いにしえゲーム血風録 九回裏魔球攻略 「源平討魔伝(諸行無常編)」

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 これまでの経緯:遅ればせながらもPS「源平討魔伝」をプレイし、そのイカス世界観にすっかりハートを掴まれるが、しかし中ボスの難攻不落っぷりに部屋の隅で爪を噛むしかなかったが、同時収録の豆知識と悪運で何とかなったものの、今度は琵琶法師が出現し、これは成仏一直線、と軽い諦念に駆られる私だったのだった。

 

 

 何故琵琶法師が鳥獣戯画を操っているのか…!?まぁ多分雰囲気なのでしょうが、それにしても効果抜群、ただでさえ「南無阿弥陀仏」とひたすら唱えているのに、もう気味悪さに一層拍車が掛かっています。とはいえ、敵には間違いないので応戦するしかありません。

 ということで「マテー!」とばかりに右方向へ走りますが、法師はユラユラと右方向へと漂っていきます。剣を振ってみますがもちろん届きません。なのに飛んでくる鳥獣戯画はバンバン景清に激突していきます。…アウトボクサーばりの間合いの取り方!いくら追いかけても全く届きません。まるであの娘を追いかけた砂浜の

 それなら防戦だ、と鳥獣戯画を切りつけますと、今度はキノコが出現し、取ってみると「毒」と表示されダメージを喰らいます。じゃあジャンプで避けますと、画面外へと消えた鳥獣戯画がホーミングで戻ってきて景清の背面に激突、やっぱりダメージを喰らってしまいます。

 …このままではいずれやられてしまう!爆裂四散を覚悟した瞬間、「さらばじゃ」と法師は鳥居の向こうへスッ飛んでいきました。…逃げた。いや、逃がしてもらったのか?よく分かりませんが脅威は去りました。攻撃自体は単調でしたが、その異様な雰囲気に飲まれ、ちょっと鼻水が出てしまいましたが、とにかく成仏せずに済みました。次の国へ向かいましょう。

 

 次の国は道中モードで、地面のあちこちに穴が開いています。落ちたら黄泉行きですから気を付けて進みましょう。と思った矢先にバカデカい龍が雄叫びと共に登場。「アォーンアォーン」とやかましい上に高速で宙を舞い、青い玉状ブレスを連発してきます。ブレスを避けようとしますが、中に小さい人でも乗ってるんじゃねぇのか、と疑うほど正確に追尾し、残らず被弾。1発はそれほどのダメージではありませんが、連続で喰らうとモリモリロウソクが縮みます。

 こりゃ堪らんと逃げますが、画面外からもブレスが追いかけてきて被弾。仕方ないと応戦しますが、体を切りつけても跳ね返されるばかりで、偶然頭をかすった時にダメージを与えられました。…そうか、頭が弱点か。ていうか、頭弱点の敵が多いな。ともあれジャンプ斬りを連発しますがなかなか当たらず、それどころか間違って龍の背中に乗ってしまい操作不能に陥る始末。何とか討ち取った時にはロウソクはもうわずかしかありませんでした。が、紫の玉を残してくれたのでパワーアップは出来ました。

 そのまま先に進むとブロックが上下に動くゾーンに到達。もちろん下は穴です。でもこのくらいのギミックは「跳べ!ヒゲのおっさん」で散々やってきたので平気です。調子こいて連続ジャンプでクリアしていき、最後のブロックをジャンプしようとした時、私はブロックが降下中にジャンプをしようとしてしまいました。…覚えておられるでしょうか、あのTIPS。「落下中の要石やブロックからはジャンプ出来ない」んです。ですからジャンプは不発。景清は奈落の底へ落ちました。

 

 「ウワー」とご丁寧に墜落アニメーションが挿入され、例の婆さんに「愚か者!」と罵倒され、気が付けばそこは黄泉。周りは針山だらけで、魑魅魍魎もワサワサいます。…地獄の間違いではないかい?と思いつつ、仕方なく先に進みます。

 黄泉は探索モードですが、他とは違って一本道なので迷う心配はありません。が、ロウソクはいつの間にか2本しか残ってないし、結構な量の敵は湧いてくるしで、もう逃げるしかありません。何とか最深部まで行くと、怖い顔のヒゲのおっさんがいました。曰く「つづらを開けよ」とのこと。…あ、この人閻魔さんか。これで上手く当たりを引けば復活出来るんだね?ガチ抽選なのか、それとも結果は決まっているのかしら…。とにかくエイヤッと適当に目の前のつづらを斬りますと、

 

「死」

 

 景清、爆裂四散。そしてもう見慣れたデカい「完」の文字。ああぁああぁあ、ここまで来てゲームオーバーか…。しかし楽しい!面白い!どうしてこれまでプレイしなかったのだろう!オレのバカ!ウンコもらし!

