いにしえゲーム血風録 八回裏一死 「ハドソンキャラバンシューティング(スターソルジャー編)」

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 さてさてハイスコア大会である「キャラバン」で大成功を収めたハドソンは、キャラバンを販促戦略の主軸にしようと考えます。何しろ大会が盛り上がればソフトが売れますし、当時小学生のマスト雑誌「コロコロコミック」との連携によって知名度も抜群でしたから、これ以上ないほどの宣伝効果があったでしょう。

 しかし毎年毎年スターフォースという訳にはいきません。当然新しいゲームが必要になるわけです。そこでハドソンはスターフォースの続編を作ろうとするのですが、しかし元々はテーカン(後のテクモ、現コーエーテクモゲームス)のゲームですから、そうは問屋が卸しません。図らずもテクモも「スーパースターフォース」という続編(アドベンチャー色が強い)を作っていましたから、どう考えてもハドソンに分が悪い。そこで取りあえず制作していたスターフォースの続編を練り直し、敵のアルゴリズムや隠し要素をより複雑にしたオリジナル作品として完成させます。それが今回ご紹介する「スターソルジャー」であります。それではストーリーをご紹介しましょう。

 

「時空新世紀XXX年。地球は正体不明の存在からの攻撃を受けた。原因究明のために大艦隊が送り込まれたが、しかし戻ってきたのは調査報告を収めた小さなカプセルだけだった。分析の結果、敵の正体は人工頭脳を搭載した巨大浮遊大陸であることが判明。直ちに最新小型戦闘機「シーザー」が開発され、巨大浮遊大陸破壊のため飛び立ったのだったのだった。」

 

 …出ました、小学生のロマン「浮遊大陸」です!浮遊大陸と聞いては、我々小学生は黙って見過ごすわけにはいきません。早速シーザーに乗り込み、浮遊大陸をブッ壊しに行くことにしましょう。えぇ、そうしましょう!それではシステムをご紹介いたしましょう。

 

 ゲームは縦スクロールシューティング。十字キーで自機シーザーを8方向へ移動、ボタンでショットを撃つことができ、連打することで連射することが出来ます。敵は空中物、地上物(地上物は攻撃してこない)の2種類が存在しますが、特に区別なくショットで破壊することが出来ます。各ステージの最後に待ち受ける人工頭脳「スターブレイン」を破壊すればステージクリアとなります。全16面で、クリアすると難易度やグラフィックがどうかしている2周目に突入し、2周目16面をクリアすればオールクリアとなります。…つまりスターフォースを踏襲したシステムなのですが、パワーアップシステムが非常に凝っています。

 

 ステージ上に存在する「Pパネル」を撃つと「Sカプセル」が出現します。これを取得することで、最大3段階までパワーアップすることが出来ます。

・初期装備:前方に2連装のショットを撃つことが出来る。貧弱。

・第一段階:移動速度が速くなり、ボタンを押したままで連射が可能になる。しかし大した連射速度ではないので、全体としてスピードアップくらいのパワーアップでしかない。まだ貧弱。

・第二段階:前方に2連装、後方に1発のショットを撃てるようになる。不安は残る。

・第三段階:バリア(耐久力5)が装備され、前方と斜め4方向、計5方向へのショットが打てるようになるオレサイキョー。ただしバリアは敵弾には効果があるが、空中物に触れるとミスになってしまう。また敵弾を受けるとショットは第二段階のものへとパワーダウンし、再び5方向ショットにするためには、一旦バリアを外してから、再度Sカプセルを取らなければならない。

 *なお、バリアが付いた状態でSカプセルを取ると、画面中の敵を全滅させることが出来る。でも点数は入らないので、キャラバンでは邪魔なキャラ。

 

 …どうです!(ドヤ顔)スターフォースでは前方にしか撃てなかったショットが、今回はなんと5方向に撃つことが出来ます!この爽快感たるや涙で画面が見えません。あとキャラオーバー(画面上にキャラクターを出し過ぎてしまうこと)で画面がチラついて、やっぱりよく見えません。それはともかく、これだけだとやっぱり連射だらけのバリバリシューティングに見えてしまいますが、もちろん本作にも様々な隠し要素が存在しております。ここで一部ご紹介しましょう。

 

・ゼグ:浮遊大陸の特定ポイントを撃つと出現する「Z」と記された地上物。1ステージに5個だか6個だか7個だか隠されており、4発撃ちこむことで出現、さらに4発撃ちこむことで破壊出来ます。1ステージにつき、1つ破壊すると500点、2つで1000点、3つで4000点、4つ目10000点、5つ目40000点、6つ目からは80000点のボーナスを獲得出来る。キャラバンでは必須のボーナス。

