いにしえゲーム血風録 二回裏 「バベルの塔(L字ブロック)編)」

いにしえゲーム血風録
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 時は世紀末。私は東京へ移り住み、ボンクラ大学生として日々過ごしていました。と言っても、やっていることは地元と同じ、ゲーセン通いの毎日でした。しかしこの時代にはプレイヤー同士を結びつける「ゲーセンノート」の文化はすっかり廃れ、その上格ゲーブームだったために、同好の士に巡り合うことが出来ず、一人ジョイスティックを握っていました。

 傍から見なくとも実に寂しいゲーム環境でしたし、自分好みのゲームもありません。やがて私の興味はメダルゲームへと移り、しかし単調なゲーム性で、メダルの増減に一喜一憂する流れにも嫌気がさしてきました。そこで私は思い付きました。

 「そうだ、昔のゲームをやろう」

 実は私の実家ではゲームはご法度でした。お決まりの「目が悪くなる」とか「勉強しなくなる」という理由で、買い与えられることはもちろん、自分の小遣いで購入することも憚られました。ですから私の年代が既に遊んでいるはずのゲームを、私は何一つ遊んだことがなかったのです。そして家を出た今、もはや私を縛るものは何もありません。早速私は大学の友人からファミコンと大量のソフトを借りたのでした。

 しかしゲームを禁止されたおかげで、私は余計にゲームを渇望し、結果ゲーセン通いや大学生にもなってファミコンに没頭することになったのですから、実に皮肉なものです。というか、世の親御さん方、子供が「やりたい」と望んだものを取り上げても何にもなりませんよ?むしろ子供はさらに興味を深くすることになり、通常よりも重症化すると考えた方が良いですよ、私みたいに。

 

 さて友人の貸してくれたソフトは、王道から聞いたこともねぇようなソフトまで、多岐に渡っていました。「スーパーマリオ3」、「ドラゴンクエストⅢ」、「グーニーズ」、「忍者ハットリくん」、「アタックアニマル学園」などなど、間違いなく当時の小学生が狂喜したゲームばかりです。私はそれらを狂喜してプレイし、「なるほど、確かに面白い」とか「これは小学生には無理じゃね?」とか思い、そう、つまり私は遅れてきた小学生時代を味わっていたのでした。

 しかも中には説明書が付いていないソフトもあったため、操作方法を模索しながら遊ぶという、まるで「ジャパンノゲーム、テニイレタケド、アソビカタ、ヨクワカラナイネ」という外国人の気持ちでした。特にRPGは地獄で、当時はゲーム中に魔法やアイテムの効果を説明してくれる親切機能はなかったので、私はいちいち使って「これは炎の魔法か」とか「これは麻痺回復か」と、ノートに自作の取説を作って遊んだものでした。中には効果が一切分からないままの魔法もあったりしたものです。

 …え?インターネットで調べればいい?実は大学生当時、私はパソコンを持っていませんでした。いや、あるにはあったんですが、ネットに繋げられるような代物ではなく(実際、ワープロ専用機だった)、それでなくても回線がありません。一応大学にはPCルームはありましたが、まだネットの黎明期だったため、現在のような詳しい攻略情報が記載されたサイトも存在しなかったのです。ですから、攻略本を探すか、砂を噛む気持ちで自力で攻略するしかなかったのでした。

 そういう訳で、ある意味リアルに冒険を楽しんでいた私でしたが、その中の一つが「バベルの塔」だったのであります。

 

 さて、このバベルの塔にも説明書がありませんでした。カセットの裏を見ると、

 「バベルの塔の内部は不思議な空間。」

「石を並べかえて出口に至る通路を作ってください」

 …とあります。どうやらアクションゲームのようです。取りあえずカセットを入れて電源を入れると、デカデカと「BABEL」というロゴが出てきました。スタートボタンを押すと、「フロアを選べ」と言ってきましたので、最初だから1を選択し、スタート。するとピンクの人が左手の建物へ走っていきます。そして画面が切り替わり、格子の入った青い背景に、床とL字ブロックが2つ、ツタと黒い穴が表示されました。

 

注:以下の記述は二回表に添付した「プレイ動画」を見ながら読んでいただけると分かりやすいです。逆に言うと、このまま読み進められても、非常に分かりにくいこと請け合いです。悪いことは言いませんから、是非プレイ動画をご覧ください。

 

 …あの黒い穴が出口で、石っていうのはこのL字のことか。ツタは多分登り降り出来るんだろうな。とにかくピンクの人を動かしてみます。左右にチョコチョコ走り回ります。しかしすぐ左手のL字の背にぶつかり、それ以上進むことが出来ません。Aボタンを押すと、L字をひょいと持ち上げました。なるほど、これで持ち運べるのか。と、もう一度Aボタンを押すと、今度はL字を降ろしました。ふむふむと、L字を2つ、後ろにどけて、そのまま左に進みます。すると床が一段低くなっていて、ピンクの人はそこに飛び降りました。先に進むと、今度は床が一段高くなっていますが、いくら進んでも登ってくれません。

