前回もお話ししたように、私がこのゲームを見つけたのは多摩のヘンピなゲーセンでした。そこは極端な話、格ゲーか音ゲーがほとんどを占めていて、私は地下のメダルゲームばかりやっておりました。で、時折ビデオゲームコーナーを覗いては少々がっかりし、取りあえず「怒首領蜂」を雑に一周クリアする、なんて毎日を過ごしていたのです。
しかしある日のことです。経営方針が変わったのか、格ゲー音ゲー一辺倒だったラインナップに変化が生じました。扱うゲームのジャンルが広くなり、しかも嬉しいことにレトロゲームも入荷されていました(ここで初めてスプラッターハウスをプレイしましたが、ブギーマンで惨殺されるのが常でした)。メダルゲームに別れを告げ、再びゲーセン小僧となった私は、中学、高校時代にやった懐かしいゲームに目を輝かせて興じました。そんな幸福なある日、不意にスプラッターハウスの横に新しいゲームが入っていることに気が付きました。単色のシンプルなゲーム画面でしたが、何か惹かれるものを感じました。それは私がビデオゲームに常に求めてやまないもの「怪しさ」でした。それが「コズミックスマッシュ」なのでした。
デモ画面では人体模型のような半透明の人間がラケット振り回していました。それだけでも尋常じゃない空気を醸し出しており、少々近づきがたい雰囲気でしたが、よくよく見てみれば、人体模型君は画面奥のブロックに打球をぶつけ、必死にブロックを消しているではありませんか。「これはブロック崩しなのか」と理解した私は、どこのメーカーなのか気になり、タイトル画面を待ちました。そして示される「SEGA」の文字。…でました、セガ。当時私はPS2でクレイジータクシー中毒になっていたため、すっかりセガを信頼しきっていたのです。ですからインストカードを食い入るように読み、コインを投入するのに時間はかかりませんでした。
まずは1面。奥に数個のブロックが積み重なっており、他には何もありません。つまりチュートリアル的な基本面というとろでしょうか。早速サーブしてゲームスタート。真っ赤に発光するボールは、鋭い軌跡を描いてブロックに当たり「ビヨン」だか「バイン」だかマヌケな音と共に消えます。するとその上にあったブロックが下にゆっくり落ちてきます。なるほど、これを繰り返していけば良いわけです。軽快にラリーを繰り返し、すべてのブロックを消すと、人体模型君がガッツポーズをかまし、フィールドが暗転しました。そして暗いトンネルの中を人体模型君が走っていきます。そこでリザルト画面になり、残り時間に対応したボーナス点が加算されます。…しかしこの「トリックフィニッシュ」ってのはなんだ?何か特定の消し方でもあるのだろうか?そんなことを考えているうちに「Cosmic Bus 717」の英語アナウンス。続いて「コズミックバス、717、お楽しみください。」の日本語アナウンスが流れ、次の面が始まりました。
次の面でもラリーを続けていましたが、ふとインストカードにあった「スマッシュ」を思い出しました。1+2ボタン同時押しで出せるらしいので、早速発動。すると残り時間のカウントダウンが早くなり、「ビュイーン」というエネルギーチャージ的SE音と共に、ボールが人体模型君に吸い寄せられ、そのまま強烈なスマッシュが炸裂しました!ボールは猛烈なスピードで複数のブロックを貫通します! これは便利だ!しかし残り時間を消費するのでリスキーでもある!でも爽快だ!面白くなった私はむやみにスマッシュを連発し、最後のブロックを破壊すると画面が切り替わり、フィニッシュのリプレイが多角的カメラワークで行われました。我がヘタクソプレイながら、なんてカッコイイんだ…、と悦に浸る間もなくリザルト画面へ。タイムボーナスと共にトリックフィニッシュボーナスが加算されました。…なるほど、スマッシュでクリアするとこのボーナスが入るのだな、と理解しつつも「Cosmic Bus 727」の英語アナウンスが流れます。何でしょう、この不思議な世界観。未来のスポーツジムのような感覚です。私は何故だかニヤニヤしつつ、次の面に取り掛かりました。