・ラザロ:人面型敵戦艦。画面の四隅から4つのパーツとして出現し、まず右上と左上が画面上部中央で合体、同時に右下と左下が画面下部中央で合体する。その後これらが縦に合体して顔が完成、弾をまき散らす。1回目の合体後にショットを16発撃ち込むと80000点のボーナスを獲得できる。しかし慣れないと潰される。キャラバン必須のボーナス。

・デライラ:ステージ終盤に出現する目玉型地上物。2つセットで出現し、同時に破壊することが出来れば80000点ボーナスを獲得出来る。しかし結構距離が離れているので、事実上5方向ショットでないとボーナス獲得はむつかしい。もちろんキャラバン必須のボーナス。

・ミロン:ハドソンの傑作ACT「迷宮組曲」よりゲスト参加。浮遊大陸の特定ポイントにショットを16発撃ちこむと出現する。出現させるだけで40000点ボーナスが獲得出来る。しかしスコアの千の位が…、どうだったかの時でないと出現しない。

・まっとうクジラ:ハドソンのカオスACT「チャレンジャー」よりゲスト参加。浮遊大陸の特定ポイントにショットを16発叩き込むと出現する。出現させるだけで40000点ボーナス。しかしスコアのどっかの位がどうにかなった時しか出現しない。

 *他にも16面で出現する「野沢プログラマー」は破壊すると200万点ですが、ご存知のようにキャラバンは2分間トライアルと5分間トライアルしかないので、どう考えてもキャラバンでは拝むことは出来ず、したがって割愛。

 

 このように、ボーナスキャラクターだけでも相当の数があります。キャラバンに挑戦する者は、これらの出現位置や破壊方法、果ては現在のスコアにまで気を配らなければなりませんから、もうジェダイだかニュータイプでないと無理です。

 しかも本作には「トラップゾーン」というフィーチャーが存在します。これは浮遊大陸の特定の縁に近づくと、そのまま大陸の裏側に潜り込んでしまうという仕掛けです。この間、敵の攻撃は一切無効となりますが、自機も攻撃が出来ません。しかも浮遊大陸に隠れてしまいますから、自機がどこにいるのかも分かりません。ただバリアを装備していれば、そのエフェクトは大陸を透かして見えますから、自機の位置を把握することは出来ます。そして大陸の隙間に出ることが出来れば、再び表側に復帰することが出来るのです。

 このフィーチャー、つまり自機が無敵になる訳ですから、上手く使えば全面クリアも夢ではありません。しかしキャラバンの本懐はハイスコアです。大陸の裏側にいる間、自機は攻撃出来ませんから、当然ボーナスキャラクターを破壊することも出来ません。まさにトラップゾーン。プレイヤーはどこにトラップゾーンが設定されているかも覚えなければなりません。

 しかしトラップゾーンは悪いことばかりではありません。実は大陸の裏側にいる時、特定ポイントを通過することで表側に「P」が浮かび上がり、フルパワーになることが出来る「裏P」という隠しパワーアップがあるのです。復活が厳しい時、これを利用すれば、あるいは戦況を好転させることが出来るかもしれません。が、実際問題非常に分かりにくい所に設定されているので、真っ当に「Sカプセル」でパワーアップした方が堅実だったりします。

 

 さてこの他にも隠し要素は存在します。ハイスコアには関係しませんが、いわゆる「裏ワザ」として楽しいものばかりです。

 

・ワープ:あちこちで出現する地上物。スコアのなんだったかの位がどうにかなった時、特定ポイントにショットを5発撃ちこむと「W」パネルが出現する。これに重なると3面先のステージまでワープ出来る。クリア重視の方向け。

・1UP:どこだったかで出現する地上物。スコアのどれかの位とどこかの位を足していくつかになった時、特定ポイントにショットを5発撃ちこむと「1UP」パネルが出現する。これに重なると文字通り残機が1機増える。クリア重視の人向け。

・黄金の指:3面で出現する地上物。特定ポイントでⅡコントローラーのマイクで叫びながらショットを16発撃ち込むと出現。これを出現させるとあの高橋名人の代名詞「16連射」が装備され、ボタン押しっぱなしで猛烈な連射が可能になります。見てて愉快。

・レーザー:6面で出現する地上物。特定ポイントでセレクトボタンを押しながらショットを8発撃ちこむと出現。グラディウスみてぇなレーザーを撃つことが出来る。威力はショット16発分と強力な上、セレクトボタンで通常ショットと切り替え可能という、ある意味最終兵器。でも前方真っ直ぐにしか打てないので、使いこなすのはむつかしい。でも見てて痛快。

 

 このように、これでもかとばかりに隠れキャラが登場します。そういえばこの頃のFCは裏ワザが花盛りでしたから、非常に盛り上がっていたことを覚えています。でも出なくてねぇ、「黄金の指」。出現条件もワケ分かんねぇし。でも出来た時の爽快感は抜群でした。まぁ、ジョイカードがあれば別にいらないんですけどね。でも出すことに意義があるのです。

