いにしえゲーム回顧録 十四回裏 「ニューマンアスレチックス(宇宙記録編)」

ゲーム
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 さて今日も今日とてナムコ直営ゲーセン「キャロット」にご出勤のわたくし。入口すぐの所には大型筐体が並んでいたのですが、その日やけにでかいアップライト筐体が設置されていることに気が付きました。どうやら4人同時プレイ可能のようですが、しかし各々ボタンが3つしかありません。少し大きめのモニターではキャラクターが戦艦からの砲撃をかめはめ波的なもので迎撃していました。その後「World Records」の表示とともに、何かの記録の羅列が流れていきます。

 …これはつまり、ハイパーオリンピックみたいなもんなのか?だったらなんで戦艦の攻撃を迎撃しているのだ?それ競技?様々な憶測、あるいは疑念、あるいは胡散臭さ、具体的には「またナムコが訳分かんねぇゲーム作りやがったな」を感じていると、再びデモ画面が映し出されます。今度はキャラクターが新幹線を受け止めています。それを見た私に稲妻が走ります。

あ!これ、超人オリンピックだ!これはやんなきゃ!

 という訳で即刻プレイしてみることに決めたのでした。

 

 さてプレイ位置によって使用キャラクターが選択出来るようで、1Pの紅一点ツインテールも気になりますが、そこは思春期の中坊なので、無難に2Pのグラサンに決定。意気地なしのオレのバカ。後悔半分、安堵半分で、それはさておきゲーム開始です。

 第一種目は短距離のターボダッシュ。競技前にインストラクションが入ります。それによれば「左右のボタンを交互に連打」せよとのこと。えー!?(画太郎)単純に連打すれば良いのではないのか!?そうなると指の配置は必然的に薬指と人差し指で連打することになります。連打と言えばこれまで人差し指と中指による所謂「ピアノ連打」だったので、なんか指がツリそうになります。

 そんなことをしているうちにヨーイドン!必死に連打しますが、慣れないもんだから中々スピードが乗りません。しかし並走していたF1カーを抜き去り、ニセサムライと共に何とかゴール。既定タイムもクリアしました。さすがに世界記録には届きませんが順位は一着、グラサンを外して決めポーズをかまします。ここでやっぱりツインテールにすれば良かったとか思ったことは僕達の秘密だ。

 

 続いてインターセプター。デモでやっていた戦艦攻撃撃墜競技(なんだそれ)です。戦艦が砲撃してくるので、弾道に合わせて左右ボタンで移動し、中ボタンでかめはめ波発射とのこと。早く撃ち落とせば高得点らしい。何だか簡単そうです。

 いよいよ競技開始。戦艦が砲撃しますが、むぅ!?遠すぎて弾道が分かんないぞ!?直後ようやく弾道を把握出来たので移動…しようとしますが、むぅ!?左右ボタンの移動がなんかむつかしい!そういえば最近のゲームって移動はレバーばっかりだし、さっきのターボダッシュの余韻で、左右ボタンを変な風に連打してしまいます。モタモタしているうちに着弾、ミスとなってしまいました。

 …こいつはむつかしいぜ、まだ2面なのに。まるでカプコンじゃねぇか。とかなんとか独りごちているうちに2回目の試技開始。今度は慎重に左右移動をして、確実に砲撃を迎撃します。そして何とかクリア。グラサン外してキメ。

 

 次の競技はミサイルトス。競技前のインストラクションでは筋肉さんがミサイル持って助走しています。…分かった!もう全部分かった!

 さて競技開始。まずは必死こいて左右連打で助走(時速200kmを突破)。投擲ラインに到達したら中ボタン長押しで角度を決定、ブン投げます!飛べ!不死鳥!(アストロ球団)ミサイルはアフリカの大平原上空を飛行していきます。が、どう見ても野生動物(キリンとか)があちこちにいるように見えます。そしてシマウマのすぐ横に着弾!爆発!逃げるシマウマ!でもみんな無事!宇宙船地球号は今日も元気です。

 

 続いてはニューマンスナイパー。謎の生物を狙撃せよ、とのことですが、見た目本当に謎の生物です。その上「アンギャー!」と円谷プロまんまの鳴き声もあげています。…あれは何?地球環境の激変によって生まれた混合獣なの?まさかこの競技のためだけに生み出された生命工学の…、いやいやいやいや!人間は、人間はそんなことはしないんだ!僕は人間を信じる!