 さぁ続行だ!と画面を見ますとコンティニュー画面。しかし当時の私は「どんなゲームでも1コインクリアする」という無謀なポリシーを持っていたので、ボタン連打でカウントを0にし、再び地獄よりゲームを開始したのでした。

 

 その後サルのように源平討魔伝をプレイし、少しずつではありますが上達した私は、中間地点の京都に到達。例の婆さんが画面上の文字では「よくきたの」と労いつつ、音声では「先は長い!」と激を飛ばします。とんだツンデレですが、迷路のような京の町を踏破し、いよいよ後半戦です!

 

 …しかしここで私は、当時のプレイヤーであれば当然抱くであろう疑問を、やっぱり抱いていました。つまり「三種の神器はどこなのだ?」ということです。説明書によれば、これらの神器を全て集めないと、ラスボスである頼朝を倒せないのです。しかし京都まで上へ下への珍道中を繰り広げてきましたが、どこにも神器はありませんでした。

 これがRPGなら道端の人に聞いて「にしの まちに めずらしい ものを みたよ」とか「きのうは おたのしみ でしたね」とか「あくまを ころして へーき なの?」とかヒントが得られるでしょうが、生憎源平討魔伝はアクションゲームです。道端の人なんかいません。

 …つまりノーヒントじゃんか!あっ、よく考えたらこのゲーム、ナムコじゃんか!ドルアーガの塔といい、バベルの塔といい、どうしてこのメーカーはノーヒントばっかりなのだ!?プリプリと頬を膨らませる私ですが、モニターは何も語りかけてはくれません。ここは冷静にゲーム全体を眺めて考えてみましょう。

 

 まずこのゲームにはルート分岐があります。前半は長門で分岐し、京都に収束します。後半は京都から分岐し、まだよく分かりませんが、多分鎌倉に収束するのでしょう。さて、常識的に考えて、分岐先を間違えたためにクリアに必要な重要アイテムを取り逃す、ということは反則のような気がします。だってアイテムを取り逃して鎌倉に到着しちゃったら、頼朝を倒せないわけですから爆裂四散必至となり、つまり詰みとなってしまいます。

 これが家庭用ゲームならまだ分かりますが、源平討魔伝は元々アーケードゲームです。1プレイには血の滲むような1コインが必要なのです。それがルート選択を間違っただけで全部パー、とは考えにくいのです、なんとなく。…と、ここまで考えて、私は再びこのゲームがナムコ製であることを思い出しました。

 …いや、ナムコなら有り得る。ドルアーガの塔はキーアイテムを取らなかったためにゲームオーバー確定、みたいなトラップが山のようにあった、というかそれしかなかった。やる、このメーカーならやる…!

 

 そこで私はおもむろに家を出て、繁華街に向かい、書店に入りました。そう、攻略本です。しかも立ち読みです(当時はまだ立ち読み防止のビニールとかがない、牧歌的時代であった)。最悪の客ですが、もう何とでも言ってください。このポンコツはもう恥も外聞もなくなっていたのです。

 さて当時「ナムコミュージアム:VOL4」の攻略本は何冊か出ていましたが、私は少し厚めの本を手に取り、源平討魔伝の項を開きました。基本テクニックはスッ飛ばし、三種の神器のある国を調べ始めました。そして先の私の疑念は的中していました。

 なんと普通にプレイすると三種の神器は1つか2つしか手に入らないような配置となっていました。一応3つ全てを集めることが出来るルートも存在しましたが、そのルートはたった1つだけ。何回もプレイして、どこの国にどの神器があるのか把握した上でないと組み立てられないルート選択だったのです。一応終盤で前の国に戻れる鳥居があり、これで何度もループして探せ、という事なのでしょうが、ここまで堂々とした永久パターン(理論上、ゲームオーバーにならなくなること)を用意するゲームも珍しいものです。

