小説

トドメ氏の小説

空白の理由 5(完)

4‐A・E  ずっと一緒にいたいと思っていた。  これまでの僕の世界は、 これまでの私の世界は、  ただ自分一人がいるだけだった。 自分一人がいるだけで、世界に意味はなかった。  そこへ貴女が現れて、 そこへ貴方が現れて、  世界に意味が加...
トドメ氏の小説

空白の理由 4

3-E 「始めよう」 口の端をきゅっと締めて、私は言った。それを合図に、私達はどちらともなく目を瞑り、記憶を探り始めた。そして私達に関する『幸福』の記憶を探り始めた。  私の中に無数に漂う『幸福』の記憶。小さかった頃からつい昨日のことまで、...
トドメ氏の小説

空白の理由 3

3-A 「始めよう」 口の端をきゅっと締めて、美穂は言った。それを合図に、僕達はどちらともなく目を瞑り、記憶を探り始めた。僕達に関する『幸福』の記憶を探り始めた。  押し寄せるような『幸福』の記憶。幼少期から現在まで、それらは無数に存在した...
トドメ氏の小説

空白の理由 2

2‐E 「何だか、切ない…。」 そう言葉を発する事がやっとだった。今の私の心はそう表現するしかなかったのだ。雄介の提案に沿って、ただ『幸せ』について考えていただけなのに、何故か心は力を失い、悲しく、やり切れない気持ちで一杯になってしまって、...
トドメ氏の小説

空白の理由 1

1‐A  僕が言葉を接ごうと口を開いたその時、目の前に奇妙な空白が現れた。「………。」 僕と美穂は自然と顔を見合わせる。美穂は目を丸くしていた。きっと僕も相当間抜けな顔をしていたに違いない。しかし僕は互いの表情よりも、この目の前の妙な空白に...
トドメ氏の小説

旅の果て 最終回

4  朝日が昇る前に、私は洞窟の入口に立っていた。一歩足を踏み入れると昼間と違い、中は真っ暗である。何かに躓き、転びそうになる。慌...
トドメ氏の小説

旅の果て 第三回

3 夕飯は大好きな煮魚だったが、味わう間もなくそれを掻き込み、私は早々に自分の部屋に戻った。部屋の中央に腰を下ろし、無意識のうちに口...
トドメ氏の小説

旅の果て 第二回

2 この場所の様子を調べるため、またこのまま家にいても退屈だったので、私は外に出た。空気は粘りつくようで、容赦なく陽光が降り注いでい...
トドメ氏の小説

旅の果て 第一回

※この作品では表現上部分的に斜体を使っています。読みづらい方は、ブラウザの文字の大きさの設定で調節して頂ければ大きくなり読みやすく...
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