今回は「オレの木馬は100万馬力」でおなじみのナムコより、「メトロクロス」をご紹介いたしましょう。メトロクロスが発表されたのは1985年。いわゆるナムコ黄金期の真っ只中でありました。前年にはノーヒント上等でおなじみ「ドルアーガの塔」が発表されていますし、翌年には間違った鎌倉時代でおなじみ「源平討魔伝」が発表されています。
ご存知の通り、どちらもどうかしているシステム、グラフィック、BGMを兼ね備えた傑作でしたが、「どうかしている=大冒険をしている」わけでして、つまりナムコ黄金期にリリースされたゲームは傑作でありながら、どこかしら「どうかしている」意欲作のゲームばかりだったのです(ちなみにデータイーストもどうかしていましたが、アレは次元が違います)。ですから今回ご紹介するメトロクロスはナムコお得意のACTなのですが、しかし本作も御多分に漏れずどうかしています。取りあえずストーリーからご紹介しましょう。
「男が一人、通路に立っていた。男には記憶がなかった。しかし目の前の通路を、時間内に走り切らなければならないことは知っていた。さらに言えば、コレはゲームで、自分はそのゲームのキャラクターに過ぎないことも知っていた!…そして男は走り出す、ただひたすらゴールを目指して、だったのだった。」
…もう「何言ってんだ?」ってレベルです。しかし、後ほど詳しいゲーム内容をご説明しますが、本作はストーリーなんぞあってもなくてもどうでも良いのです。ですからこういうストーリーでも全く問題なく、むしろ私達の想像力を無尽蔵に刺激してくれるテキストであるとポジティブに考えましょう。それではシステムのご紹介です。
このゲームは任意横スクロールACTです。プレイヤーは自機である「傷だらけのランナー」を操り、タイルで敷き詰められたコースを、障害物を避けつつ制限時間内にゴールに到達することが目的です。画面はハーフサイドビュー(斜め横からの見下ろし視点)で、レバー上下で移動、右で加速、左で減速および少々後退出来ますが、スクロールを戻すことは出来ません(初代スーパーマリオと一緒)。ボタンは1つだけで、押すと華麗にジャンプします。ジャンプ中も空中制御が可能です。残機やライフの概念はなく、制限時間をオーバーすると高圧電流が流れ、ランナーは黒焦げ、ゲームオーバーとなります。全32面、全てを走破すると…?
このゲームは4つの面で1つのセクターとなっており、4の倍数面の制限時間は、その前の3つの面をクリアした際の残り時間の合計が加算されたものになります。例えば1面で5秒、2面で6秒、3面で4秒、クリア時に残り時間があったとすれば、4面は通常の制限時間に「5+6+4=15」で、15秒が加算されるわけです。8面、12面、16面、20面、24面、28面、32面も同様に、その前の3つの面の残り時間が加算される仕組みとなっています。したがって4の倍数面の本来の制限時間は少々厳しめで、その分をその前の3つの面で稼いでおかなければならないわけです。
さてランナーの行く手を阻む障害物は様々なものがあります。まずはコースに設置されている障害物をご紹介しましょう。どれも意地の悪い位置に設置されており、プレイヤーを悩ませます。
設置系障害物
・スリップゾーン:緑色のタイル。ここを通過しようとすると、足が滑ってしまい、大幅にスピードダウンする。
・ハードル:見ての通りハードル。ジャンプで飛び越せるが、タイミングを誤ると引っ掛かる。
・落とし穴:水色のガラスが貼られた床。通過すると落下し、しばらく足止めされる。
・カベ:床から出たり引っ込んだりする壁。床に引っ込んでいる時は通過出来るが、床上まで伸びていると通過出来ない。ある程度の高さなら飛び越えられるが、失敗すると引っ掛かる。
・ジャンプ台:通過するとちょっとだけジャンプするが、タイミング良くジャンプボタンを押すと、大ジャンプ出来る。
・クラッカー:通過すると爆発し、天井まで垂直に飛んで落下、気絶する。しかしタイミング良くジャンプボタンを押すと鳥になれる(クラッカージャンプ)。
続いてコース上を動き回る障害物をご紹介します。一部を除いて明らかに無機物ですが、どこか意思を感じます。
移動系障害物
・ジャンボ缶:明らかに某清涼飲料水のようなペイントがされたドラム缶が転がってくる。ジャンプでかわせる。
・タイヤ:バウンドしながら前進してくる。避けるかくぐるかしかない。
・キューブ:赤い立方体で、行く手を遮るように上下に移動している。ジャンプでかわせる。
・ネズミ:大抵3匹セットで襲ってくる。噛み付かれるとスピードが大幅にダウンするが、レバガチャで振り払える。
・ナイト:チェスのナイトの巨大版。ナイトと同様の動きをして、体当たりしてくる。かなり高速。
・キング:チェスのキングの弩級版。キングと同様の動きをして、鉄山靠(てつざんこう)をかましてくる。相当高速。
