今回紹介するはゲーム界の暴走機関車セガより、まさに暴走ゲームの「クレイジータクシー」であります。
セガと言えば「大型筐体」でありまして、例えば「アフターバーナー」や「アウトラン」など、ゲーセン床面積を多く占拠した猛者であります。かと思えば「ファンタジーゾーン」や「ゲイングランド」などの名作ゲームを発表し、テーブル筐体でも覇権を握りました。やがて「バーチャファイター」や「電脳戦記バーチャロン」などでコアなゲーマーを世に生み出した、実に罪作りなメーカーと言えましょう。それでいながら「ずんずん教の野望」とか「ダイナマイト刑事」などの愛すべきバカゲーを出すところなど、いかにも老舗の余裕を感じさせる大人の風格もあったりします。
さてクレイジータクシーはそんなセガのエッセンスを凝縮、いや蒸留、あにはからんや精錬したかのようなゲームでありまして、つまり大型筐体の派手さと、テーブル筐体の深いゲーム性と、ずんずん教的バカさ加減を持ち合わせた、いわばセガのお家芸最終兵器ともいえる作品なのです。それではストーリーをご紹介しましょう。
「とある街に4人のイカレたタクシー屋がいました。彼らのモットーは『素早く客を目的地に届けること』で、そのためには交通ルールも歩行者も、果ては道路をも無視して走ることも厭いません。客もスリルに満ちた運転に大熱狂。チップも弾んでくれるので、ますますエスカレート。今日もスキール音と怒号が飛び交う中、『クレイジータクシー』は走ります。」
と、まぁ、あってないようなストーリーですね。さてお気付きのようにこれはレースゲームなのですが、普通とは勝手が違います。ストーリーにもあるように、目的は「客を素早く目的地へ届けること」、そして「多くの金を稼ぐこと」なのです。ともあれ、システムをご紹介しましょう。
ゲームはタクシーを後ろから見たビハインドビューで、ポリゴンによってオープンワールドの如く街が作り上げられています。プレイヤーは街中にいる客を乗せ、指定の目的地まで送り届けることになります。操作系はハンドル、アクセル、ブレーキ、ギア(前進「D」・後退「R」)があり、これらを組み合わせることで、様々なクレイジーな技を繰り出すことが出来ます(後述)。
さてこのゲームには残り時間が設けられおり、これがゼロになるともちろんゲームオーバー。客を乗せた時に残り時間が加算され(目的地までの距離に応じて加算されるので、遠ければ遠いほど多く加算される)、目的地に無事送り届ければボーナスとしてさらに残り時間が加算されます。しかしあまりに遅いと客が怒って飛び降りてしまい、一切加算されません。しかし突拍子もなく早く送り届けることが出来れば、通常よりも多く残り時間を加算させることが出来ます。
またこのゲームには「売り上げ」の概念があり、客を目的地に送り届けることで加算されます(つまり運賃)。しかし目的地までの道中で、常軌を逸した行動をキメれば客が喜んでチップをくれます。そしてクレイジーな運転を続ければ続けるほど客はハイになって、チップをザクザク弾んでくれるのです。
このように街中をウロウロしながら、客を拾い、出来るだけクレイジーな運転を楽しませ、素早く目的地まで送り届ける、という行動を、残り時間がなくなるまでひたすら繰り返し、最終的にハンパない売り上げを得ることが目的なのです。
それではプレイヤーがキメられるクレイジーな技の数々をご紹介しましょう。それぞれの技はコマンド入力によって発動させることが出来ます。
・クレイジーダッシュ:急加速する。(ギアD→アクセル)
・クレイジーバックダッシュ:後方へ急加速する。(ギアR→アクセル)
・クレイジードリフト:派手にドリフト出来る。(ギアR→ギアD→ハンドルを切る)
・クレイジーバックドリフト:後方へ派手にドリフトする。(ギアD→ギアR→ハンドルを切る)
これらの技をキメると客は大喜びでチップをくれますし、何より素早い挙動が可能になりますので、高売り上げを得るためには必須となります。是非駆使してみてください。
さて、ここからが重要なのですが、このゲームは交通法規を守る必要はありません。反対車線を走ろうが、歩道を走ろうが、丘を加速してジャンプしようが、海の中を走ろうが、自由です。対向車にぶつかっても平気ですし(スピードは落ちる)、歩行者はJAC(ジャパンアクションクラブ)の如く、華麗に避けてくれるので大丈夫です。ていうか、むしろ客がそれを求めているので、是非それに応えてあげなくてはいけません(衝突は求めていないが)。主に以下の行動を取ると、客はチップをくれます。
・クレイジージャンプ:地形の起伏や消防のはしご車を利用して大ジャンプすると、チップをくれる。滞空時間が長いほど、多くのチップをくれる。
・クレイジードリフト:異様に派手なドリフトをかますと、チップをくれる。ドリフト時間が長いほど、多くのチップをくれる。
・クレイジースルー:他の車を結構な速度でギリギリで通過すると、チップをくれる。連続で通過するほど、多くのチップをくれる。
これらの技を、ミスすることなく(つまり事故を起こさず)続けることで、チップは青天井に上がり続けます。運賃に比べれば微々たるものですが、ちょっとした積み重ねが大豪邸へと繋がることもありますので、よりクレイジーな走行を心掛けましょう。
ということで、非常にバカなゲーム内容なのですが、しかし抜群のスピード感とスリルは筆舌に尽くしがたく、無理に言葉にすれば「積み木にミニカーをぶつける」ような快感が味わえます。またBGMもアメリカのパンクロックバンドのゴキゲンな(死語)ナンバーで(死語)ベストマッチ(死語)です。ハイテンションなサウンドに、思わずプレイ内容も激しくクレイジーになっていくこと請け合いで、もはやトリップと言っても過言ではない、とても幸せな時間を過ごすことが出来るでしょう。
さて、このゲームは最初はアーケードとして発表されました。しかしレースゲームにあるはずの座席はなく、プレイヤーは立ったままプレイするという、ある意味アメリカンなスタイルでした。ところがゲームのクレイジーさ、そして実は結構深いゲーム性に魅了されたプレイヤーが続出し、猛者になると何時間もプレイし続けるという、文字通り「荒行」だったと言います。店側の心境を思うと涙が止まりません。
この反応を受け、セガは早速自前のゲーム機「ドリームキャスト(DC)」に移植。その後もPS2やゲームキューブ(GC)にも移植され、大好評を得ました。そして自力でジャンプ出来るようになったことでよりバカさ加減が加速した「クレイジータクシー2」がDCで登場。みんな諸手を上げて大歓迎し、遂にはエフェクトを極限までバカにした、シリーズ集大成「クレイジータクシー3:ハイローラー」がXBOXで発表されるのでした(何故DCではなかったかは、分かってあげてください)。
ともあれ、そのクレイジーな世界観は一見の価値があります(PS2版です)。まず間違いなく口をバカみたいに開けてご覧になられると思います。そして「オレもやってみたい」と思うこと請け合いです。現在はPS3とXBOX360でプレイ可能ですので、こんな文章読んでないで、早速遊んでみてくださいね。
ところでやや方向音痴の私は上手くプレイ出来たのでしょうか?三回裏に続きます。
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