私くらいの世代となると、ゲームとの初遭遇はゲーセンで、と言いたいところですが、実はスーパーやデパートの屋上だった、という方も多いのではないでしょうか。

  そう、かつてのデパートの屋上はビデオゲームの宝庫でした。しかしビデオゲームばかりが設置されていたわけではなく、幼児向けの乗り物や、ボールプールなどが併設された「屋上遊園地」と言えるものでした。ここで登場するのがもぐらたたきやお菓子クレーンを始めとした電子のカラクリ「エレメカ」で、主に身体を使ったアナログ感溢れるゲームでした。それはアミューズメントマシンの始まりであり、つまりは全てのビデオゲームの始祖であると言えます。そもそもナムコの始まりは屋上遊園地の木馬制作であり、実際「モノレールから木馬まで」なんてキャッチコピーを使っていましたからね。

  そこで今回は愉快で度肝を抜く、パンクでアナーキーなエレメカ(一部単なるメカもあり)の世界をご紹介したいと思います。

 

  「山のぼりゲーム」

  エレメカと言えばやはりコレ。ご存知の方も結構多いのではないでしょうか。高さ2mほどの盤面には巨大な山の絵が描いてあり、それに沿ってジグザグにランプが並んでいます。これが登山道で、ランプが点灯するとクライマーの姿がシルエットで浮き上がります。操作は「すすむ」ボタンと「もどる」ボタンの2つのみ。押すとランプが1つ、進んだり戻ったりします(マヌケな解説だ)。このボタンは連打可能で、連打すればそれだけランプも早く移動します。そして制限時間内にゴールである頂上まで到着すれば、機械の下の穴から何かしらの商品が出ます(最近ではメダルを賭けるギャンブルタイプもあるらしい)。

  しかしそれだけだとただの連打ゲーなので、もちろん障害があります。障害は登山道に隣接する形で設置され、例えば蜂が襲ってくる場面では、蜂ランプが高速で移動しています。これに隣接する個所にクライマーがいるとミスとなり、登山道の入口(つまりスタート地点)に戻されます。それではプレイしながら、障害をご紹介しましょう。

 

  まずは谷を渡る丸太橋です。定期的に折れて、谷底に落下していきますが、しばらくすると復活するので、そこを狙って渡りましょう。ちなみに失敗すると、ご丁寧に転落ランプが点灯し、落下感(あるいは救われない感)を存分に演出してくれます。そしてスタートに戻されますが、谷底の河を流され、命からがら麓までたどり着いたという表現なのでしょう。

  次に先述の蜂です。高速でこちらに向かってきますので、やりすごした隙に急いで駆け抜けましょう。刺されるとクライマーが点滅して、唐突にスタートに戻されます。きっとアナフィラキシーショックにより搬送され、死線をさまよいつつも何とか血清が間に合い、その退院後の再挑戦を表現しているのでしょう。

  続いてはヘビが毒を吐いてきます。これにも法則性があるので、見切って駆け抜けましょう。毒を喰らうとクライマーが点滅し、唐突にスタートに戻されます。恐らく毒にやられて救急搬送され、しかし血清が間に合わず、「もはや本人の気力です」とか言われながらも回復し、その退院後のリベンジを表現しているのでしょう。

  次は落石地帯です。巨石が5列に渡ってランダムに落下してきますので、その隙間を縫って進んでください。被弾するとクライマーが点滅し(以下略)。多分巨石に巻き込まれ複雑骨折し、血の滲むような苦しいリハビリ、挫折、そして家族に支えられての再生の後に、再び大地に立った喜びを表現しているのでしょう。

  続いてロープクライムです。よほど古いロープなのか、ランダムで切断個所が点滅します。そこにいると、切れたのはロープなのに、何故かクライマーが点(以下略)。推測するに、そのまま滑落して沢に落ち、凍死寸前で山小屋に居た所を偶然発見され、死んだと思われていた為に嫁には離婚され、あまつさえ再婚までされ、しかし恵比寿で出会った花屋の娘と恋に落ち、愛する者のため、何より弱かった自分との決着をつけるため登山道に再び立った、一人の漢を表現しているのでしょう。

  いよいよ最終関門の落雷です。2か所にランダム、かつ高速で雷が落ちています。動きがかなり読みにくく、冷静な判断と一歩踏み出す胆力が試されます。落雷を喰らうとクラ(略)。これまでの経過から推理すると、落雷による通電によって、クライマーの体細胞を構成する原子の電子回転方向が逆転し、この逆転現象が先の落雷によって周囲に影響を及ぼし、結果時間の逆転現象が起こったと考えられます。つまりこれまでの登山過程は巻き戻され、落雷のエネルギー効率から計算すると、丁度クライマーが登山口にいる時間まで戻されたと考えるのが妥当だと思われます。

 

  これらの障害を乗り越えると頂上です!おめでとう!良かったね!特にエンディングはないよ!

