冬目景 「黒鉄・改」

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 今、ギョーカイ大注目(してほしい)、各方面で大反響(になる予定)、ナウなヤングにバカウケ(死語)「春の東映まんがまつり」、第2回は冬目景先生の「黒鉄・改(くろがね・かい)であります。マンガをこよなく愛する方々の間では、「冬目景」と聞けば即座に「ざわざわざわぐにゃあああペリカ」とするくらい(意味不明)、とてもとても素敵な有名作家さんです。

 が、ちょっと前まで冬目先生の存在を全く知らなかった私です。この時点でマンガ読み(という単語はあるのか)として紛うことなくボンクラであるわけですが、しかしまあ、神様だか仏様だか、ともかく私達よりも高位の存在はご覧になっておられるようで(神秘体験)、かの天帝の導き、すなわち天啓僥倖ホイールオブフォーチュン(詳細は省く)によって「冬目景」の名は我がポンコツ脳髄に刻まれることとなり(大仰)、冬目作品に触れる機会に恵まれました。ありがたやありがたや。

 とはいえ、冬目作品の数は膨大なために未だ全ての作品を読むには至っていませんが、一言感想を申し上げるならば「アラアラコイツはステキだ」ということです(深刻な語彙不足)

 で、この春、冬目先生の最新作として刊行されたのが本作「黒鉄・改」というわけであります。さて、「改」とありますので、当然の因果律推論として「元祖天才バカボン41歳の春だからがあるのだろうと、奇特かつ聡明かつ般若な読者の皆様はお気付きのことと思います。YES!高須正解!冬目先生の初期作品に「黒鉄」という時代劇があり、長らく中断していたのですが、この度「黒鉄・改」として、リライト?リスタート?リブースト?リ・クリティシャス?ともあれ再開したものが「黒鉄・改」なのです。

 ということで、「黒鉄・改」のご紹介する上で都合が良いので、元祖「黒鉄」の内容のご紹介から始めようと思います。

 

 

 時は江戸時代、ならず者の渡世人をして恐れる「人斬り迅鉄」と呼ばれる凄腕がいた。金さえ貰えばどんな相手でも躊躇なく斬るその男は、しかし幼さの残る少年であった。驚異的な強さを誇る迅鉄であったが、しかしある日、わずかな油断により命を落とす。

 ところがしばらくして、迅鉄は目を覚ます。見れば体中は鋼で覆われ、視界にも奇妙な数字が見える。程なく源吉と名乗る蘭学者が現れ、瀕死の迅鉄を絡繰仕掛の身体に作り直したという。体中に仕込まれた武器と、迅鉄同様に瀕死の所を刀に改造された絡繰刀「鋼丸」を手に、蘇った亡者「鋼の迅鉄」の旅が始まる…。

 

 

 なんと主人公、サイボーグです。「サィバァゥグサァムルァイ(ネイティブによる発音)」が渡世人として諸国を放浪するという、何とも奇天烈設定ですが、これがめっぽう面白かったのです。というのは、設定こそサイボーグサムライというSFなのですが、この点があくまでも「主人公の個性」という点に抑えられ、物語の主眼はあくまでも「渡世人の世界」、いわゆる「股旅もの」であり、人情話としての面白さを前面に押し出し、また際立っていたからです。

 とかくトンガッた設定の主人公を据えますと、その特性に頼り切ってしまって、物語の内容が薄くなってしまうことが多々あります。その最たる例が「強いヤツインフレ」と呼ばれるもので、主人公が強すぎるために、物語を盛り上げるためには敵を果てしなく強くするしかなくなった、というアレです。

 しかし迅鉄はサイボーグではありますが、それはあくまでも「使えなくなってしまった生身の肉体の代替パーツ」でしかなく、中には中国の暗器(隠し武器)のようなものもありますが、基本的にフツーの人間並みの強さしかないのです。先述のように「個性」でしかないのです。ですからサイボーグサムライという特性に頼ったストーリーテリングは出来ません。実際、物語は股旅ものの王道である人情話を中心として進んでいきます。しかし、これだけだと普通の時代劇と何ら変わりません。「黒鉄」の面白さはどこにあるのか。考えてみますと、それは取りも直さず最初に戻り、「迅鉄がサイボーグである」という点なのです。

