いにしえゲーム回顧録 四回裏 「ピンボール(MULTI BALL編)」

ゲーム
スポンサーリンク

  …思わせぶりな前フリでしたが、とっとと種明かしをしますと、つまりゲームの流れとしてはこの女性型ロボットを人間の女性に変身させよう、という内容なのでした。いよいよ倒錯的、かつ中学生の妄想的になってきました。しかもプレイした私は中学生でしたから、「人間の女性になったらどうなるのだろう」と、余計にこの台にハマったことは言うまでもありません。

 

  さて、この台にもJACKPOTは存在して、8000000点ほど獲得できたと思います。しかしそれ以上に破天荒なボーナスを搭載していました。それがロボットを人間にすることに成功し、運が良ければ得られる「Billion Shot」で、その名の通り、成功すると1000000000点(10億点)獲得できます。これまでのチマチマした稼ぎは何だったのかと思わせる、いわば「最終問題は100ポイント!」的な暴れっぷりです。先にここで詳しい手順を紹介してしましょう。

 

1.左ランプレーンを2回通過し、女性ロボの口にボールを入れ、ロボットの会話機能を起動させる

2.再度左ランプレーンを2回通過し、女性ロボの右目にボールを入れロックし、ロボットの視覚機能の一部を起動させる

3.新たなボールを打ちだし、再度左ランプレーンを通過し、女性ロボの左目にボールを入れロックし、ロボットの視覚機能を完全に起動させる

4.ロックした2個のボールを操作し、2個とも左ランプレーンを通過させ、ロボットに人格を与え、人間にする

5.更に左ランプレーンにボールを2個通過させることで、盤面中央のルーレットが回転。表面上1/6の確率で「Billion Shot」の権利を得る事が出来る。12秒以内に中央のランプレーンを通過させると1000000000点獲得。

 

  …非常に複雑です。特に途中のボールが2個になるところは「MULTI BALL」と呼ばれ、ピンボールにおける一般的な役です。この状態にするためには「ロック」という役を起動させる必要があり、そのためにもいろいろややこしい手順があります。そしてロックが起動し、指定された穴にボールを放り込むと、そこにボールが固定され、ロック完了。残りボールを減らすことなく、新たなボールが出現してゲームは続行され、今度は「MULTI BALL」を起動させる、というのが大まかな流れとなります。さて、めでたく「MULTI BALL」になると、それまでロックされていたボールが一斉解放となり、盤面上には複数のボールが入り乱れます。この間にボールを落とすことなく既定の行動をすれば高得点が得られる仕組みです。と、口で言うのは簡単ですが、2個のボールを(台によっては「MULTI BALL」が10個とかいうのもあった)同時に操作するのは非常にむつかしく、また時としてボール同士がぶつかって予想外の方向へスッ飛んで行くため、アナログ特有の不確実性を存分に味わうことがまた、ピンボールの醍醐味でした。

 

(この後は「10億点獲得方法」と照らし合わせながら、おろおろと狼狽する中坊の私の姿をお楽しみください)

 

  …さて、ステップ1の「会話機能」を起動させ、突然「I can speak」と喋られ(しかもその後「ハハハハハハ!」とけたたましく笑われる)、大層ビビった私ですが、ロボット頭部が回転し(場面転換を表す)、今度は目の部分に穴が開いているのを見るや、すぐに私は次に何をすれば良いのか理解し、次々とランプレーンへボールを送り込み、2個のボールをロックに成功。首尾良く視覚機能を起動させることが出来ました(ステップ2、3をクリア)。すると「…I see you」と突然喋られ(その後やっぱり「ハハハハハハハハ!」とけたたましく笑われる)、ビクッとしたところへロックされたボールが解放され、盤面上に戻ってきます。MULTI BALLのスタートです。

  しかしこの台が私にとっての初めてのピンボールだったのですから、MULTI BALLももちろん初めてで、2個のボールが同時に盤面上を踊る光景は、大層私を混乱させました。「一体どっちのボールを見ていればいいんだ?(正解:両方)」などと考えているうちに、1個のボールをロスト、視覚機能は再び遮断されました。MULTI BALLにするために、再びボールをロックさせなければなりません。しかし立て続けに成功できるわけもなく、そのままゲームオーバーとなりました。

  私は初めてのMULTI BALLの混乱ぶりに大変興奮しましたが、しかし終わってから冷静に考えると、ボールが2個になった状態から、次に何をすれば良いのか分かりませんでした。しかし何回かMULTI BALLを経験するうちに慣れてきて、2個のボールを操りながら盤面上を観察しました。しかし特に目立った変化はなく、ここはまた同じように左ランプレーンを狙うのだろう、と見当を付けました。そして1個が首尾よく左ランプレーンを通過、ロボットの頭部でロックされます。ということはもう一つ放り込めば良い、と理解しましたが、残りの1つは受け損ない、ロストしてしまいました。とにかく次のステップが分かったので、その後は如何にMULTI BALLを持続させ、ランプレーンに放り込むかが課題となりました。