 とかなんとか妄想しつつ、冷静に怪生物を撃破。人間は時に無情です。難なく既定スコアをクリアし、次の競技です。

 

 お次はバーサスエクスプレス!来ました「新幹線を受けとめれ!」オレら世代の夢の競技!インストラクションを眺めつつ、ふむふむ、止まっている新幹線を押すんじゃないのか。ここは原作とは違うんだな(別にキン肉マンが原作ではない)。ていうか、原作よりもより危険な競技になっているのが好ましいですね(他人事)。

 さて競技開始。疾走してくる新幹線とプレイヤーのカットバック演出が緊張感を高めますが、やってることはバカそのものです。右上のシグナルが緑、黄、赤となり、インパクト!あ、失敗!プレイヤーは跳ね飛ばされますが、ニューマンなのでかすり傷程度です。何事もなかったかのように(実際観客の対応は実に冷静)二回目の試技へ。今度は上手くキャッチ出来たので、必死に左右連打。左上パワーゲージがジワジワ上昇し、押し返します!新幹線はスッ飛んで行き、65m付近で停車。一応既定距離は超えたのでクリアですが、そうか、別に福岡まで押し返すわけではないのか(だからキン肉マンが原作ではない)。

 

 次はタワートッパー。ビルの谷間から壁キックで頂上へ向かう競技。壁に接地した時に粘れば粘るほど、高くジャンプ出来るらしい。ビルの谷間がそんなに広くないので、ひょっとすると一般人でも出来るんじゃないかと思いましたが(中坊だから)、よく見るとビル1階分くらい飛んでるんで、やっぱり無理です。

 さて競技開始。中ボタンでジャンプ一発、壁に着地。少し粘って再度ジャンプしますが、あれ、思ったより高く飛ばないな。粘りが足りないかと我慢してみるも、やっぱりそれほど飛びません。じゃあもう少しと粘ってみると、ズルッと落ちました。でもニューマンなのでまるで平気です。さて第二試技。今度は落ちないように慎重にジャンプしますが、そうすると高く飛ぶことが出来ません。一応ビルの頂上に辿りつきましたが、しかし既定タイムを大幅にオーバー。ゲームオーバーとなってしました。

 

 むぅ、これは新手のチキンレースなのか?ビビればタイムが足りんし、イキがれば墜落だ。ビビりでも調子こいてもいけない、中庸の精神が必要なのか。そういえば、ニュートラルルートが一番面倒臭かったなぁ…、とか考えつつも、しかしここまでのバカ競技は非常に楽しかったので、その後私は何度も超人オリンピックに参加したのでした。

 

 …しかしなかなかタワートッパーがクリア出来ません。跳躍が最大になるタイミングがどうも分からない。キャラクターのモーションを目視してタイミングを取ろうとしますが、アニメーションが速すぎて上手く掴めません。仕方なく私が取った方略は「何度もやって身体で覚える」というものでした。何度か試行するうちに偶然最大跳躍出来る時がありますから、その時の「タメ」を感覚的に覚え、これを連続して出せるような「リズム」を作りだし、これを身体に叩き込む訳です。最早これを体育会系と言わずして何と言いましょう。果たして3割の確率で(今思うと、低い)クリア出来るようになった私は、ようやく次の競技に進むことが出来たのでした。

 

 えー、ノンストップロックチョップは左右連打が物言う競技で、それほどむつかしくなかったので割愛。それよりも最終競技ナイアガラジャンプスはこれまでの集大成とも言える難関でありました。

 ナイアガラジャンプスは、まず左右連打で助走し(時速250kmくらい)、踏切でジャンプ、そのまま水面に着水しますが、しばらくの間滑走出来ます。ここで出来るだけ粘らないと距離が稼げず、引いては対岸まで行けずに滝壺に落下してしまうのです(でもニューマンなので平気)。つまりタワートッパーの悪夢再来。しかも最終競技ですから、あのタワートッパーをクリアしてからでないとプレイ出来ない。つまりなかなか練習出来ないのです。そしてようやくこの競技に辿りついても、ジャンプタイミングを探り探りのプレイですから、幾度となく滝壺に転落していったのでした(でもニューマンなので平気)。

