いにしえゲーム血風録 六回裏 「リッジレーサー(MT編)」

いにしえゲーム血風録
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 リッジレーサー以前、つまりラスタースクロールによる疑似3Dレースゲームは、もちろんどこのゲーセンにも設置されていました。キャロットには「ウィニングラン」、ハイテクセガには「ラッドモビール」、タイトーインには「チェイスH.Q」なんかが設置されていました。しかし中坊の私はどれ一つ腰を据えてプレイしていませんでした。

 というのは他ならぬ制限時間のせいなのです。「制限時間がある=急がなければならない=減速してはいけない」とどこをどう間違ったのか、中坊の私は見事に曲解してしまい、結果全く減速しない、つまりブレーキを踏まないプレイばかりしていました。

 本来はコースを覚え、したがって減速ポイントを覚え、結果確実なグリップ走行を厳守することが基本なのですが、何しろ上記のようなバカ中坊です。急カーブでは一切減速せず、コースアウトしてポールに激突、爆発ということになります。こんなプレイでは満足に完走することなど到底無理なのです。というか、レースゲームを理解していないとしか思えません。結局、自分の未熟さは棚に上げ、「むつかしい上にもたないゲームだ」と決めつけてしまい、レースゲームとは疎遠になってしまいました。

 

 こんな暴走中坊をリッジ好きにまで啓蒙したのは何だったのか?ここでまたまた登場の長兄であります。このゲーム大バカ三太郎は、よく私をゲーセンに連れて行ってくれました。ゲームが好きなのに家庭用ゲーム機を与えられない愚弟を哀れに思ったのか、いや、むしろ自分の腕を見せつけたかったのか、真偽の程は定かではありませんが、しかしそれまでアクションばかりだった私が新たなジャンルを開拓する陰には、常にこの男がいたことは否定出来ません。実際、ADVなら「MYST」、STGなら「R-TYPE」、そしてRCGなら今回のリッジレーサーをもって、私を啓蒙したと言えるのです(なお、現在はモンハン一辺倒で、ある意味落ち着いた)。

 

 さてリッジレーサーがリリースされた当時、私は長兄に教えられるまでその存在を全く知りませんでした。「え?アンタが通っていたキャロットってナムコ直営でしょう?知らないはずないでしょうに」と思われる方、なるほど、ごもっとも。しかし何度も申し上げますが、キャロット店長のラインナップ基準は意味不明です。ナムコ直営店のくせに、何故リッジレーサーを入荷しなかったのか、恐らく店長の深い思慮があったのでしょう。単純に筐体が高かったからかもしれませんが。

 ともあれ、私がキャロットでリッジレーサーを見るのはもっと後、「レイブレーサー」が発表された頃です。しかし仮に設置してあったとしても、大型筐体には興味がなかった私が気が付いたかどうかは甚だ疑問です。というのは、その頃、キャロットの近くに新たなゲーセンがオープンしました。どこの直営でもない、いわゆる「多国籍ゲーセン」です。私はそこにもよく通っていました(特にダライアス外伝をサルのようにプレイしていた)。

 そこにもリッジレーサーは設置されていたのですが、しかし私は全く気が付かなかったのです。それもリッジレーサーは大型筐体コーナーではなく、普通のビデオゲームコーナーのわりと中央に接されていたのにも関わらずです。つまり私はレースゲームというだけで全く興味を示さなかったわけで、今考えれば単なる「どあほう」なのですが、しかしゲームに関するジョブ熟練度(ジョブ名:新作さがし)が異常に高い長兄はリッジレーサーをしっかり見つけ、しっかりプレイしていたのでした。

 

 ある日、長兄が「面白いレースゲームがある」と言い出しました。さぁ、また始まりましたよ。しかしレースゲームと聞いても、私のテンションはもちろん上がりません。「レースゲーム=むつかしい」でしたから、今ひとつ良い顔をしなかったのでしょう、長兄は「とにかく本当にスゴイんだってば」と、私を連れて例の多国籍ゲーセンへと向かいました。

 大型筐体コーナーはセガの「バーチャレーシング」やナムコの「サイバースレッド」、それにガンシューが何台かと、あとはクレーンゲーム等のプライズ系が並んでいました。が、兄はそこを素通りして2階のビデオゲームコーナーへ。はて、2階にレースゲームなどあったかしらと首を傾げていると、しっかりあるんだからやっぱり「どあほう」ですね。

 

 デモ画面を見る間もなく、長兄が早速コインを投入。中級、MTでゲームを開始します。もちろん私には何が中級で、何がMTだか分かりません。しかしスターティンググリッドに切り替わった途端、私は息を飲みました。これまでのレースゲームは、所詮疑似3Dで、2D感、つまりドット絵感が拭い去れていませんでした。しかし今、目の前のレース空間は間違いなく3Dで、「ドット絵で表現された立体的に見える車」ではなく、ちゃんとした車でした。そしてレースが開始されると、私の驚きはさらに高まります。