 …やはりナムコじゃったのぅ。木馬を作っていただけあって、なかなかの剛の者よ。しかし貴様の計略、全て見切った(攻略本の編集部の人が)。最早クリアは目前じゃて…、とかなんとか考えつつ、ニヤニヤしながら帰途に着く私でした(この時点でナムコに完敗)。

 

 帰宅し、すぐにゲームを再開する私。律儀にもまた地獄から開始し、暗記してきたルートを進みます。途中「だじゃれの国」というのがあり、敵は大したものは出ませんが、しかし何かというと開発陣の似顔絵とともに「だじゃれを いっているのは だじゃれ」とか「わらって よりとも」とか表示されるという、血眼で神器探索中ならブチ切れるようなギミックがありましたが、もう答えを知っているので素直に笑えます。

 さて、そのまま八坂瓊勾玉八咫鏡をゲット。なかなか意外な所にあり、ノーヒントだとやっぱり無理だろ、というのが正直な感想。しかしドルアーガの塔を自力でクリアしてきた当時のプレイヤーには簡単だったかもしれません。

 そしてついに最後の神器、草薙剣をゲット。景清の剣が光り輝き、何を斬っても剣の値が減らなくなりました。遂に武器は揃った!あとは頼朝のいる鎌倉を目指すだけです。

 

 しかし最終盤の国々は非常にむつかしく、「ジャンプ失敗、即黄泉」とか、「鉄球雨あられ」とか、「義経・弁慶のタンデム攻撃」とか、もはやヤケクソのように景清を殺しに掛かります。それでも例のTIPSや草薙剣の威力もあり、なんとかこれらを突破。遂に鎌倉に到着しました。

 

 無数に並ぶ襖の前を宙に浮かぶ頼朝が現れ、イナズマや突風で攻撃してきます。しかし神器のおかげでノーダメージ、その上剣の値が十分に上がっているので、一斬りで物凄いダメージを与えられます。まさに神の力を得た、一方的な戦い。そして頼朝は「我が魂は不滅じゃ!」と言い残し、倒れました。そして景清は…。

 

 遠く富士山を望む場所で、桜が舞い上がります。エンディングメッセージが流れる中、私はついに頼朝を討ち取った景清の姿を思い出していました。…そうか、景清は地獄から蘇った亡者であった。本願である頼朝討伐を果たせば…、なるほど…。私はぼんやりと、しかし少し目頭を熱くしながら、印象的なBGMとともに桜吹雪を見つめていたのでした。

 

 こうして多くのインチキテクニックを駆使して、源平討魔伝をクリアした私は、それからも繰り返し繰り返しプレイしました。敢えてむつかしいルートを選択したり、剣の値を99まで上げてみたり、だじゃれの国のダジャレを全部見てみたりもしました。何度プレイしても、いつまでも面白く、そして少し油断すれば簡単に討ち取られるという、常に新鮮な気持ちでプレイ出来るゲームでした。

 数年後、東京に居を移し、帰省のため地元に戻った私は、とあるゲーセンで源平討魔伝と再会しました。懐かしさで胸が一杯になりながらプレイしてみると、

 

「ウワー」 「愚か者!」 「死」

 

 簡単に穴に落ちて、黄泉で「死」を引いてしまったのでした。そしてその横には何故か「魔界村」が…!しかしそれはまた別のお話です。ここまでといたしましょう。

 

 

 

 さて、長らくお付き合いいただきました「いにしえゲーム血風録」ですが、まだ続きます。え?九回だから終わりじゃないかって?いや、魔球は見事に攻略され、同点タイムリーとなってしまいましたので、延長戦に突入なのです。

 

 ということで、十回表でお会いしましょう。

 

 

*さて例の攻略本には、とある隠しコマンドが掲載されていました。それを入力すると、源平討魔伝の当時のPVが見られるのですが、これがもうキアイがこもった傑作としか言いようがありませんので、こちらで是非ご覧ください。


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todome

過去のホームページ時代より寄稿させていただいておりましたが、とある作品を完結させぬままに十数年すっかり忘れ、この度親方の号令により、再び参加と相成りました、todomeと申します。 主に小話を寄稿させておりますが、マンガ、ゲームにつきましても、今後ご紹介させていただこうかと思っております。どうぞお付き合いください。

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