 

  その後何度となくトライしましたが、MULTI BALLは思いのほかむつかしく、なかなかボールを2個ともロボットの頭部へ送り込むことが出来ません。視覚機能起動、遮断、起動、遮断を繰り返し、偶然にも2個のボールをランプレーンに放り込むことに成功しました。「What’s happening!?」という絶叫ナレーションと共に、目の前のセグメント表示部に心電図が現れます。フラットラインだった心電図は、やがて脈打つ信号に変わりました!「Hi there!」の挨拶と共に、ロボット頭部が再び回転、人間の女性の絵が現れました(ステップ4クリア)。

  やった!ついに人間にすることが出来た!でもアメコミ調だからそれほどの喜びはない!そんな私の喜びど失望がないまぜとなった感情をよそに、彼女は美しいソプラノで歌を歌います。あまりに凄味のあるソプラノなので、レンタルビデオ店内に響き渡ります。何事かとこちらを見るお客さん。いえいえ、何でもないですよ。

  冷静を装う私でしたが、すぐに2個のボールが盤面上に戻ってきたので焦りました。そう、人間になったことでいくらかのボーナスは入りましたが、JACKPOTに比べてあまりにも低いのです。ここは更に何かをすれば良いのでしょうが、それが分かりません。取りあえずフリッパー上にボールを固定し、しばし盤面を見渡しますが、もはや左ランプレーンに再びボールを放り込むことしか考えられません。何度か失敗の後、ようやく2個のボールを左ランプレーンに放り込むと、盤面中央、ロボットのお腹の部分のルーレットが回転します。そして停止したのが12時の位置。「Billion Shot」とあり、正面のセグメントではカウントダウンが始まっています。何?何をすればいいの?良く分からないまま必死にボールを打ち返しながら、盤面を観察します。すると中央ランプレーン付近がピカピカ光っています。あそこか?あそこにボールを通せばいいのか?

  私は必死に中央ランプレーンを狙いますが、焦ってうまくいきません。その間にも、カウントダウンは進んでいきます。それでも運よく、1つのボールが中央ランプレーンを駆け上がりました!すると正面のセグメントが点滅し、何かが大音量で流れました。そして次の瞬間現れたトータルスコアは10億点を突破していたのでした(ステップ5クリア)。

 

  こうして晴れて私は「Billion Club」という10億点突破者専用ランキングに名を連ねる事が出来ました。とはいえ、10億点を獲得できたのはそれ一回きりで、それ以降は平凡なスコアでした。それでも何度もそのピンボール台で遊び、女性型ロボットを人間の女性にする怪しさを、「I can speak」を聴くために楽しんでいました。

  …それから一年後、私は近所の商店街にナムコ直営のゲーセンがある事を知りました。さっそく向かってみると、入り口すぐの大型筐体コーナーに3台のピンボールマシンが並んでいました。それが傑作ピンボール台「Earthshaker」との出会いなのですが、それはまた別の機会に。

 

  それでは五回表でお会いしましょう。


読んで頂いてありがとうございます!

↓↓このブログ独自の「いいね!」を導入しました。少しでもこの記事が気に入って頂けたら押して頂けるとうれしいです。各著者が無駄に喜びます(・∀・)イイ!! よろしくお願いしますm(__)m
The following two tabs change content below.

todome

過去のホームページ時代より寄稿させていただいておりましたが、とある作品を完結させぬままに十数年すっかり忘れ、この度親方の号令により、再び参加と相成りました、todomeと申します。 主に小話を寄稿させておりますが、マンガ、ゲームにつきましても、今後ご紹介させていただこうかと思っております。どうぞお付き合いください。

コメント

  1. galthie より:
    中学時代にピンボールにはまってたんですなぁ。 私はビデオゲーム一辺倒だったので、新鮮な感じです。 さらなる筺体の存在、意外に奥深い世界があったんですね。 大学時代に聞くことのなかったエピソードで、todome氏にもこんな思い出があったのかと読んでみました。
    • todome より:
      一台でこのボリュームですからね。もう一台紹介しようと思いましたが、長くなるので止めました。 しかし「ロボットを人間にする」というコンセプトは良かったので、人間の時の絵がどうにかならんかったかと、でも現在の萌え系だとそれも微妙だなと、未だに色々思っています。
タイトルとURLをコピーしました