いにしえゲーム血風録 十三回表 「メタルブラック(Born to be free編)」

ゲーム
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 今回ご紹介いたしますゲームは、何かと凝り過ぎるメーカーでお馴染み、タイトーよりSTG「メタルブラック」です。そもそもタイトーは演出やらシステムやら筐体の仕様やら、何かと凝り過ぎるメーカーであります。

 「東京を丸ごと再現しよう!」ということで、背景を全部東京上空にした「スクランブルフォーメーション」を作ってみたり、「むつかしい謎を散りばめよう!」ということで、表100面、裏100面、隠し要素満載で、しかも暗号付きの「バブルボブル」を作ってみたり、「超弩級のゲームを作ろう!」ということで、豪快に3画面繋げた「ダライアス」を作ってみたりと、毎回フルスイングを辞さないメーカーであります。

 今回ご紹介するメタルブラックもご多分に漏れず、色んな面で凝っています。いや、タイトーの凝り過ぎ体質の塊とも言えまして、本作を発端に、その後タイトーは「濃い」STGを2本発表します。「ダライアス外伝」や「レイフォース」がそうで、どちらも凝りに凝った作品でありました。下手すると中二病まっしぐらな香ばしい匂いがしますが、しかしはっきり言いますが、私はそんなタイトーSTGが大好きです。

 

 それでは恒例のストーリー紹介から始めることにいたしましょう。

 

 

 「西暦2042年、木星軌道上に出現した彗星の影響で、地球は無数の隕石群に襲われた。地表は荒廃し、わずかな人類が生き残ったが、そこへ突如謎の侵略者が襲い掛かる。圧倒的戦力差の前に地球側は全滅の危機に瀕したが、調査の結果、侵略者は時を同じくして出現した謎の物質『NEWALONE』を用いた兵器を使用していることが分かった。地球側はこのテクノロジーをコピーし、『CF-345 ブラックフライ』を作り上げ、一大反抗戦『METAL BLACK』を計画する。しかし実行直前、突如地球政府と侵略者は『人類の宇宙進出の禁止』を条件とした和平協定を結ぶ。ブラックフライは封印され、和平協定により人類は荒廃した地球に閉じ込められた。しかし、真の自由を勝ち取るため、1人の兵士がブラックフライを強奪、敵本拠地があると思われる木星軌道上の彗星『ネメシス』を目指し、飛び立ったのだった。」

 

 

 …重ッ!暗ッ!そして長ッ!ねッ!?凝り過ぎでしょう!?これがタイトーです!文明の壊滅!敵テクノロジーのコピー!1人ぼっちの宇宙戦争!もう思春期の少年の妄想そのものです(褒めてますよ)。私達も少年に戻って、思う存分妄想にひた走りましょう!それではシステムの紹介です。

 

 このゲームは強制横スクロールSTGです。レバーで8方向に移動、ボタン1で前方にショットを撃ち、ボタン2でビーム解放(後述)を行います。敵、敵弾、地形に当たるとミスになり、残機を全て失うとゲームオーバーとなります。残機は得点でエクステンドします。全6面で、各面最後に待ち受けるボスを破壊すればステージクリア、最終面での展開によってエンディングが変わる、マルチエンディングとなっております。

 次にパワーアップです。自機ブラックフライは、画面上に漂う赤青緑の3色の玉がくっついた物質「NEWALONE」を取ることで画面下のゲージが上昇します。ゲージは「1-2-3-4-5-MAX」とレベルの目盛があり、各目盛までゲージが達するとショットがパワーアップします。具体的には「ショットの威力が上がる」ことと「ショットが大きくなる」ことです。自機のパワーアップはこれだけで、スピードアップとか対地攻撃とかバリアとか、そういう気の利いたものはありません。