 では物語上、迅鉄がサイボーグである意味は何でしょうか。それはこの手の股旅もののハイライトである「殺陣シーン」にあります。先程、迅鉄は「フツーの人間並みの強さしかない」としましたが、しかしその戦い方はサイボーグならではの奇手の連続。従来の時代劇にはなかった、スピード感溢れる殺陣が繰り広げられ、強く読者の目をひきます。

 このサイボーグゆえの時代劇の常識破りの殺陣シーンは、しかしかえって平時の迅鉄の人間らしい行動を際立たせ、王道の人情話であるはずのエピソードが、不思議とより深い人間味を帯びて感じられます。つまり「サイボーグである」という異色の設定による破天荒な殺陣が、かえって「等身大の人間の人情話」という股旅ものの王道を際立たせることに繋がっていると思われます。と同時に、平時の迅鉄の人間らしい行動が、今度は殺陣シーンの「異常な」立ち回りを際立たせていると言えます。

 平時の迅鉄の人情が殺陣シーンの迅鉄を鮮やかに彩り、殺陣シーンの迅鉄が平時の迅鉄の人情を浮かび上がらせる。この「平時と殺陣の強烈なコントラスト」こそが、迅鉄をサイボーグと設定した最大の理由でしょう。この微妙なバランスにより、結果「黒鉄」は物語の面白さと殺陣シーンの面白さの両方を手にすることになり、奇天烈設定でありながら秀逸な時代劇として完成された作品だったのです。

 

 さて、マンガで肝心要の作画ですが、細い線と太い線が効果的に使われており、股旅ものの特徴である「張りつめた空気」が上手く表現され、とても印象的です。また先述のように殺陣シーンをはじめ、アクションシーンは動きが分かりやすく、非常にスピーディです。総じて「静」と「動」がしっかりと表現され、またその書き分けが物語を盛り上げてくれます。

 加えてこの方の描く女性は非常に魅力的です。何というか、美人とかカワイイとかじゃなく、綺麗なんです。さらに肌の手触りが感じられるというか、絵でありながら平面的でない、瑞々しさと丸み、温かみを感じる作画であると思います。こんなおねえさんと一杯飲んでみたいですねぇ。もちろん日本酒ですよ。

 

 

 で、今回の「黒鉄・改」です。再開というか心機一転ということで、迅鉄と鋼丸の設定が少々変わっていますが、いつも通りあてのない旅をしています。相変わらず迅鉄の太刀筋は冴え、鋼丸の軽口も冴え、絡繰による奇天烈戦法も健在。描画は初期の頃とはさすがに変わりましたが、むしろ股旅ものとしての重みが出た感じ。あとおねえさんがやっぱり綺麗です。

 さて「黒鉄」では個々のエピソードは独立していましたが、今回は全編を通した大きな物語があるようで…。ひと波乱起きそうな予感に、久しぶりに「オラ、ワクワクしてきたぞ」をしております。あ、果たして、あ、悟空は

 ということで、他に類を見ない時代劇「黒鉄」シリーズ、ご興味を持たれましたなら旧作「黒鉄」はKindle版が出ておりますし新作「黒鉄・改」がこちらで試し読みが出来ますので、是非一度ご覧ください。ホント、オススメですよ(回し者)

 

 

 

 …アレ!?よく考えたら、今回「黒鉄・改」じゃなくて「黒鉄」のレビューになってねぇ!?いっけねぇ!(てへぺろ)(寒)


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todome

過去のホームページ時代より寄稿させていただいておりましたが、とある作品を完結させぬままに十数年すっかり忘れ、この度親方の号令により、再び参加と相成りました、todomeと申します。 主に小話を寄稿させておりますが、マンガ、ゲームにつきましても、今後ご紹介させていただこうかと思っております。どうぞお付き合いください。

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