小坂俊史 「ラジ娘のひみつ」

本・コミック
スポンサーリンク

 さて熱帯雨林をさまよった挙句、ようやく小坂先生の作品(新婚よそじのメシ事情)に触れることが出来た私ですが、このように熱帯雨林でステキな作家さんを見つけると、私は必ず「その作家さんの作品をデビュー作から辿る」ということをします。

 まだ駆け出しの新人さんならまだしも、キャリアのあるベテランの方になりますと相当な数の単行本が出ていますから、過去作品を辿るだけでみるみる財布が軽くなるという憂き目に、しかし素晴らしい作品群とキャッキャウフフと戯れることが出来る至福、あるいは法悦に浸ることが出来るわけで、まぁ痛し痒しというわけですね(自分に言い聞かせる)

 で、今回も小坂先生の過去作品をひたすら辿り、絶版等で入手困難な作品もありましたが、何とか現在まで辿り着くことが出来ました。どれもこれもクソ面白かったのですが、中でも傑作だったのが今回ご紹介する作品「ラジ娘のひみつ」なのです(以上、今回は比較的短く前置き終わり)。それでは簡単なあらすじからご紹介しましょう。

 

 

 TMZラジオの看板深夜番組「ナイトリバース」。パーソナリティのポテ姐の軽快なトークが大人気でしたが、ある日ポテ姐は緊急入院してしまい、急遽新人タレントである恩田あいりを代役として立てることになりました。しかしあいりはルックスは大変ステキなのですが、非常に大人しく、むしろ引っ込み思案で、トークもほのぼのはしているけれど全く面白くなかったのです。

 とはいえ代役の代役を立てる時間もなく、やむなくぶっつけ本番で番組は決行することになりました。当然不安げなスタッフ一同でしたが、しかし番組が始まるや否や、あいりの目は据わり、暴言毒舌をまき散らす暴走パーソナリティに豹変してしまったのです…!

 

 

 ということで、本作は「ラジオ四コマ」というわけで、小坂先生の真骨頂である「笑えない状況を笑う」内容となっております。まぁ、「カワイイ女の子が何かしらのキッカケで豹変する」っていうのはよくあるネタなんですが、しかし油断することなかれ、豹変したあいりの毒舌は本当に毒です。大御所ゲストだろうがスポンサーだろうが、全く遠慮も容赦もありません。ズバババッサリのキレ味なのです。

 とはいえ、「めったやたらに毒舌をまき散らす」というキャラクターも結構よくあるネタなのですが、しかしあいりの毒舌は単なる悪態ではなく「誰もが思っているんだけれども口には出せないようなこと」である場合がほとんどです。ネタバレになるので毒舌内容は書けませんが、なんでしょう、マツコ・デラックスさんのような感じを思い描いていただけると分かりやすいかもしれません。暴言、毒舌、でも正論。そんなスタイルが受けて、ナイトリバースはリスナーによる絶大な支持と、PTAからの強烈な苦情を得ることなります。

 

 そんな荒ぶる番組ナイトリバースの毎日(毎週月曜日から金曜日まで生放送でON AIR)を描いている作品なのですが、この作品のキモはやっぱり二重人格タレントである主人公、恩田あいりのキャラですね。普段の引っ込み思案なあいりと、ナイトリバース放送中の黒いキャラ「あいり姐さん」の、激し過ぎるギャップが非常に素敵です。これはもう「萌え」ですね。

 そもそも本作は小坂作品にはめずらしく「おとなしくて可愛らしい女の子」が主人公です。ネット上の「小坂マニア」の皆様によれば、小坂先生は恩田あいりのような、いわゆる萌え系のキャラを書くことはこれまでなかったらしく、まぁキャリアの長い先生ですから、円熟の極みということでしょう(なんだそれ)。非常に魅力的なキャラクターとなっています。

 そもそも自作に可愛いキャラを書くという事は、取りも直さず「自分の好み、ていうか性癖をさらけ出す」ということですから、生半可な胆力では無理でしょう。いやぁ、世の「絵師」の皆さんはスゴイメンタルを持っていると言えるでしょう。「人生はやったもん勝ち」とはよく言ったものです。

 

 そこへ異常に濃いサブキャラが脇を固めます。押しが強く、実は野望を内に秘めたマネージャー佐保さん。あの手この手で聴取率アップを狙うも、結局あいりに全部持って行かれるスタッフ陣。道路交通情報なのにあいりと対等に渡り合える猛者、道端さん。場外乱闘として、ハガキ職人のタマゴ「サンダル和尚」とナイトリバースのヘビーリスナーである郵便局員の熾烈な攻防、などなど。もはや誰にも行く末が分からない暴走機関車として、ナイトリバースは走り続けるのです。

 

 ということで、大変非常にめっぽう面白い作品なのですが…、残念ながら2巻で終わってしまいました。人気がなかった訳ではなく、掲載誌が休刊してしまったのです。ですから物語の結末も非常に急ぎ足で説得力がなく、尻切れトンボな終わり方になってしまいました。別の雑誌に移ってでも続いてほしかったなァ。この方はこういう憂き目に何度も遭ってるんですよ。天才なのになぁ(諸手を挙げる)

 ですからここは皆さんも一念発起して、小坂作品をジャンジャン読んで、小坂家の食卓を豪華にしようじゃありませんか、新婚だし。「ラジ娘のひみつ」は現在Kindle版が流通しております。でもこれって、表紙カバー裏のおまけも収録してるのかしら。もっとも紙媒体は入手困難のようですが。こちらで試し読みも出来ますので、是非手に取ってみてくださいね。


読んで頂いてありがとうございます!

↓↓このブログ独自の「いいね!」を導入しました。少しでもこの記事が気に入って頂けたら押して頂けるとうれしいです。各著者が無駄に喜びます(・∀・)イイ!! よろしくお願いしますm(__)m
The following two tabs change content below.

todome

過去のホームページ時代より寄稿させていただいておりましたが、とある作品を完結させぬままに十数年すっかり忘れ、この度親方の号令により、再び参加と相成りました、todomeと申します。 主に小話を寄稿させておりますが、マンガ、ゲームにつきましても、今後ご紹介させていただこうかと思っております。どうぞお付き合いください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました