四半世紀ほど昔、大阪で「国際花と緑の博覧会」という万博が開催されました。様々なパビリオンが立ち並ぶ中、ナムコはある体験型アトラクションを発表しました。それは当時の最先端技術であったポリゴン3DCGによるガンシューティングゲームでした。当時のゲーマー達はもちろん、それほどゲームをしない方々もこのアトラクションには度肝を抜かれたらしく、連日長蛇の列の大盛況だったようです。それが「ギャラクシアン3」でした。一応ゲーム雑誌(ゲーメストとか)で情報を得ていた私ですが、詳細は知らず、「なんか大騒ぎになっているらしい」という認識しかありませんでした。
さて、やや時が下り、関東の大学に通っていた愚兄がお盆のため帰省してきました。そして開口一番、「ギャラクシアン3はスゴイぞ」と一席ぶち始めたのです。曰く、ポリゴンCGで描かれた宇宙空間で襲いかかるエイリアンを撃ち落とすガンシューとのこと。それだけなら大して珍しくもありません。しかしそのゲームが尋常ではなかったのは、28人同時プレイ可能な上、スクリーンがプレイヤーを囲むように360°に設置されており、しかもゲーム展開によってプレイヤーの座るシートが油圧稼働で激しく上下するというものだったのです。
360°スクリーンの大迫力、音響の素晴らしさ、油圧稼働シートの気持ち悪さ(酔ったらしい)、そして何よりも手に汗握るゲーム展開に相当感動し、興奮したというのです。しかしギャラクシアン3は大阪の万博で稼働していたはずで、万博はとっくに終わっています。どこで遊んだのかと聞くと、ナムコが二子玉川に作ったテーマパーク「ワンダーエッグ」だと言いました。どうやら万博閉幕後、移設したようです。そこへ愚兄は食費を削り、旅費を捻出し、有り金が尽きるまで遊び倒してきたというではありませんか。同じナムコ直営とはいえ、こちらは商店街の小さなゲーセンが全ての中坊ですから、これは遊べる機会はないな、と諦めたのでした。
しかしその翌年、ギャラクシアン3の6人プレイバージョンが発表されました。それが今回紹介する「ギャラクシアン3 シアター6」なのです。それではストーリーを紹介しましょう。
「人類が外宇宙へと足を踏み出し、そこで最初に出会った敵、それが機械生命体『UIMS』だった。調査の結果、彼らは惑星破壊兵器『キャノンシード』を建設し、その照準は地球に向けられていることが分かった。連邦宇宙軍UGSFはこれを破壊すべく、重戦闘機ドラグーンを発進させたのだったのだった。」
と、シューティングゲームとしては王道のストーリーです。プレイヤーはドラグーンのガンナーとなって、惑星破壊兵器キャノンシードを破壊しなければなりません。失敗は是即ち地球滅亡となりますので、気を引き締めて挑まなければなりません。
それでは今回の作戦の詳細をご説明しましょう。まずUGSFの先方部隊が陽動を仕掛け、UIMSが油断したところで敵惑星軌道上の敵戦艦を破壊し、そのまま敵惑星ドグマスへ突入し、そのままキャノンシードの内部へ侵入し、これを破壊する、というものです。作戦というかドラグーンの性能に完全に頼り切った、強行突破以外の何物でもない内容ですが、ドラグーンの性能はスゴイしUGSFは無敵だしカッコイイので、大丈夫なのです。
さて今回はゲーセンの6人用ということで、さすがに360°スクリーンではありませんし、油圧機構によるシートの上下はもちろんありません。それでも畳八畳分はある巨大スクリーンが前方に据え付けられ、さながらホームシアターのような豪華さです。そしてガンシューとは言ってもこちらは重戦闘機の砲手なわけですから、エモノはチンケなピストルではありません。両手持ちのサーチライトのようなバカでかいレーザーキャノン砲です。プレイヤーは両手のハンドルを握り、観光地の望遠鏡よろしく振り回して狙いを定め、ハンドルに設えてあるトリガーでレーザーを発射、敵を倒していくことになります。
ここで注意して欲しいのは、プレイヤーは「ガンナー」であってパイロットではないということです。つまりドラグーンの操縦はどこかにいるパイロットが行っているので、ガンナーであるプレイヤーはドラグーンの航路を指定することは出来ません。ですからプレイヤーはドラグーンの航路上に次々と現れる敵を撃ち落とす事しか出来ず、したがって敵の攻撃を避けることは出来ず、攻撃される前に撃ち落とすしかありません。また進行方向に障害物があった場合、これを破壊しないとドラグーンは激突します。ですからプレイヤーはドラグーンの進行の妨げになるような存在は全て破壊しなければなりません。
被弾、または激突するとドラグーンのシールド(ゲーム開始時は100%)が減り、0%になると撃墜され、ゲームオーバーになります。またキャノンシード内に侵入すると、エネルギー充填が始まってしまいます。ですからキャノンシードの発射を止めることが出来なかった場合も、地球が破壊されてしまうので、やはりゲームオーバーになります。一応スコアの概念もありますが、地球の平和を守るという大義の前では些末なことなので、割愛。
さて私がシアター6に初めて触れたのはいつものナムコ直営ゲーセン、ではなく、郊外のショッピングセンターに併設された広いアミューズメントスペースでした。何しろスクリーンが畳八畳はありますからね、いつものナムコゲーセンはそんなデカい物を置くスペースなんてなかったんです。その上価格が1200万円ですから、商店街の小さなゲーセンには到底ムリだったのです。