 そしてある日、これまでの積み重ねが実を結び(つまりは中坊としては結構な金額を投資した結果)、私のグラサンはナイアガラを華麗に滑る流星となりました。とうとう全クリ達成です!さあ、表彰式です!でも参加者はオレだけ!(仲間は格ゲーに夢中だったから)だから優勝者、オレ!なんか虚しいですが、これまでの苦労(主に投資金額)を思い返せば達成感もひとしおです。その後も私は気が向いてはプレイして、時折世界記録を更新したりしていましたが、やはりタワートッパーは苦手だったのでした。そして最後までツインテールを使う胆力がなかった私は、相当の馬鹿者だったと言えましょう。

 

 さてこのゲーム、キャロットでもなかなかの人気で、私以外のもプレイしている方が多くいました。実際、結構長く稼働していましたし、特に私と同じ中坊は熱くなり過ぎてボタンを強打してしまい、高校生の怖げなお兄さんにスゴまれたりしてましたが、あの頃のゲーセンではよくあることです。ともあれ、多くの方達がこのゲームを愛していたことは間違いありません。

 その後、ニューマンアスレチックスは姿を消し、代わりに「キャプテンコマンドー」や「D&D」などの4人同時プレイのゲームが入荷されました。しかし数年後、続編として「マッハブレイカーズ」が発表され、今度は飛んでくるミサイルを受け止めて投げ返したり、なんだかよく分からない巨大怪獣を街中引き回したり、高高度からフリーフォールし、そのまま地球割りしてみるとか、バカ度が一層増した内容となりましたが、どうも出回りが悪かったようで、私もクリアしていないままに姿を消しました。

 

 さてネットが発達した現在、オンラインランキングが当たり前の時代となりました。つまり筐体毎の記録ではなく、本当の世界記録に挑戦出来る時代!そう、今こそニューマン達が復活する時です!ナムコ(あ、今はバンナムか)の皆様には最新技術で最高にバカな競技を生み出してほしいと思います。いや、多分スマホゲーとかなら出来るんじゃないかな?期待してますよ、「ニューマンアスレチックス3」!

 

 それではまた、十五回表でお会いしましょう。


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todome

過去のホームページ時代より寄稿させていただいておりましたが、とある作品を完結させぬままに十数年すっかり忘れ、この度親方の号令により、再び参加と相成りました、todomeと申します。 主に小話を寄稿させておりますが、マンガ、ゲームにつきましても、今後ご紹介させていただこうかと思っております。どうぞお付き合いください。

コメント

  1. galthie より:
    14回まで来ましたね。記事お疲れ様です。 「デカスリート」は知っていましたが、もっとバカゲー(ほめ言葉)があったんですね~。 4人でできるのはいいですが、対戦相手はあまりいなかったようですね。 格ゲー全盛ですか。 todome氏の記事を見ているといろんなゲームがあり、いい時代だったなとついつい思ってしまいます。 昨今ではFF7のリメイクが話題ですね。 当時はPSにFFがと社会現象にもなったと記憶しています。 今でも根強い人気のように確かに面白かったと思い出します。 15回も期待しています。
  2. todome より:
    いやぁ、思ったよりも続きますねぇ。もう少しネタがありますので、お付き合い下さい。 一応仲間とワイワイプレイしてましたが、やはり格ゲーには勝てずです。あとはプレイ時間の短さでしょうか。 確かにあの頃は様々なジャンルが生きていた良い時代でしたが、今現役のゲーセン小僧達にとっては現在も良い時代だと思いますよ。何しろ全国の猛者と戦えるんですから。 リメイクも良いですが、やはり新しい世代の作った新しいゲームを期待してしまいます。最近のゲームはどこか「頭の中だけで作ったゲーム」という気がしてなりませんので、このコラムで「昔の開発者はこんな無茶苦茶をしたのか」と思ってくれると嬉しいですね。 十五回は・・・、まぁあまり期待しないでね。
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