いにしえゲーム回顧録 十七回裏 「海底大戦争(風船爆弾編)」

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 さて、相も変わらずキャロットに出勤のわたくし。今日も「大魔界村」の宝箱を探そうか(まだクリアしていなかった)とビデオゲーム筐体の方に向かうと、フロアの隅に見慣れないゲームがあります。濃い。遠目から見ても、一見して、なんか濃い。早速近寄ってみます。

 タイトルデモが始まり、まず大海原に魚雷発射、そして真っ赤な「海底大戦争」の文字がゴゴゴ…と浮上。特撮映画を感じさせる(そして絶対ワザとやっていると分かる)演出です。…やっぱり濃い。ですがタイトル画面なのにグラフィックが丁寧に書き込まれていることが分かります。それはプレイデモ画面で一層顕著になりました。

 水没した高速道路、生い茂る海藻群、海上を旋回するヘリ。そしてオレンジ色の潜水艦がドッカンドッカン魚雷を発射し、とうとう高速道路を破壊してしまいました。そのグラフィックはあまりも緻密で骨太、微に入り細を穿つ美しさで、次々と建造物が壊れる様は重厚な音が聞こえてきそうです…。って、これ、自機が潜水艦なのか!?潜水艦でシューティング!?この時点で私のハートは盗まれたのでした。インストカードを読み、コインを投入です。

 

 潜水艦のソナー画面になり、巨大な何かの影が映ります。その後、自機発進シーンとともに英文で状況説明。「It’s too rate.」とありましたから、なんかヤバいんでしょう(英語2なので)。舞台は無数の氷山が浮かぶ南極海。透き通るブルーにクジラの群れがキレイですが、目の前に早速敵潜水艦が出現、魚雷発射。当たりそうにないけど、まぁ下に逃げようかとレバーを下に入れると、ヌルッと降下。…遅い!自機が思ったよりも遅い!そしてゆっくりと自機上方を通過する敵魚雷。…敵弾も遅い!

「なぁんだ、これは反射神経が必要なタイプのシューティングではないのか。」

 そんなふうに当時の私は考えました。さて、何度も言うようですが、なんせ中坊の考えることです、敵機、敵弾がゆっくりということは、難易度を上げるために奇天烈なギミックが待っているということを、この時全く気が付いていないのでした。

 

 さてしばらく進むと黄色い潜水艦が登場。有無を言わさず撃沈するとアイテムが出現。「M」と「A」が交互に変化します。Mを取ってみますと、それまで小さかった上昇ミサイルが明らかに巨大になり、しかも高速で上昇。そのまま水面でブバーンと水柱を上げます。とてつもなくパワーアップしています。続けてまた黄色い潜水艦が出現したので破壊、今度は色付き球体が出現しましたので、青を取ってみます。すると発射した魚雷に巨大な渦巻が付き、敵艦を巻き込んで破壊していくではありませんか。猛烈にパワーアップしています。この自機の異様なパワーアップを目の当たりにした私(バカ)は、「これだけ自機のパワーアップが協力なら、それほどの難易度ではないかもしれん」と先の予断に加えて完全に油断したのでした。

 

 その後、巨大鉄球からの爆発機雷も難なく避け、海上にヘリがいるのを発見し浮上、水面ではミサイルは誘導ミサイルになることを学習した私は、やがて浅瀬に辿りつきました。浅瀬、つまり水深が浅い訳ですから、潜水艦にとっては不利な状況です。しかし油断し切ったバカ中坊はそんなこと分かりません。臆することなくズカズカと進んでいきます。

 すると海底から砲台が出現、発砲してきます。慌てて浮上しますと、今度は海上の岸壁にも砲台があり、水中へ爆弾をドプンドプン投下してきます。加えて先程のヘリも爆弾をドプンドプンと放り投げてきます。下から上から、しかしゆっくりとした弾幕攻撃はそれまで経験したことがありませんでした。

 一般に弾幕は「自機を狙ったもの」と「広範囲にバラまく」ものに2種類に分けられます。前者は敵弾を十分に引き付けて、即座に逆方向に移動する「切り返し」と呼ばれる避け方が基本です。対して後者はばら撒かれた敵弾の間をクネクネと逃げ道を探して避けるものです。つまり全く違うベクトルの弾幕なのですが、この時の私は「自機を狙ったもの」しか経験したことがありませんでした。首領蜂シリーズのように当たり判定がクソ小さい点であればアドリブで何とかなったでしょうが、海底大戦争では自機グラフィックより少し小さい常識的な範囲なので、プレイヤーの力量がガチで試されることになるのです(もっとも首領蜂シリーズでも終盤になると全くのガチですが)そのため、私は初めて直面する「ゆっくりで雑多な弾幕」に全く混乱して逃げ道を見つけることが出来ず、敢え無く撃沈してしまいました。先の油断が見事に的中、悪いことは出来ないものです(してないけど)。