その郊外のアミューズメントスペースに設置されたという情報を得た私は、友人3人と遠征に向かいました。中坊は金なんてありませんから、バスではなく自転車、しかも二ケツです。途中のイトーヨーカドーでアイスを買い、栄養補給をしながらようやく辿りついたのは、出発から1時間後のことでした。店内は大型筐体や複数人数用のメダルゲーム、それに何故か巨大なメリーゴーラウンドやボーリングレーンもあり、およそゲーセンという感じはせず、むしろファミリー向けのような感じがしました。しかし客層は明らかに自分達と同じゲーセン小僧ばかりです。このことに少々安心した我々は、一段と目を引くシアター6へと向かいました。
大きさは広さ十二畳はあろうかという巨大なもので、左右に入口があります。中を覗き込むと巨大スクリーンの前に銃座が6つ設えてあります。スクリーン上には美しいグラフィック(と言っても単色のポリゴンでしたが)のデモ画面が流れています。BGMも大音量で響き渡り、否が応でも気分が盛り上がります。早速プレイしてみようとコインスロットを覗き込んでみますと、我々は目を疑いました。
「1PLAY 500円」
えー!?(画太郎風)一回500円もするの!?それまで1プレイ50円に慣れ切っていた我々には相当な衝撃です。それに中坊の500円は大人の150000円に相当しますから、まさに身を切る思いをしなければなりません。友人の中には腰が引けてしまう者もいましたが、1時間掛けてここまで来て、ただデモを眺めて帰ることほどバカバカしいこともありません。全員覚悟を決め、500円玉を投入したのでした。
さてここで現在の私がゲームの内容に少し踏み込んでみましょう。先述のようにプレイヤーが出来ることは敵や障害物を破壊することだけで、敵弾を避けることは出来ません。一応、一部の敵弾は破壊可能ですが、基本的には「殺られる前に殺れ」を地で行くことになります。しかしUIMSの数は圧倒的に多く、出現する全ての敵を撃ち落とすことは事実上不可能です。しかし実際のところ、敵の放つ攻撃でダメージを被るものは限られているのです。例えば敵が5体、横一列に出現し、それらが一斉に攻撃してきた場合、実際にダメージとなるのは中央3体の攻撃だけで、両端の攻撃は画面外に逸れるのです。ですからこのゲームを攻略する上で必要なのは「どの敵の攻撃がダメージとなるのか」を知っておくことなのです。同様の事が障害物にも当てはまり、放置すると激突してしまう障害物だけを破壊すれば良いことになるのです。
しかし中坊の私がそんなこと分かるはずもありません。闇雲に出現する敵を攻撃し、肝心な「Hitする敵」を打ちもらし、シールドはガリガリ減っていきます。またガントリガーを連射した経験もなく、当然連射装置も付いていませんから火力が圧倒的に不足し、徐々に敵に押され、惑星ドグマスに到着直後に我々のドラグーンは撃墜されました。
そして流れるバットエンディング。キャノンシードエネルギー充填完了!発射!極太ビームは一直線に地球に向かい、ボガーン!
「諸君の健闘むなしく、地球は宇宙のチリとなってしまった…。」
と、ご丁寧に作戦失敗のナレーション。我ら総ガッカリ。500円という料金もハードルとなり、再チャレンジとはなりませんでした。確かにスゴい迫力でしたが、高い難易度も相まって、むしろ我々には500円という高い値段の印象だけが残ってしまったのでした。
結局、その後このメンバーでシアター6をプレイすることはありませんでした。が、私は愚兄と何度かプレイする機会に恵まれ(つまり兄貴のオゴリで)、また愚兄が敵攻撃パターンを熟知していたこともあり、見事キャノンシードを破壊することに成功しました(80%は兄貴の手柄)。グッドエンディングを眺めながら私が思ったことは「この作戦はなんて穴だらけだったんだ」ということでした。しかしそれはもちろんゲーム上の演出であり、ヤバい作戦だったからこそゲーム内容に入り込むことが出来たことは言うまでもありません。そして膨大な量の敵に打ち勝ったという体験は、私にシアター6を忘れられないものにしたのでした。
その後シアター6は新作「アタック・オブ・ザ・ゾルギア」という新シナリオ(巨大宇宙生物が植民惑星にやってくる『ゴジラ』的内容)に入れ替わり、しかしやがてシアター6筐体は姿を消しました。やはりプレイ料金が高かったんじゃねぇかな、と思いますし、いくらなんでもデカすぎたんじゃねぇかな、とも思います。しかし後年、このシステムは1人用ゲーム「スターブレード」としてフツーの大型筐体として生まれ変わり、好評を博しました。
さてシアター6は無くなってしまいましたが(現在は有志の方が保存しているという話もあります)、しかし「キャノンシード編」は新作「ザ・ライジング・オブ・ガーブ編」を収録して、PSに移植されています。是非プレイしてどんな風に「この作戦はなんて穴だらけだった」のかを確かめていただけたら、と思います。
それでは十三回表でお会いしましょう。
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