以前、私の大好きなマンガ「ハクメイとミコチ」について、「『仕事』と『人となり』」を絡めてご紹介いたしましたが(なんだかこむつかしい内容になってしまい、のちに猛省しましたが)、この度、「ハクメイとミコチ」がアニメ化されました。
…が、正直、私は好きなマンガがアニメ化されることを手放しに喜ばないタイプであります。当たり前ですが、マンガとアニメは違うメディアでありまして、マンガにはマンガの良さ、アニメにはアニメの良さがあるわけで、その逆、つまりマンガでは苦手な表現、アニメではむつかしい表現もあるわけです。
例えば、マンガはいくつかのコマを連続させることでお話を展開していくわけですが、良い作品では、コマとコマを視線で追っていく時に心地よいリズムがあるもので、それが語りのリズムとなっており、驚くほどスルスル読めてしまうのです。また、マンガではあえて「…」と沈黙を表現することがあります。これはその場面の空気や、登場人物の心情を表現しており、下手にセリフを喋らせるよりも効果的です。さて、これらの点をアニメで表現しようとしたら、どうしたら良いのでしょう。私には想像もつきません。
逆に、アニメではその基本的要素である「動く」という点を最大限に生かし、派手なアクションシーンや、あえて動きの少ない場面を挿入したりして、やはりお話にリズムをつけています。また「喋る」という点もアニメの強みでして、文字では伝わりづらい感情表現や人間臭さも、声を通して心に響かせてくれます。さて、これらの点をマンガで表現しようとしたら、どうしたら良いのでしょう。私にはちっともさっぱり分かりません。
そういうわけで、私は「マンガのアニメ化」や「アニメのマンガ化」には非常に懐疑的です。そもそもマンガもアニメも「そのメディアの特性を十分に生かした表現」をしているもので、極端な話、「マンガでしか出来ない表現」、「アニメでしか出来ない表現」で作品世界を構築しているはずで、したがって他のメディアでその作品世界を表現することは不可能であるはずだからです。
ここで「ハクメイとミコチ」というマンガについて考えますと、この作品は素晴らしい書き込みや可愛らしいキャラクターが注目されますが、私は「登場人物たちのやり取り」、もっと言えば「間」に目が行きます。どのような作品でも、登場人物には特有の間、つまり言動や行動のリズムがあるものですが、この作品では間が丁寧に描かれています。そして登場人物たちはやりとりを通して各々の間がゆらゆらと変化し、1人の時とは違う振る舞いをするところに面白味があるように思えます。
例えば活動的なハクメイはポンポンと喋り、ちょこちょこと走り回ります。ミコチは言葉を選ぶようにゆっくりと話し、あまり走り回ったりしません。この「動」と「静」である2人が一緒に過ごすことで、ハクメイは珍しく物静かになり、ミコチは驚いたことに狩人の目になったりもします。このような「間の変化」が各エピソードをより一層楽しいものにしてくれるのです。
この「間」というのは、言うまでもなく作画やセリフ回しの効果によるところですが、加えて先述のコマを目で追うことによって生まれるリズムによるところも多いように思えます(なんとなくですが)。小説で言うところの「行間」、この場合は「コマ間」でしょうか。そこにこそ、登場人物たちの間ややり取りの妙が滲み出ているように思えるのです。
ですから今回のアニメ化の話を聞いた時、私はコマのリズムによって演出された「登場人物たちの香ばしいやり取り」がしっかりとアニメで表現出来るのか、ちょっと首を傾げたのです。で、先日第一回を見ました。うん、杞憂でした。原作の雰囲気や登場人物同士のやり取りが丁寧にアニメに起こされていました。やだ、ステキ。
さて、私はアニメには全く詳しくなく、したがって「監督が誰」とか「声優が誰」とか「作画が誰」とかは全く知りません。ですから映画を紹介する時と同じスタンスで、ボンクラなりにアニメの感想を述べたいと思います。
・総天然色がステキ
当たり前ですが、アニメはカラーでした。いや、この作品に関しては、カラーというより「総天然色」と言う方がふさわしい気がします。ともあれ、原作はモノクロでしたので、総天然色になっただけで「わぁ」とバカみたいに感激してしまいました。
というのも、本作は結構「色」が重要なファクターである場合が多いのです。例えば第一話では「夕焼けトンビ」という全身真っ赤なトンビを探しに行く話なのですが、原作はモノクロであるために、この話の劇的な転換点がちょっと不発となっています。それがアニメによる総天然色化で、本来の衝撃が受け手に伝わったように思えます。
また本作の鉄板の話題である「美味そうなメシ」も、原作はモノクロながらも美味そうでしたが、アニメによる総天然色化で「美味そう加減(ヘンな日本語)」が青天井となってしまい、非常に危険な代物となっております(褒めてますよ)。いやぁ、色って大事なんですね。
・動きがステキ
当たり前ですが、アニメですので、キャラクターは動いています。しかしコレ、私にとっては非常にありがたい点で、動いているハクメイとミコチを見て、私は思わず「生きてる!動いてる!(のび太風)」と言ったとか言わなかったとか。
というのも、原作は非常に細かい書き込みで素晴らしいのですが、ごく一部、動きが分かりづらい箇所があるのです。私がポンコツなのでしょうが、動きがよく分からないが故に、頭が話の流れから離れてしまったことがあったのです。第一話の「夕焼けトンビ」の話の最後には少々アクロバティックな動きがあるのですが、残念ながら、私にはその動きが読み取れなかったのです。
しかしアニメを見ますと、当然のことながら動いていますから、どうアクロバティックな動きなのかがよく分かりました。おかげでこの話の最大の山場がとても印象深いものに感じられたのです。
・声がステキ
当たり前ですが、アニメなので、キャラクターが喋ります。この点は先述の通り、アニメの強みでありまして、原作では文字でしかなかったセリフに血が通うのです。ハクメイの心底腹が減った感じのボヤキや、ミコチの「また始まった」的な呆れっぷりなど、素人ながらも「なるほど」と意味不明な納得をしてしまいました。
ただ、ハクメイはハスキーな声だと勝手に思っていたので、正直、最初は「ん?」と思いましたが、慣れるとむしろやんちゃなハクメイにピッタリに思えました。ミコチは想像通りの落ち着いた声で、ちょっと大人な感じでステキです(エンディングの歌も歌っていて、やっぱりステキ)。あと第二話に登場したラウンジ「小骨」のマスターの声が適度にチャラい感じで、なんか笑えました。
で、声優さんが誰なのか、私は全く知りません。なので、この声優さんたちが、他にどんな役を演じたのかも知りません。知りませんが、本作ではピッタリだと思いました。この先、イワシの親方やナライ会長がどんな「シブイ」声なのか、実に楽しみです。
ということで、面白かったっス!次回が楽しみだなぁ…。いやぁ、マンガをアニメ化するのも結構良いですね(最初と違う)。あ、そうそう、アニメ放送と同時に、最新刊の6巻も出ました。6巻では本作を彩る濃すぎるバイプレイヤー達が大活躍で、話の毛色も実に様々、えらいこと面白かったです。こちらもオススメですよ。アニメの詳細はこちらの公式サイトからご確認ください。お時間とチャンネルの都合が良ければ、是非ご覧くださいね(回し者)。
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