 

 さて本作の敵出現パターンはもちろんスターフォースを踏襲した「出現テーブル」方式で、背景とは無関係に、決められた順序で出現してきます。ですから早く敵編隊を倒せば、すぐに次の敵編隊が出てくる訳で、前回同様、ハイスコアには「早回し」が必須となりました。これを究極的に極めたプレイヤーは、普通なら1回しか出せないラザロを2回出すことに成功し、結果得点を80000点も上乗せすることに成功したそうです。もちろん、彼がグランドチャンピオンになったことは言うまでもありません。まぁ、ここまで出来る人は間違いなくファミコンロッキーですから、さもありなん、と言ったところでしょう。

 

 さて「ハイスコアなんて無理ですよ」という方でも、フツーのSTGとして楽しめるのがスターソルジャーの良い所です。それは何よりも「ボタン連打で敵をバリバリ破壊出来る分かりやすさ」で、当時STGと言えばアーケードでは「ダライアス」とか「ファンタジーゾーン」とか「沙羅曼蛇」とかのガッチガチでむつかしい内容のものばかりでしたから、分かりやすく敷居の低いスターソルジャーはSTG入門としては非常に優れていました。

 しかし全面クリアを見据えてプレイすると、敵のアルゴリズムや弾避けなど、きっちり対策を練らなければならないようになっていました。当たり前のことですが、STGの楽しさは「敵を倒し、弾を避ける」ことであって、ハイスコアはあくまでもプラスアルファの要素でしかないのです。その点でスターソルジャーは非常に完成度の高いSTGでした。

 また演出面でも優れており、最初は鉄骨剥き出しで無機質だった浮遊大陸が、面が進むにつれ地面が見え始め、終いには巨大な宇宙要塞へと変貌していきました。それはスターフォース同様、「あぁ、どんどん奥地へと踏み込んでいくわ」というドキドキ感を演出していました。そこへプレイヤーのテンションを急上昇させるハイテンションなBGMは非常にキャッチーで、現在でもFC名曲の一つとして数えられているくらいです。

 また4の倍数面のボス「ビッグスターブレイン」は画面の3分の2を占めるほどのバカデカイキャラで、フツーのボスであるスターブレインはコアに撃ちこむだけで良かったものが、ビッグスターブレインでは4門ある砲台を破壊してからでないとコアに撃ちこめないという念の入れよう。逃げ場も少なく、初心者最初の壁として立ちはだかり、それはある種カリスマでもありました。しかしながら初めて撃破した時の興奮は、誰もが忘れることの出来ない思い出となっているはずです。

 そして後半面、特に13面からの鬼攻撃です。「ここは地獄の一丁目」と言わんばかりに、それまではただ直進するだけだった敵弾が、何故か「誘導弾」へと変貌し、いつまでも自機を追尾するようになります。これはバリアを装備していなければ出現しませんが、しかしバリアがないと敵の通常弾の猛攻の前ではひとたまりもありません。しかしバリアを張れば誘導弾の嵐です。もう、どうしろっていうんでしょうか。結局誘導弾のさばき方を覚えるか、バリアなしのガチ避けに挑むかの二択となるのですが、いずれにしても、ここまで来られたプレイヤーへの挑戦であり、またここまで来られたプレイヤーへの賛辞でもあったように思えます。

 とはいえ、私自身にとっては賛辞でもなんでもなく、やっぱり地獄の一丁目であり、結局16面半ばで断念しました。当時でも全面クリア出来る人は稀だったように思えます。いわんや裏面である2周目はどうだったのか、それは今となっては知る由もありません。

 

 という訳で、素晴らしいアイデアをこれでもかと詰め込んだスターソルジャーは大ヒットし、もちろんキャラバンも大成功。それは伝説となりました。実際、当時FCで遊んだ人ならば「スターソルジャー」の名前を聞いただけで、もう一晩中でも語り明かすことが出来るでしょう。それほど当時のFCユーザーを虜にした、ハドソン屈指の傑作STGだったのです。現在はバーチャルコンソールでプレイ可能ですが、何しろ3DSですので、画面が小さくやりにくいかもしれませんので、こちらで伝説をご覧ください。

 

 さてある意味スターフォースをベースとして「やることはやり切った」ハドソンは、新たなSTGを模索します。そして完成したのが「ヘクター’87」なのですが、これまでとは毛色が少々違っていたのです。ということで、続きます。


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todome

過去のホームページ時代より寄稿させていただいておりましたが、とある作品を完結させぬままに十数年すっかり忘れ、この度親方の号令により、再び参加と相成りました、todomeと申します。 主に小話を寄稿させておりますが、マンガ、ゲームにつきましても、今後ご紹介させていただこうかと思っております。どうぞお付き合いください。

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