 

 1機やられて、私はようやくこのゲームの方向性を理解しました。つまり、今更ながらこのゲームが「任意スクロール」であることに気付きました。先程の私はズカズカ進んでしまい、結果大量の敵砲台の集中砲火にやられてしまいました。これはつまり「少し進んでは敵を破壊し、安全を確保してからまた少し進む」ということが攻略上必要だったのです。

 実際、各面に用意されたギミックはそのようなものばかりでした。1面後半に登場する謎のテクノロジー「アイスビーム」は、これに触れるとミスにはなりませんが、しかし自機が凍りつき、身動きが取れなくなります。そこへ出現し、冷静に自機を狙う敵潜水艦、敵砲台。レバガチャで解放されますが、非常に焦ります。

 また2面の港湾では浅い水深という狭い場所に、上空から爆弾が雨あられと降り注ぎ、サブウェポンでの上方攻撃による迎撃が重要になります。この時、適当に連射しても迎撃出来るのですが、サブウェポンには一定数しか連射出来ないので、その間隙を縫われて被弾することもあります。ですから、敵弾をよく見て迎撃する必要があるのです。また降ってくる爆弾の中には焼夷弾もあり、これは水底で燃え上がるもので、これに触れるともちろんミスになるので、狭い移動範囲が更に狭くなってしまいます。そこへ水深一杯の巨大戦艦がやってきて、破壊する以外に出口なし、という状況になったりもします。このような状況に陥ってしまうのも、偏に「ズンドコ進んでしまったから」であり、やはり目の前の敵を確実に沈めてから進行しないと危険なのです。

 この傾向は面が進む毎に過激になり、3面での巨大石像とのチェイスでは進行コースの選択が非常に重要になり(上手く逃げないと地形に潰される)、4面の水没都市では巨大ミサイルが次々と発射されている隙間をくぐるため、ミサイルに計画的に攻撃をしなければならなかったり(上手く攻撃しないと逃げ道がなくなる)、5面の海底火山では火山の噴火タイミングを身体で覚えなければならなかったりと(覚えないと火山弾にぶつかり即死)、ギミックはどんどん複雑で奇抜なものになり、それにつれて敵の攻撃「ゆっくりで雑多な弾幕」も激しくなっていきました。しかしそれらも「安全を確保して進む」ことを心掛ければ突破出来るものばかりでした。

 この点に気付いてから、私のプレイは安定しました。画面上の敵を沈黙させてから、初めて前方へスクロールさせる。それはさながら通路のワナを一つ一つ解除していくシーフのような気分です。しかしその、いわばメーカーとの知恵比べのような感覚が非常に楽しいのです。計算された敵の配置を見せつけられ、さぁどう抜ける?と開発者に試されているようです。

 

 またグラフィックの美しさが目を引きました。1面南極海の青い海、白い氷山の爽やかさ。2面の港湾地帯のバラック小屋やビル、そしてそれらの見事な破壊エフェクトに大爆笑(丁寧過ぎて処理落ちするから)。3面海底遺跡では巨大石像の「ウガー」感と石ブロックの崩れ落ちる見事なアニメーションと質感。何よりも4面の水没都市。水の揺らぎの向こうに見える崩壊した高層ビル、沈みかけた高架、そして野球場は大災厄であるにも関わらず心奪われました。

 それに加えて、自機の攻撃エフェクト(特に超音波魚雷の渦巻が美しい!)と敵の破壊エフェクト(非常に丁寧に壊れる)の派手さは特筆ものであり、そしてこれら全てを包み込む海を象徴する、水飛沫と泡のエフェクトは美しいの一言です。これら恐ろしいまでの書き込みは、もはやゲームの域を超えていて、ある種の芸術作品のように思えてなりませんでした。

 こうして私はこの作品をゲームとしてどこか映像作品として、さながら自分好みの特撮冒険活劇を作るかのように楽しみました。そして同時に開発者との知恵比べとしても存分に楽しんだのでした。今思えばそれはシューティング攻略の基本中の基本「パターン構築」であったように思えます。