 それまでのレースゲームは、自車の後ろにカメラがあり、コースの先っぽの映像を細くし、左右に曲げることでカーブを表現していました。しかしリッジレーサーは違いました。カメラは車内に設置された、いわゆる「ドライバーズビュー」で路面が間近に迫っています。またコースは完全に3Dで構築されているため、自車はコースに対して前方はもちろん、斜めにも後ろにも自由に向くことができ、これまで見たことのないアングルでコースを見ることが出来ました。

 この3D映像はレースのスピード感を強烈に感じさせました。特にカーブでは何故かGを感じてしまい、体が傾いてしまうくらいです。そして出口の見えない急カーブで、長兄はブレーキを踏んでから再加速、スキール音と共に車体が横滑りしました。何だ、今のは!?車体はコースに対して斜めの状態のままスライドし、直後、長兄はハンドルを逆に切って体勢を元に戻しました。

 その後、長兄のレースを見ていた私はバカのように口を開けっ放しでした。そしてタイムアップでゲームオーバーになると、長兄はリタイアのくせに、何故かドヤ顔を私に向けたのでした。しかし私はただただ頷くことしか出来ませんでした。

 

 さて、長兄から聞いた話をまとめると、リッジレーサーはポリゴンという技術を使ったレースゲームで、これまでの疑似3Dレースとは違い、理屈はよく分からんが、完全に3Dの空間でレースが、つまり実車さながらのレースが出来る、というのです。そして先程の横滑りは「ドリフト」と呼ばれる走法で、理屈はよく分からんが、速度を下げることなくコーナリングするテクニックだ、ということでした。

 早速私もプレイしてみます。が、なに1プレイ100円!?しかし当時の私は高校生になっていました。中学生の100円は25000円相当ですが、高校生の100円は3400円くらいなので、なんか平気です。なので、コインを投入し、初級を選びます。次の「AT」と「MT」がなんのこっちゃ分かりませんので長兄に聞くと、シフトチェンジのやり方だそうで、車は速度を出そうとするとギアを上げていかなければならないのだが、それを自動にするか手動にするか、ということでした。自分は初心者なのでもちろんAT。さぁ、スタートです。

 

 スターティンググリッドでカウントダウンが始まります。長兄が右下のメーター(後に「タコメータ」と知る)中程くらいまでアクセルをふかしていたので、それに倣います。3、2、1、スタート!フォーンと発進し、スピードがグングン上がります。そしてメインストレートに入ったところでBGMスタート。アップテンポのカッコいい曲です。うわぁ、シビレるゥ!

 トンネルに入るとエンジン音が籠って聞こえ、先を行く敵車を追いかけます。するとトンネル出口が急カーブになっています。ここでドリフトをすれば良いのか、と思いましたが、ドリフトのやり方を聞き忘れました。敢え無くこれまで同様に減速することなくコーナーの外側にぶつかります。

 ここで長兄からアドバイス。「ブレーキを踏んでからハンドルを切り、アクセルを踏むのだ」。もぅ、早く言ってよね!(お前が早く聞け)早速吊り橋を越え、峠の先の急カーブで実践。すると「キュゥーン」というスキール音と共に車が横滑り!しかし滑りすぎてコースに対して真横になってしまったので、慌ててハンドルを逆に切って立て直します。

 これでドリフトのやり方は分かりましたが、しかしコースを覚えていないので、どれが急カーブだか分かりません。なので、その後はカーブの度にドリフトをかます始末。しかも毎回滑りすぎてしまうので、逆にタイムロスになり、結局1周と半分ほどでタイムアップとなりました。

 筐体から降りると、再び長兄ドヤ顔で笑っています。私はただただ頷くしかありません。私はたった1回のプレイで、スッカリリッジレーサーが大好きになってしまいました。その後長兄は3回、私は2回ほどプレイして、帰途に就きました。そして家で長兄とコースの構成やドリフト時のステアリング、アウトインアウトなどのコーナリングの概念(というか基本)について話し合い、結論としては「これはスゴイゲームが出てきた(ボンクラな結論)」と頷きあったのでした。

 とはいえ、私はまた初級、長兄はまだ中級です。上級はどんなコースなのか?そしてT.Tってなんなのさ?きっと困難な道になるでしょう…。しかし我ら兄弟に不可能はない!我ら兄弟のリッジ攻略はまだ始まったばかり!

 

 

 ~ トドメ氏の次回作にご期待ください ~

 

 

 いや、まだ終わらねぇよ!?ということで、続きます。


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todome

過去のホームページ時代より寄稿させていただいておりましたが、とある作品を完結させぬままに十数年すっかり忘れ、この度親方の号令により、再び参加と相成りました、todomeと申します。 主に小話を寄稿させておりますが、マンガ、ゲームにつきましても、今後ご紹介させていただこうかと思っております。どうぞお付き合いください。

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