 次にビーム解放についてです。ブラックフライはゲージに溜め込んだエネルギーをボタン2で解放することが出来ます。すると前方に強力なビームを撃つことができ、レベルが高い時に解放すれば奥様ウットリ極太ビームを長時間放射出来ますが、レベルが低いと奥様ガッカリ細いビームが短時間しか放射出来ません。またレベルMAX時にビーム解放を行うと画面全体に拡散ビームを撃つことができ、これには敵弾を消す能力もあります。この時ボタン2を押しっぱなしにしておくと、ビームを前方に集中させることが出来ます。

 しかしビーム解放は途中で停止出来ず、ゲージが空になるまで続きます。したがって、ビーム解放を行うと、自機のショットレベルは最低まで戻ってしまいます。しかし案ずることなかれ、NEWALONEは画面外からドシドシ出現しますので、惜しむことなくビーム解放することをお勧めします。

 

 さてここで各面のボスとの戦いについてご説明いたします。先述の通り、ブラックフライは敵テクノロジーをコピーした機体であります。ということは、敵ボスもブラックフライと同じ能力を持っていることになります。そしてNEWALONEはドシドシと画面内に漂ってきます…。もうお分かりですね!?敵ボスもNEWALONEを取り込んで、強力な攻撃をしてくるのです!

 敵ボスは通常の攻撃に加えて、NEWALONEを取り込んでからの極太ビーム攻撃をしてきます。画面の20%は占めるような攻撃ですから、下手すると逃げ場を失ってオダブツとなってしまいます。しかし!目には目を!歯には歯を!ビームにはビームを!ということで、ブラックフライのビーム解放によって応戦することが出来ます。ブラックフライのビームと敵ボスのビームがぶつかり合うとビーム干渉が起こり、巨大なエネルギーボールが発生します。このボールはビーム出力の弱い方へと移動していき、敵ボスにぶつけることが出来れば大ダメージを与えることが出来ます。しかしこちらに飛んで来れば、もちろん吹き飛びますので、ご用心を。

 

 それではステージをご紹介しましょう。地球を旅立ち、宇宙を舞台に、ブラックフライの前には様々な困難が待ち受けています。

 

・1面:地球

 隕石により砂漠化した地球。所々に高層ビルの廃墟が見受けられ、タンカーや空母などが転がっている。強奪されたブラックフライを止めるため、地球側の戦闘機が襲い掛かるが、その先には侵略者の不気味な姿が見えた

・2面:地球~月

 大気圏を脱出し、一路月へと向かう。ブラックフライを止めようと放たれる、地球側のミサイル。そしてブラックフライを迎え撃つ侵略者の猛攻。しかし先に進むにつれ、見慣れたはずの月が2つあることに気が付いた

・3面:スペースコロニー跡

 隕石群によって破壊されたスペースコロニー。内部は侵略者の前線基地となっていた。地球側の物質と融合し、歪な姿をした侵略者たちの猛攻は緩まない。そしてその最深部、奇妙な生物が目に入った

・4面:異相次元

 木星への近道として異相次元に突入する。巨大な岩が行く手を阻み、ガラス状の球体がブラックフライの攻撃を封じ込める。いよいよ木星への出口を目前に、巨大な侵略者の戦艦が姿を現す

・5面:木星軌道上

 遂に木星に到達する。敵の本拠地「ネメシス」を探すが、奇妙な洞窟に迷い込んでしまう。内部は侵略者達の巣となっており、奇怪な生物が跋扈する。洞窟を脱出し、木星表面に接近するが…

・6面:???

