さてこの度(と言っても去年の9月)、あの「写真屋カフカ」の第2巻が発売されました!いやぁ、ホントに出るとは思わなかったなァ!何しろ作者本人が「1巻の売れ行きによって、話が続くかどうか決まる」なんて言ってましたからねぇ。おかげで発売に全く気付かず、結局今回も発売から入手までに相当時間が空いてしまいましたよ。さて今回もカフカの撮る不思議な写真を中心に、世の中から…。
…え?「写真屋カフカ」って何かって?…ですよねぇ。何しろ1巻が出たのが2015年の8月で、このブログでご紹介したのもその頃、つまり2年も前の話ですからねぇ。よし!ここはひとつ、改めて「写真屋カフカ」について以前のブログからのコピペでご紹介しましょう(最低)。
物語は主人公である写真屋カフカの日常が描かれています。カフカは依頼を受ければどんなものでも撮影する、いわゆる普通の写真屋ですが、彼には1つの趣味がありました。それは「これから無くなりそうなもの」を撮影することです。
携帯電話の普及により最近は見かけなくなった公衆電話をはじめとした、時代、あるいは技術の発展によって消えゆくモノを、カフカは熱心に撮影するのです。そしてカフカはその被写体に関わった者達に、記念として被写体と共に撮影した写真を1枚進呈します。しかしその写真は、不思議なことに一つの幻想を見せるのでした。(加筆訂正一切なし、すなわち外道)
このカフカの撮影する写真について、以前私は当ブログで、
「カフカが趣味で撮影している『これから無くなりそうなもの』」とは「過去」であり、対して「カフカが写真屋の仕事として撮影しているもの」とは「現在」である。したがってカフカは過去も現在も撮影しており、つまりは「時間そのもの」を撮影している。
としました。そしてカフカの撮影した写真が生み出す幻想は「時間の象徴」であると考えたのです。
しかしもちろん、カフカ自身はそのような「時間そのもの」を撮影しているという自覚はなく、あくまでも「趣味」としか認識していません。それどころかカフカ自身は「自分の撮影した写真が幻想を生み出している」ことを知らないのです。写真を貰った人たちは例外なく幻想を見るのに、当の撮影者であるカフカはこの幻想を見たことがなく、「気のせいだろう」の一言で片づけてしまうのです。
何故カフカだけはこの幻想を見ることが出来ないのでしょう。ここでカフカの行っている撮影とはどういうことなのか考えてみますと、端的に言えば、それは「観察している」ということになります。この「観察する」という行為は、ボンヤリ眺めていれば良いようで、なかなか気を使うむつかしいもののようです。
中でも、ある物を観察する時、もっとも気を使わなければならないのは、「対象物に影響を与えないようにすること」のようです。自分の「観察」という行為が、対象物の特性を変化させてしまうと、もはやその観察には何の意味もないからです。例えば息子の運動会の撮影に行ったお父さんは、当たり前ですが、観覧席で大人しくカメラを回さなければなりません。エキサイトしてトラックに飛び出して、レースを妨害してしまっては何にもならないからです。ですから、観察者は出来る限り対象物との距離を取らなければなりません。
さて、カフカが撮影している、つまり観察しているのは「これから無くなりそうなもの」、すなわち「時間そのもの」です。これを観察する最良の位置は、時間から距離を取った位置、つまり「時間の外」ということになります。しかし、もちろん、カフカは時間の外に出ることなど出来ません。
けれどもカフカは「これから無くなりそうなもの」との距離を取ろうと心掛けていて、なるべく干渉しないようにしています。その姿勢は実に一貫した中立というか、そもそも普段のカフカの生活もどこか浮世離れしており、まるでこの世に生きていないような雰囲気を醸し出しているのです。そう、「時間の外」にいるような…。
つまり写真が生み出す幻想を見ることが出来るのは時間の流れの中にいる者だけであり、半ば「時間の外」にいるようなカフカには見ることが出来ないのかもしれません。以前、ブログで紹介した際には、カフカは時間の流れの中にドップリと浸かっているように記しましたが、どうもそうではないようです。もっとも、これは私のうがった見方なのかもしれませんが。
さて、そんなカフカの撮る写真とその幻想はやがて噂となり、怪しげなフリーライターが嗅ぎまわるところで1巻は終わりました。2巻でもカフカは世の中にある「これから無くなりそうなもの」を撮影していきます。ネコ屋敷、レトロなおもちゃ、名画座…。そしてそれらを撮影した写真は不思議な幻想を生み出し、見る者に懐かしいあの頃を思い出させるのです。
しかしこの幻想は徐々に範囲を拡げつつあるようで、噂が噂を呼び、例のフリーライターの追及が激しくなり、とうとうカフカは窮地に追い込まれます…。
そんなカフカと時間を巡る物語が、非常に趣味的で魅惑的、ある種偏執的ともいえる(そう、あのミルハウザーのような!)作画で繰り広げられます。こちらで試し読みが出来ますので、もし興味を持たれましたら、手に取っていただければと思います。
*さて、本作は月刊誌に不定期連載という、どうかしている掲載ペースですので、3巻がいつ出るのか、そもそも本当に出るのか分かりません。出るとしたら…、オリンピック?それもまた良し!オレは待ってるぜ!
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