さてさて、以前ご紹介したみんな大好き道満先生の「メランコリア」の下巻が発売されました。やった!で、早速私の近所では最も信頼出来る書店(きのくにや)に走り、無事にめでたく入手しまして、そのまま一気に読み終わりました(ちなみに他の信頼出来ない書店には一週間経っても入荷しなかった)。
で、感想なんですが…、いやぁ、コイツぁとんでもない作品でした。これは道満先生の集大成とも言える作品でありまして、久しぶりにページを繰る手が止まりませんでしたねぇ。あと、なんでか胸がドキドキしました。恋?
いやはや、このような不世出の作品の完成に立ち会えた我が身の幸運を喜ばないわけにはいきません。うむ、これは祭りを催さねばなるまいて…。私が半ば使命、あるいは特命、それとも宿命を感じてしまったのも無理はないでしょう(誇大妄想)。
ということで、今回から三回に渡り、「春の道満大祭」と称しまして、鬼才道満晴明先生の近作を紹介し、ひいては「メランコリア」完結を寿ごうと画策したわけであります。…まぁ、メランコリアの構造が非常に複雑なので、感想を書くにも一から読み直さなければならなくなったからですけどね(凡人)。
で、道満大祭前夜祭といたしまして、今回は2017年発売の「オッドマン11」をご紹介しようと思います。え?2年前の作品じゃないかって?そりゃあなた、人生周回遅れの私ですよ?やっと去年の暮れに手に入れたんです。そもそも街の書店ではなかなか見つからなかったし。だからオレのせいじゃないし(外道)。
ともあれ、まずは「オッドマン11」のあらすじからご紹介いたしましょう。
オッドマン(odd man)とは常人とはかけ離れた能力、嗜好、性癖、外見を持つ者たちを指す。ごく普通の女子高生である逆叉セツは、オッドマンである伊丹(被虐のオッドマン)に恋をする。しかし伊丹の元カノ9人が全てオッドマンであったことを聞き、ドン引き気後れするセツであったが、元カノ全てと勝負し、これに勝てば晴れて伊丹と付き合うことが出来るとなんでか思い込み、ここに無謀とも言える「常人VSオッドマン」の無差別異種バトルの幕が切って落とされたのだった。
…ここまでお読みいただいて、「あぁ、学園バトルものだねぇ。」と思った紳士淑女の方、違います。 確かに物語はセツとオッドマンとの闘いを中心に進んでいきますが、物語のウェイトはむしろ、戦い終わった後のセツとオッドマンとのふれ合いに置かれています。
ちょっとネタバレになりますが、セツとオッドマンは闘った後、とても親密になるのです。セツとオッドマンは何気ない、それこそフツーでユカイでキャッキャウフフな学園生活を共に過ごすのです。河原で殴り合って「マブダーチ」っていうアレですね(ちょっとちがう)。
そのような日常的なやりとりを通して、常人からかけ離れた能力を持つ彼女たちの内面が、セツの目を通して描かれるのですが、このオッドマンたちの内面の描写が、道満先生らしく非常に繊細に描かれています。
一言で言えば超人であるオッドマン。しかしその内面はごく普通の人間であり、その姿は私たちが歩んできた思春期そのもの、つまりはどこにでもいる多感な少女であることが窺えます。
普通であれば同年代の友人に悩みを打ち明けたり、共に立ち向かったりすることになるでしょう。しかし彼女たちにはそれは適いません。何故なら、超常的な能力を持つオッドマンたちはその能力故に常人たちの間には馴染めず、また常人たちは遠巻きに彼女たちを見つめるばかりで、つまりは孤独なのです。
事実、作中オッドマンたちはオッドマン同士で集まり、日常を過ごしています。加えて彼女たちオッドマンの悩みとはオッドマンであるが故の悩みであり、やはり常人には理解出来ないものばかりなのです。
そうなるとセツとオッドマンが闘いを通じて親密になるのも頷けます。 セツはオッドマンたちの能力に驚きつつ、しかし他の常人と変わらぬ接し方をしますが、それはオッドマンたちにとって、セツは初めて正面から向かってきた「普通の人」であり、それは彼女たちが内心求めていた存在だからです。ですから、オッドマンたちはセツと接して初めて、本当の学園生活を謳歌することが出来るようになったと言えるかもしれません。
世の中には様々な特徴を持った人がいます。中には常人とは異なる傾向の人もいることでしょう。しかしそれは、実に当たり前のことなのですが、その人の本質ではないのです。その人の本質に触れるには、やはり当たり前なのですが、 その人と正面から付き合うしかないのです。ガッコーのドードクとやらが訳知り顔で説くこの真実を、この物語はガッコーのドードク以上の説得力で見事に語ってくれているのです。
さてこんな風に書きますと「説教くさい話なのかしら」と煙たがる方もおられるでしょうが、大丈夫、だって道満先生ですよ?相変わらずのギリギリアウトの爆笑ネタとやっぱり成人成分満載で、そのクセガッチリと心に残っちゃう快作であります。
しかしここで残念なお知らせがひとつ。こちらは「第一巻」でして、次巻は2022年発売予定だそうです。まぁ、一話が10ページ程度で、月刊誌掲載で、しかも不定期連載ときたもんだ。とはいえ、オリンピックの後!?待つよ!待ちますよ、私は!
てなわけで、試読はこちら…って、試読サイトを探したんですけどね、試読が登場人物紹介で終わるという有り得ないことになってますので、え~と、騙されたと思って買ってみて…ね☆(不気味)
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