次の面では大きな透明のブロックが左右に動いていて、その奥に色つきの半透明なブロックが設置されています。嫌な予感がしました。果たしてその透明なブロックは破壊出来ず、ここにきて初めて障害物の登場です。なかなか上手くボールを奥へと送り込む事が出来ず、また先の面でのスマッシュ連発による残り時間の浪費が響き、ここで時間切れ、ゲームオーバーとなってしまいました。
初プレイを終えた私は、まだニヤニヤしていました。何だか久しぶりにビデオゲームらしいビデオゲームに触れることが出来たことが嬉しくて仕方なく、それでいてこれまでにない、新しさを感じることが出来たからです。しかし思った以上にボールの制御が難しいゲームです。思ったところへボールを打ち返すことがなかなか難しい。それにスマッシュはブロックが密集したところを狙った方が良さそうです。そしてさらに私は「ジャンプボタン」を使っていないことに気が付きました。これはどういう時に使うのだろう?様々な疑問が、しかし私の次のプレイ意欲を掻き立てたのでした。
やがて何回かのプレイを通じて、私はコズミックスマッシュのシステムを理解していきました。まず透明な壁の対策は、インパクト時のレバー入力によるフックやスライスショットで、壁を回り込むように打てば良いことに気が付きました。また変化球はブロックが密集したところに打ち込むと、結構複数のブロックを巻き込んでくれることにも気が付き、以降積極的に使っていきました。さらにジャンプですが、地面に立っている時のレバーニュートラルでのショットの場合、インパクトからやや下方向へと打球が向かってしまうことに対し、ジャンプショットをするとほぼ地面と平行に打球が向かうことに気が付きました。が、特に使い道が思いつかず、とりあえず余裕があるときにジャンプショットをかまし、「三角跳び股抜けショットじゃぁ!」というくらいにしか使わなかったのです(せいぜい、上方向の打球を上空に維持させることには役に立ちましたが、しかし本当は何か有効な使い道があったかもしれない)。
それでも先の面に進むほど、愉快なギミックに富んだ面構成になっていきました。先の破壊不可能の壁がいくつも並び、その間隙を縫うようなショットが要求されたり、何気なしに壊したブロックから無数のボールが飛び出して、丁度MULTI BALL状態になってしまって笑うしかなくなったり、1つブロックを消したら別のところから突然新しいブロックが出現して驚かされたりと、開発者達の微笑みが垣間見えるような内容でした。
しかし正直、最後まで私は打球を完全にコントロールすることは出来ませんでした。プレイ内容もあまり安定せず、なかなか先の面に進むことが出来ません。当時はネットはありましたが、それほど攻略情報が公開されているわけでもなく、またそのゲーセンにはプレイヤー間の情報交換ツールである、いわゆる「ゲーセンノート」もなかったため(というか、時代的にゲーセンノートは廃れていたようです)、遅々として攻略は進みませんでした。そしてそもそも私くらいしかプレイしていなかったためか、コズミックスマッシュはクリアすることなく姿を消しました。
しかし、楽しかったのですねぇ。人体模型君の超人的な身体能力を駆使した曲芸的ショットは、見ているだけでも楽しいものでした。複数のブロックをスマッシュで強引に撃破する様は、ある種のカタルシスがありました。ただ願わくば、もう少し打球の操作が簡単だったらなぁ、と思うことです(徹底してスカッシュの挙動を再現したところはいかにもセガらしいですが)。一応ドリームキャストに移植されたらしいのですが、しかしハードがハードだけに、現在は入手困難とのことで、非常にスタイリッシュな良いゲームなだけに、現行機への移植を期待してしまうのです。
それでは次回、九回表でお会いしましょう。
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