 

 さてある程度ゲームに慣れてきた私は「どの武装が最もラクか」ということを考え始めました。まず主武装の魚雷ですが、赤の通常魚雷は横に進むだけです。ですから敵に当てるためには敵の正面に位置しなければなりませんが、それは自分も敵に射撃される危険もあるので、これはナシです。すると青の超音波魚雷か緑のクラスター魚雷になります。青は攻撃範囲が広いが威力に欠き、緑は高火力ですが射程距離が短い。結局「攻撃は最大の防御」ということでクラスター魚雷を選択した私ですが、これが案外間違っていなかったようで、射程距離が短いと言えども炸裂するので、ある程度の攻撃範囲をカバーできますし、高威力なので大型機を瞬殺出来ます。特に攻撃に激しいボス戦では重宝しました。ただアイテムの変化タイミングが「赤→青→緑→赤…」なので、間違って赤を取って地獄を見ることもありました。

 次にサブのミサイル(M)か風船爆弾(A)です。まず私が疑問に思ったのは「何故風船爆弾は(A)なんだろう」ということですが、それはさておき、この選択はすぐに決まりました。風船爆弾です。ミサイルは発射後高速で水面に直線的に発射されます。正直、敵に当たることなく水面で爆発することも多々あります。しかし風船爆弾はその「ゆっくり上昇する」特性ゆえ、適当に放っても案外敵に当たっちゃったりするのでした。ラク。これはラク。しかも水面では誘爆する機銃になりますからなかなかの威力で、見た目もカッコイイ(これはどうでもいい)。そんなわけで、私の装備は決定し、そのおかげで攻略も安定して進み、4面のニクいアンチクショウも野球場のマウンドに沈めることが出来ました。

 

 しかし5面海底洞窟は非常に難関でした。まず海底火山の噴火タイミングをつかめない。あるいは火山弾の回避地帯を特定できないのです。こればかりはゆっくり慎重に進むというより覚えるか、あるいは上級プレイヤーのプレイを後ろから見る(技は目で盗めを地で行く)しかなく、攻略は遅々として進みませんでした(そもそも他にやっているプレイヤーがあまりいなかったから)。そして火山を乗り越えても、謎の巨大海洋生物の襲来に遭い、撃沈。ここが壁になってしまいました。

 しかし運良く巨大海洋生物も乗り越え、謎の光学兵器も「アチョー(アドリブによる弾避け:ゲーメストに由来)で逃げ切り、とうとうボスに到達しました。しかし待っていたのはやはり巨大生物で、しかも火焔を吐き、火山弾が乱舞する地獄でした。ここにきて自機の当たり判定を熟知した弾避けを要求され、シューティング経験値の低い私の潜水艦は成す術もなく撃沈し、同時に私の心もここで折れたのでした。

 

 その後、上級プレイヤーによる最終面を見ることが出来ました。そこは…まぁ、開発者の仕掛けたトラップのオンパレードでした。これまで培った技術を総動員して臨まなければ到底先に進むことが出来ない、まさに「最終試験」、というかもはやパズルでした。中坊の私は口を半開きにし、興奮し、しかし諦めを感じて見学していました。ここは到底自分に来れる所ではない。それは5面までは確かに海水だったのに、最終面ではどこかよそよそしい人工的な水に見えたことも表していたように思えます。そして海底大戦争は私がクリア出来ぬまま、消えてしまいました。

 

 その後、私はPSで「R-TYPE」に出会い、そこでアイレムの名を知ります。そしてまたPSで海底大戦争と再会し、この作品がアイレムのものであることを初めて知るのです。そして「なるほど、確かにアイレムらしいギミックに富んだ内容だった」と合点がいくのでした。ですからアイレムと言えば誰もがR-TYPEを挙げますが(それはもちろん私もそうですが)、しかし私は次点として海底大戦争を挙げます。何故って、これが私にとっての最初のアイレムシューティングで、パターン構築の面白さを教えてくれたゲームなのですから。

 

 え?PS版はクリア出来たんだろうって?…いや?

 

 それではまた、十八回表でお会いしましょう。


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todome

過去のホームページ時代より寄稿させていただいておりましたが、とある作品を完結させぬままに十数年すっかり忘れ、この度親方の号令により、再び参加と相成りました、todomeと申します。 主に小話を寄稿させておりますが、マンガ、ゲームにつきましても、今後ご紹介させていただこうかと思っております。どうぞお付き合いください。

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