 木星を通り過ぎ、岩だらけの場所を進む。遠くには銀河系が見える。ここはどこなのか?考える間もなく、侵略者達が襲い掛かる。やがて複数の宇宙が生まれる場所へとたどり着き、そこで最後の敵と対峙する

 *正直、4面と6面はどう説明して良いのか分かりません。いや、本当に舞台がどこなのか分からないのです。ですから、ここでご説明したのは、あくまでも私の解釈ですのでご了承ください。

 

 

 さてメタルブラックはストーリーの重厚さもさることながら、非常に演出が優れています。1面の荒廃した地球は何故か美しさすら感じますし、2面のボス登場のインパクト、3面の廃墟や5面の木星表面の描きこみ、そして6面のシュールな背景などは、原色、蛍光色、中間色と、ありとあらゆる色彩を効果的に使い、さらにラスタースクロールで浮遊感を存分に演出しています。

 

 またBGMは秀逸の一言に尽きます。非常にメロディアスな名曲ばかりで、ある意味RPGで使われるようなBGMなのですが、しかし「本作のBGMはこれ以外に有り得ない」と思わせるほど、画面演出とマッチしています。それもそのはず、本作はBGMと画面演出が完全にシンクロするように調整してあり、特に2面は中盤の敵のラッシュ地帯に入ると、BGMも激しい曲調になり、ボス戦に入る直前にBGMが終わるようになっているのです。なんですか、この凝りようは。まさにタイトーの面目躍如と言えるでしょう。

 

 そして肝心のゲーム内容ですが、正直、非常にむつかしいSTGです。というのは、敵の出現位置や攻撃パターンは決まっているのですが、肝心の「いつ攻撃してくるか」がランダムであるようなのです。ですから「この敵は3WAYを撃ってくる」と分かっていても、いつ撃ってくるか分からないので非常に避けづらく、終始アドリブが要求されているような難易度となっています。

 また先に「NEWALONEは画面外からドシドシ出現します」と述べましたが、時折全く出現しない場面が多々あります。まぁ、簡単にエネルギーが溜められてビーム解放を連発されたら困りますから、当然の調整なのでしょう。結果として、しっかりとエネルギーのマネジメントをしなければいけないわけですが、そこで先の「アドリブ的な敵攻撃」がネックとなるわけです。

 つまり「あの場面でビーム解放しよう」と思っていても、敵の思わぬ攻撃でビーム解放してしまい、肝心の場面でスッカラカン、ということが多々あるのです。一見、攻略上マイナスに思えますが、しかしゲームの面白さとしては、毎回緊張感を持った新鮮な気持ちでプレイ出来る、とも言えます。いやぁ、ゲームバランスってなかなかむつかしいものですね。

 

 さて本作がある種カルト的な人気を博している理由は、他ならぬエンディング内容でした。このエンディングは当時、非常に物議を醸しました。様々な解釈が可能なエンディングで、あーでもない、こーでもないと議論が交わされました。というか、現在も物議が醸され、議論が交わされ続けています。

 そんなことを知ってか知らずか、公式見解は現在も示されておらず、つまりプレイヤーの数だけエンディングが存在するゲームとなったわけです。今でこそ「プレイヤーそれぞれがエンディング内容を解釈する」というのは珍しくありませんが、恐らく本作が最初だったのかもしれません。このようなエポックメイキングの意味でも、本作は今でも熱狂的に支持されているのです。

 

 現在ではPS2でプレイが可能ですが、今はもうPS4だもんねぇ。案外都心のレトロゲーセンで稼働しているかもしれませんが、おそらくむつかしいでしょうから、こちらで濃い演出をご覧ください。かつて、こんな無茶なゲームがあったのか、と心震えていただければ幸いであります。エンディングは…、皆様にお任せいたします。

 

 さてメタルブラック発表は1991年。丁度私がゲーセン小僧だった頃です。どのようにプレイしたのでしょう。そしてエンディングは…?それは次回にお話することにいたしましょう。

 

 

 続きます。


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todome

過去のホームページ時代より寄稿させていただいておりましたが、とある作品を完結させぬままに十数年すっかり忘れ、この度親方の号令により、再び参加と相成りました、todomeと申します。 主に小話を寄稿させておりますが、マンガ、ゲームにつきましても、今後ご紹介させていただこうかと思っております。どうぞお付き合いください。

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