 …嫌な予感と共に、今度はBボタンを押します。…何も起きません。試しに十字キーの上を押します。…何も起きません。これ、ジャンプとか出来ないんだね!?ということは、これはガチのパズルゲームか!と、ようやくゲームのジャンルを理解した私です。そして今現在、床の窪地に閉じ込められた自分は「詰んだ」ことに気が付きました。

 

 …わぁ、1面で詰んだ。こんなの初めてだ。あれこれボタンを押すと、セレクトボタンでピンクの人が崩れ落ちました。どうやらこれがギブアップのようです。気を取り直してリトライ。今度は窪地にL字を1つ投げ込みます。するとL字の腹の部分を、丁度階段のように降りていくではありませんか。なるほど、このL字は階段になるのか。ということは、この先の一段高いところの足元に置けば登れるはずだ。

 早速降りるのに使ったL字を持って高台の足元に置くと、果たして階段となり、窪地から脱出することが出来ました!よし、このままツタを登って出口へ、と思いましたが、ツタはピンクの人よりも1キャラ分高いところにあります。…届かん。ということは、ここにもL字を置けば良いのか。と、気が付きましたが、L字ブロックは窪地の中に置きっぱなしです。これを持って来ようとしても、今度は窪地から出ることが出来ません。すると…、スタート地点付近にどけたままになっているL字に目が行きました。コレか。

 

 早速戻ります。L字を降りて窪地を歩き…、あ、ここにもL字で階段を作らんといかん。そこで降りてきたばかりのL字を持ってきて階段にし、駆け上がってようやく置きっぱなしのL字を持ち上げます。そしてまた窪地に戻り、L字で階段を作ろうとしますが、降ろしてみるとL字は背を向けていて、階段のように登れません。

 …向きが重要なのか!?なんと面倒くさい。しかしこれ、どうやって向きを変えれば良いのだ。向こう側から持ち上げれば正しい向きになるのだけれど、乗り越えられないし…。どうしたら良いか分からず、ウロウロしていますと、L字の腹の段が丁度半キャラ分あることに気が付きました。

 そうか、半キャラ分なら登れるのか。ということは…。私はもう一度L字を持ち上げ、さっき降りてきたL字の1段目に立ち、降り口に向かって持ってきたL字を降ろしました。するとL字が同じ向きで並んでいることになります。そしてピンクの人はL字の1段目に立っているので、降ろしたL字の背は半キャラ分の高さしかありません。こうしてL字の背を乗り越えることが出来ました。そして反対側から持ち上げ、今度は上手く階段になり、入り口近くのL字を持ってきてツタの下に置きました。今度はツタに届きます!ピンクの人はスルスルと登り、出口に到達しました。クリアです!

 

 …1面なのに、スゲェ疲れた。でも面白いぞ、コレ!私はすぐに2面に取り掛かり、しかし2面の構造を見た時、私は目を疑いました。なんとL字ブロックが階段状に連結され、浮いていました。浮いてるよ!?どういうこと?試しに乗ってみますが、全く大丈夫です。どうやらL字ブロックは階段状に積めば、下にブロックがなくても浮くようです。なるほど不思議な空間だ。

 妙に納得した私はそのまま道なりに進み、出口付近まで来ました。L字ブロックが階段状に積み上げられ、浮いています。が、その下に出口があるので、L字をどかさないと下に降りられません。ここで素朴な疑問が浮かびました。この階段を形成している状態で、途中のL字ブロックを抜いたらどうなるのだろう。早速やってみると、抜き出したブロックより上の部分は、しばらくブルブル震えた後、落下しました。そうか、繋がって初めて浮いているのね。

 ともあれ無事出口に到達した私は、「ブロックを持つとPOWERが減り、0で持とうとすると潰されてミスになる」「出口が閉じている場合は水晶玉を取る」「階段を形成している途中のブロックを抜き出しても、元に戻せば大丈夫」「ブロックを持ったまま飛び降りると潰される」などの基本ルールを覚えていきました。ただアイテムは「白い壺」がPOWERを回復してくれることと、宝石が無敵になることがわかりましたが、王冠と魔法のランプは謎のままでした(流れ星に至っては出現条件すら不明)。敵が出て来ることがありましたが、タイミングを見計らってL字ブロックで潰せることも、またすぐに復活することも分かりました。

 

 そしていくつかのフロアを相当苦労してクリアし、8面に辿り着きました。何だか雰囲気が違います。BGMもミステリアスなものに変わりました。真っ黒な背景に槍と盾を持った人物の壁画が描かれています。出口はすぐ目の前に見えています。しかしこのフロアには何か意味がありそうです。

 …これがバベルの塔最大の謎「壁画の間」なのでした。

 

 いかん、また長くなってしまった。続きます。


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todome

過去のホームページ時代より寄稿させていただいておりましたが、とある作品を完結させぬままに十数年すっかり忘れ、この度親方の号令により、再び参加と相成りました、todomeと申します。 主に小話を寄稿させておりますが、マンガ、ゲームにつきましても、今後ご紹介させていただこうかと思っております。どうぞお付き合いください。

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