 

  「ルーレットゲーム」

  屋上遊園地に必ずある、人間が初めて触れるギャンブル。それがこのルーレットゲームです。盤面には輪が描かれ、そこに数字がいくつも書きこまれており、その脇にはランプが付いてます。要はどの数字でランプが止まるかを当てるゲームなのです。代表的な機種が「ピカデリーサーカス」で、ピエロだかヒコーキだかの愉快な情景が描かれていますが、およそギャンブルにはこのような華やかなイメージを前面に出す傾向にありますからダマされてはいけません。でもダマされましょう。

  さてこの数字がそのまま倍率になっており、2倍から30倍まで設定されています。もちろん低倍率は配置が多く、高倍率は配置が少ないのです。しかしここでクセモノが「0」の存在。ここに止まると問答無用でハズレとなり、賭けたメダルを根こそぎ持って行かれます。本式のルーレットでは0や00に駆ける事が出来ましたが、この機種では賭ける事が出来ません。ココがクセモノなのです。その情け無用っぷりをプレイを通して見てみましょう。

 

  まず手始めに配置数が多い「2」と「4」に賭けてみます。さぁ、ルーレットスタート。高速でランプが回転し、やがてゆっくりになり停止。数字は「8」。ハズレです。いきなり高倍率が来るとは、なかなか波の荒い機種と見ました。

  そこで次は「6」と「10」に賭けてみます。ルーレットスタート。ランプ回転、そして停止。数字は「2」。ハズレました。やはりカタい勝負が有効なのでしょうか。

  そこで次は「2」と「8」に賭けてみます。ルーレットスタートで、停止。数字は「2」。アタリです!でも払い出しは2枚。全く嬉しくありません。やはりカタめの倍率を狙った方が良さそうです。

  そこで次は「2」に3枚、「4」に2枚賭けてみます。ルー(略)。数字は「10」。おいおい、結構高倍率が来るもんだね。でもたまたまでしょう。

  なので次も「2」に3枚、「4」に2枚です。ル(略)。数字は「30」。…えー。ここで最高倍率が来ちゃうの?こうなったら広く浅く賭けていくしかありません。

  いよいよ大勝負。「2」と「4」に3枚、「10」に2枚、「30」に1枚です。(略)。数字は「0」。…フンガーッ!ムキーッ!アレだ!中に人が入ってるんだ!こうなったら最後の手段だ!

  ヤケクソで全数字に2枚賭けました。(略)。数字は「0」。……ハァァァァーッ!イィィィィーッ!ブチブチブチブチブチ。

 

  …ね?香港のカジノでもこんなムシり方はしません(「深夜特急」参照のこと)。そして恐ろしいことに、後継機である「フィーバーチャンス」では、当たると中央のスロットが回転し、数字が揃うとさらに倍率ドンというより過激なゲーム内容となっております。しかし「ピカデリーサーカス」以上に「0」に止まります(主観的には)。リスキーでも何でもなく、もはや貯金箱です。

  とはいえこのゲームは非常に人気があり、様々なキャラクターをモチーフにしたものが作られました。中にはあの「ゼビウス」をデザインしたものもありましたが、でもそれ以上に気になる「0」の存在。しかし最高払い出しである「30」に4枚賭けの120枚をゲットした猛者もいるとかいないとか。きっとビル全体を傾けたんでしょう。

 

  と、今回は2機種を紹介しましたが、しかし屋上は広いのです…。それは七回裏でお話ししましょう。


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todome

過去のホームページ時代より寄稿させていただいておりましたが、とある作品を完結させぬままに十数年すっかり忘れ、この度親方の号令により、再び参加と相成りました、todomeと申します。 主に小話を寄稿させておりますが、マンガ、ゲームにつきましても、今後ご紹介させていただこうかと思っております。どうぞお付き合いください。

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