…何故か「風雲たけし城」を思い出してしまうのは私だけでしょうか。さて、設置系障害物は普通にかわすなりジャンプするなりすれば問題ありませんが、移動系障害物(ネズミを除く)はジャンプ中に触れるとつんのめってしまうだけですが、まともにぶつかると轢かれてしまい、大幅なタイムロスとなってしまうので、出来るだけジャンプでかわしましょう(なお、轢かれた場合はレバガチャで早く復帰出来る)。
さて、コース上にはランナーの手助けをしてくれるものもあります。そちらをご紹介しましょう。
・アルミ缶:どう見ても某清涼飲料水のようなラベルの青い空き缶。触れると蹴り飛ばし、得点になる。連続して同じ缶を蹴ると最大5000点まで跳ね上がる。しかし蹴った後の軌道は完全にランダムなので(最悪画面外に飛んでいく)、狙って5000点を獲得することはむつかしい。またジャンプで踏みつけると、制限時間の減少が2秒間止まる。
・スペシャル缶:なんかトロピカルドリンク風のデザインの黄色い缶。触れると一気飲みし(そんなアニメーションは無いが)、数秒間猛烈にスピードアップする。ジャンプで踏むと制限時間の減少が2秒間止まる。大抵意地悪な場所に(スリップゾーンのど真ん中とか)置いてある。
・スケボー:何の変哲もないスケボー。触れるとライドオンし、スリップゾーンでも減速しなくなる。ただしジャンプしたり、障害物にぶつかったりすると降りてしまう。この状態でスペシャル缶を取ると、神の領域に踏み入れることが出来る(気がする)。
…こう列記してみると、ランナーの味方が少ないですね!まさに四面楚歌!傷だらけの名を欲しいままです。実際、序盤は半ばチュートリアルのような簡単な構成の面ですが、3面(早いな)から牙を剥き始め、5面以降からは本気でプレイヤーを殺しにかかってくる面構成となっています。
具体的には「延々とスリップゾーンが続き、その間の細道を走るしかない」とか、「スケボーが出た直後にハードルがこれでもかと並んでいる」とか、「ハードルでつんのめった先に落とし穴がある」とか、「キューブが大量に転がっていて、延々と轢かれ続ける」とか、「ジャンボ缶が急にバックして、入念に轢かれる」とか、「ネズミに噛まれてスピードダウンしたところにナイトが突っ込んでくる」とか、もう枚挙に暇がありません。この周到さはもはやカプコンを思い起こさせます。
しかしこれらの周到な罠も、暗記してしまえば怖くありません。ていうか、中盤までは反射神経でどうにか対応出来ますが、後半は、もぅ、ガチで暗記です。というのも、後半は制限時間が短い上に、アルミ缶踏みによるタイムストップや、ジャンプ台やクラッカージャンプが必須なマップとなっており、その上移動系障害物も高速化しているので、目視してから避けようとしても無理なのです。この先どんなマップで、どんな障害物、どんなアイテムが置いてあるか。これらを熟知しておくことがクリアへの早道なのです。
…と、これだけだと、ただクソむつかしいだけの覚えゲーのように思えますが、しかしこれら周到な罠を覚えてスイスイ走り抜けるのは楽しいのです。またジャンプ台やクラッカージャンプで、面倒臭そうな障害物を眼下に飛行するのはとてもとても気持ちが良いのです。さらにはジャンプ台からジャンプ台への連続ジャンプ、クラッカーからクラッカーへの連続ジャンプは、それはもう、とてつもない中毒性を持った快感と言えます(もっとも後半面では必須のテクニックですが)。
覚えれば覚えただけ先に進ませてくれる。ACTでもSTGでも、コレはゲームの楽しさの本質であります。そういえばドルアーガの塔で宝箱の出し方を覚えて、モリモリパワーアップするのは楽しいですし、源平討魔伝で中ボスの効率的な倒し方を覚えて、問答無用で瞬殺するのも快感でしたねぇ。ナムコというメーカーは、こういう「アメとムチ」が上手なメーカーなのであります。
また、メトロクロスで忘れてはならないのが、非常に特徴的なBGMです。ビバップジャズを思い起こさせるような、どこか物悲しいメロディーと渋いベースラインは孤独な戦いを盛り上げてくれますし、この頃のゲームのBGMといえば勇ましいヒロイックなものが主流であっただけに、ジャジーなBGMは非常に印象的だったことでしょう。現在聞いても耳に残る名曲なのであります。
現在はFCとPS、それにWii-Uのバーチャルコンソールで遊べます。FC版とWii-U版は様々なフィーチャーが追加され、PS版は毎度おなじみ「ナムコミュージアム」でAC版の完全移植であります。が、どれも現在はプレイがむつかしいと思われますので、こちらで孤独な戦いをご覧ください。
さて、本作の発表は1985年。私がゲーセン小僧だった頃にはもうゲーセンにはなかったはずです。どうやってプレイしたのでしょう?例の店長の仕業?それとも長兄?それは次回、お話しすることにいたしましょう。
続きます。
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